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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」
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その剣の重さ

全員から詳しい話を聞いた後城島はその場から離れどこかに電話をかけていた


「あぁ、そうだ・・・わかった・・・はぁ・・・」


静希達は正座のままその場で待機しており、徐々に足はしびれを訴え始めていた


オルビアも静希の少し後ろで正座しておりその姿勢はとても美しい


電話を切ると城島はため息をついて正座した静希達の前に立つ


「誰と電話してたんですか?」


「あ、いや・・・昔の知り合いに霊装に詳しい奴がいてな、そいつに意識を持った霊装があり得るかって聞いたんだが・・・」


霊装に詳しい人間、学者か何かだろうか


「今のところ、意識を有した霊装はお目にかかったことがないらしい、非常に珍しいものだそうだ、時価にして十億は下らないと言っていた」


「じゅ・・・」


自らの後ろにたたずんでいる騎士にそれほどの値打ちがかけられることに静希はおろか班の全員が目を丸くした


我ながら恐ろしいものを身内に引き入れてしまったのではないかと寒気がする


いや、それはもはや今更というものか


「・・・オルビアといったか、お前は五十嵐を使用者と認めたということでいいのか?」


「はい、私の忠誠はマスターの為に」


「・・・こうなっては・・・だが・・・うぅむ・・・」


オルビアの回答に城島は頭を抱えて悩みだしてしまった


悩みたいのは一班の人間も同じなのだが、その中の一番の当事者である静希は悩むそぶりなど一切見せていなかった


もはや悩むまでもない、すでに静希は厄介事の種を二つも抱えているのだ、今更一つ増えようが二つ増えようが同じようなものだった


「あぁもう仕方がない、この国の連中に何か言われても面倒だ、五十嵐、その霊装これから帰国するまで外には絶対に出すな、空港でのチェックの時も行きと同じように偽装した書類を用意しておけ、いいな、絶対に気取られるなよ」


「は、はい、わかりました」


城島の言葉に従って静希はオルビアを剣の姿に戻しトランプの中に収納する


事はこれで終わりかとも思ったのだが、城島の悩む姿はその場に置かれているままである


「ったくなんでお前達はこう厄介事しか・・・いやそうだ、お前達、先ほどの霊装の件はこちらの生徒も知っているのか?」


「いえ、問題になるといけないので伏せてあります、ただ剣を一本見つけたとだけ」


「そうか、その点だけはいい判断だ・・・となれば剣を一本適当に用意するか・・・」


また悩み始めた城島に静希達は困惑する


自分達だけの判断でオルビアを連れていくことを決めてしまったものの、実はとんでもないことをやっているのではないかと今更ながらに考えてしまう


静希に至ってはすでに国際問題級の存在を匿っているためそこまでショックは大きくないが他の班員はそういったことに耐性が低いため不安も大きそうだった


「やっぱなんか問題あるんですか?」


「問題しかないといった方が正しいな、さっきも言ったが霊装は作成者か担い手しか触れられない・・・話を聞く限り五十嵐、お前も最初は剣に触れられなかったらしいな」


「はい、でも俺の能力に収納したら皆触れられて」


「・・・はぁ・・・そこが問題の一つ目だ、お前もそして私も本来は担い手ではないのにもかかわらず霊装を持つことができた・・・それがもし仮にお前の能力によるものなら、この世界に数ある霊装のほとんどがお前の手によって使用可能な状態に変質することになる」


霊装がどれほどの力を有し、どれだけ数があるかも静希は知らない


だが先刻軽く城島が言ったように一つにそれだけの価値を生み出すことのできるものであれば秘めた能力もそれだけ強いものだろう


「でもそれってなんか問題あるんすか?霊装って言ったってただ能力持った道具でしょ?」


陽太の認識は間違っていない、霊装は能力を封じ込められ、随時使用することが可能となった道具だ


「もちろん全ての霊装が問題視されるわけではない、だが中には国家レベルで厳重に保管された危険な霊装だってある、簡単に言うなら五十嵐は今まで使えなかった核爆弾をいつでも使用可能な状態にできる能力を持っているということになる」


もしそれが事実なら、武力を目的とした人間は静希の力を求めて襲いかかってくるかもしれない


霊装を使用可能にできる能力者


収納系としての魅力はなくとも、それだけで十分以上に意味を持つ


「またお前の個人情報に機密が増えることになるな、喜べ五十嵐」


「喜べませんよそれ・・・」


厄介事が一つ増えただけかと思ったらその一つの厄介事はどうやら国単位での危険物を扱うかもしれないという程の重大事項


ただ剣を一つ拾っただけでこれとは、静希は不幸の星の下に生まれているのかもしれない


「そしてもう一つ、霊装は基本的に発見された国か担い手に所有権が発生する、無論売買することも可能だ、霊装は使えなければただの飾りでしかないからな、そういう意味では金持ちがインテリア感覚で所有していることも少なくないが・・・問題はこの中の誰も担い手ではないということだ」


そう、先も確認した通り静希も最初は剣に触れられなかった


静希は担い手でもないのに剣を所有する、そういうことになる


「そこで、この国でお前達は霊装ではなくただの剣を見つけたということにしておけ、誰にでも触れられる剣なら霊装と見破ることのできるものも少ないだろう・・・」


確かにそうすれば静希が霊装の使用限定を解除できることも知られず、所有権云々の問題も起きず、ただ剣を日本に持ち帰るだけで済むことになる


今できる最善の対策は城島の言う通りにすることだと静希達は直感で悟った


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