旅は終わり、日本へ
静希達の希望通り、買い物をし、ある程度観光をしてこの街を一望できることで有名なカールトンヒルにやってくる
周囲の街に比べると少し高いこの丘の頂上には記念碑や展望台などがありエディンバラの街を見渡すことができた
風も少なく、天気も良く、街を眺めてのんびりするにはぴったりの時間帯だった
『オルビア、この景色見えるか?』
『はい、見えています』
オルビアもメフィ達と同じく静希の周囲の景色を見ることができるようで、この景色をまじまじと眺めていた
静希がここに来たのは街の風景をオルビアに見せたかったからに他ならない
外に出て僅かに流れる風を感じることはできないが、オルビアはその光景を眺めていた
陽太達もこの風景に満足しているのかあたりの高い所に登りながら写真を撮ったりしている
静希もその流れに乗ろうかとも思ったが、さすがにやめておいた
そんなことができる雰囲気でもない
『この国にいるのも今日明日で終わりだから見おさめておけ、もう来ないかもしれないしな』
『・・・お心遣い感謝致します』
オルビアは静希の言う通りこの街の風景をじっくりとみているようだった
彼女のいた場所、時代とは違ってもオルビアにとっては思い入れがある国だ
これから自分達はこの国を去ることになる
そのことを理解しているのだろう、オルビアは感慨深そうに風景を目に焼き付けているようだった
『・・・不思議なものですね』
『なにが?』
『この地は私が逃れた果てに訪れた場所です、思い入れなどないと思っていたのですが・・・存外、そうでもないようです』
静希はオルビアの言っていることが理解できない
それもそのはずだ、この感情はオルビアにしか理解できないだろう
そしてオルビアしか見たことのない景色が、彼女には見えていた
自分たちが逃げ、最後にたどり着いた街、辛酸をなめながらも逃げおおせ、海へ出ることを決意した街
ここから見えるあの道で部下達と走った、あそこにあった森で最後の食事をした、街の向こうにあるあの海に自分達は逃れた
全てオルビアの中にしかない記憶だ
だから静希にはオルビアの気持ちが理解できなかった
『ありがとうございますマスター、ここに連れてきてくれて』
『いいよ、俺も見ておきたかったしな』
恐らく静希はこの旅行のことを忘れられないだろう
初めての旅行がなんとも強烈な危険と一緒の冒険ツアーのようになってしまった
二度とこのような旅行はしたくないと思えるほどに
「おい、そろそろ行くぞ」
城島の号令とともに静希達はその場から離れていく
ホテルに戻ってからは数多くの反省文との格闘、そして静希には監査員の先生から贈り物として西洋剣がプレゼントされていた
オルビアの剣と同じようなバスターソード、ちゃんと刃もついているらしい
学生に渡す物ではないような気もするのだが、この際そういう突っ込みはなしで行くことにする
どうやらこれをあの島で見つけたということにする気らしい
雪奈へのお土産にでもするかと考えながら静希達の最後のホテルで過ごす夜が終わり、とうとう日本に帰る日がやってきた
帰国にかかる時間、ほぼ一日かかってしまう移動の為に五日目の昼から移動は開始された
またも長時間飛行機の中で揺られることになるのかと思いながらも静希達は飛行機に乗り込んでいく
まずはロンドンへ、小一時間かけてから今度は日本へ向かう直通便だ
ここからが長い、飛行機に乗っている時間は行きと変わらないが問題は時差である
こちらの時間に合わせて行動してしまっているために飛行機の中で体内時計を調整しなくてはいけない
「旅行も終わりかぁ・・・案外短かったな」
「そうね、途中トラブルもあったけど」
「楽しかったね、いろいろと」
「まぁ、そうだな、楽しかった」
窓から外を眺めながら静希は大きくため息をついていた
貰った西洋剣は特別に貨物に入れてもらっている
まさかあのようなものをお土産にすることになるとは思ってもみなかった
雪奈からすれば喜ぶのだろうが静希からすればあまり喜ばしいとは言えなかった
飛び立つ際にオルビアが微妙に驚いていたのが印象的だった
長いようで短かった静希達の初めての海外旅行は幕を下ろす
飛行機の中で揺られることに変わりはなく、変わったのは静希のトランプに新たな剣を内包したことだけだった
誤字報告をまた受けてしまったので複数投稿
まさか一日に二回も誤字報告を受けるとは・・・
もう誤字はいやだぁぁぁぁ!
そして四話完結
次回から五話が始まります
これからもお楽しみいただければ幸いです




