自由行動
オルビアの服でどんなものが似合うかを話しているうちにその日は終了し、残すは待ちに待った自由時間、この街を自らの思うがままに動いていい日となった
どこに行くも自由、何をするも自由、静希達は事前にどこを見て回り良い面悪い面もろもろ体感していくつもりであった
のだが
「お前達は今日は外出禁止だ」
何の拷問か嫌がらせか、恐らくは後者だろう
担任教師城島から言い渡された言葉に静希達は絶句する
せっかく有意義に街をのんびりと見て回ろうとしていたのにもかかわらず気分がちょっとした散歩から手錠つけられた状態での強制監禁に早変わりだ
「先生、せっかくの海外なんですからのびのびとさせてくれたっていいじゃないっすか」
「のびのびさせた結果が昨日の失踪だったからな、お前達から目を離さないからそのつもりでいろ」
嗚呼、なぜこのような状況になってしまったのやら
いやこの状況を作り出してしまったのは静希達であって正直に言えば自業自得というものなのだ、だが理解はできても納得いかないものもある
「確かに昨日の件は俺達にも問題あったかもしれないですけど、外出禁止は酷くないですか?まだ土産物とか買いたいんですけど」
昨日ハワード達に案内してもらった中での買い物では最低限かつ少量の買い物しかできなかった
今回は自分達しかいないのでどんなに買っても迷惑にはならないと意気揚々と出かけるつもりだったのに出鼻をくじかれた
「ふむ、そういうことなら欲しいものをこの紙に書くといい、私がお前達を見張っている間に監査の先生に買ってきてもらおう」
「先生わかってないですよ!こういうのは直に見て選びたいんです!インテリアとか、服とか!肌触りとかも知りたいし着てみたいんです」
女子からしたら画面などに表示されるのではなく実物を手に取ってみたいというのは切実なものだろう
静希の買い物は食品や茶程度なのでそれほど問題ではないがやはり自分で見て選びたいという想いは捨てきれない
そもそもせっかく海外にいるというのに何が楽しくてホテルに引きこもっていなくてはいけないのか
「なら最大限の譲歩だ、私がお前達の行動を完全に監視する、どこに行くのか、何をしに行くのかを事細かに記述した紙を提出しろ、そしたら外に出してやる」
「えぇぇ!先生ついてくんすか!?堅苦しくてやってらんないっすよ!」
「先生!せっかくの旅行なんですよ!生徒の自主性を伸ばす意味でも私達だけで行動させてください!」
普段仲悪いのにこういうときはやたらと息が合う二人に取り残されながら静希と明利は黙々と行きたいところや見てみたいところを紙に記していく
陽太と鏡花がブーイングしていると城島の額に青筋が走る
「お前ら・・・自分たちがどれだけ危険な状況を作り出しかけたか分かっているのか!?六時間程度とはいえ連絡を取らず、我々も向こうの学校も大騒ぎだったんだぞ!お前達を案内したチームは今日居残りして反省文の提出を義務付けられているのにお前達はのうのうと観光を満喫か?国際社会を舐めるのもいい加減にしろよ!?」
静希達が街に戻った際も怒鳴られ思い切り叱られたが城島含め教師陣は四苦八苦して静希達を捜索したらしい
特に一班の事情を知る城島と監査の教員に至っては街の隅から隅に至るまで奔走し捜索したそうだ
何よりまず監視しなくてはいけない悪魔と神格がどこかへ姿を消したとなればそれほどの警戒態勢になることは明白、事は静希達だけの問題ではないということを再確認させられた瞬間でもあった
あまりの剣幕に陽太と鏡花がひるんでいる間に書いておいた紙を城島に提出する
「ふん・・・買い物に、モニュメント・・・カールトンヒルか、まぁいいだろう」
「ちょっと静希、明利、あんた達いいの?せっかくの旅行なのに」
「まぁ、のんびり見たいってのは本音だけど」
「迷惑かけちゃったのは本当だから、仕方ないかなって」
確かに城島たちだけでなくこちらの学校にも迷惑をかけたのは本当だ、だからこそハワード達も反省文を書かなくてはいけなくなった訳で、自分達だけ何の制限もかけられないというのはフェアではない
そういう意味で言うのなら城島が最初に言ったように謹慎処分でもおかしくないのだ
だが、自身も能力者であり静希達の境遇も十分に理解している城島だからこそ表向き監視付きという条件で外出を許可してくれているのだろう
二人の言葉にさすがになにも言い返せないのか陽太と鏡花は渋々納得し自分達も最後に回りたい場所を記していく
「最初からそうしていればいいんだ、私の前で問題行動等は絶対にするなよ?」
教育指導は面倒だからなと呟きながら静希達もその危険性を十分に理解している
この班で一番城島の『教育指導』を理解しているのは陽太だろう、何せ一度指導を受けているのだ
絶対に問題を起こさないようにしようと心に誓いながら静希達は城島の後に続きホテルを出た
誤字報告を受けましたので複数投稿です
最近誤字の数が増えている気がする、投稿数が最初に比べ増えているから仕方がないのか、ただ自分のチェックが甘くなったのか
どちらにせよ恥ずかしいことに変わりなし
これからも楽しんでいただければ幸いです




