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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」
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対策会議

「ほれ、紅茶だ、有り難く飲めよ」


「砂糖とミルクは自由に使ってね」


「お、サンキュー」


「ありがとう、それにしてもほんとにここに住んでるのあんた・・・」


さすがにこの場所に住んでいるというのが納得できない、ここが能力専用の倉庫と言われても何ら不思議はない環境だった


「すごく居心地いいんだけどなぁ、そんなに変か?」


「まぁ普通ではねえと思う」


「ちょっと個性的かな」


「そうか・・・そんなに変か・・・」


あたりを見回して変なところを探そうとしているのだろうが、不思議な表情をして首をかしげる、どうやらどこがおかしいのかわかっていない風だった


「それにこんな機材どうやって手に入れたのよ、これすごく高いんじゃない?」


「あぁ、これは知り合いから譲ってもらったんだ、新しく機材を一新する時に邪魔だからって」


「これ全部?」


「いや全部じゃないよ、一つか二つだけ、まぁ他のも基本どっかがダメになった奴をもらって直したり、格安で手に入れたりと、色々やりくりしてる」


「はぁ・・・」


周囲の機材を見てもそれほどの苦労があったようには見えない、それどころか新品同様といっても通用するほどに手入れはされているようだった


「で、本題に入ろうぜ、今度の校外実習」


「あ、そうだった、皆これを見てくれる?」


テーブルの上に出した書類の中から何枚かの写真を取り出す


写っているのは作物だ、だが何かがかじりついたような歯型がついている


鋭く尖った犬歯のようなもので抉られた痕が見受けられる、人のものではなさそうだ


「これは?」


「今回の依頼先、牧崎村の住人から送られてきた資料よ、住人の話によるとこの一週間でこれと似た歯型を残して農作物がいくつかダメにされているらしいわ」


「牧崎村・・・?聞いたことないな」


静希がパソコンを起動して検索をかけてみると、すぐにデータが現れる


「あった、えと、牧崎村・・・山岳地帯にある村みたいだな、周囲を山に囲まれていて、村の中心には小さな川、主に米、野菜などを栽培、結構な量を出荷してるみたいだな、その筋では有名らしい」


「そう、先生曰く牧崎産の野菜って言ったらおいしいとか料理店でもよく使われる部類のいわばブランドものらしいのよ、静希、過去にあった野生動物による農作物の被害ってわからない?」


「ちょい待て・・・えっと・・・・・・最後にあったのは七年前だな、異常気象だった時に野生のイノシシが下りてきて作物の被害と人的被害があったって書いてある、それ以降は特にこれといってなさそうだ」


当時の写真がネットにも上がっていた、イノシシが何頭か山から下りてきて農作業をしていた男性一名が怪我を負ったとのこと


怪我でよく助かったものだと感心するほかない


「話を続けるわね、実はそのことで先生にも確認したのよ、なんでただの野生動物の処理を私たちがするのかってこと」


「だよなぁ、確かに簡単とはいっても能力者の実習ではないような気がするよ、依頼者の人たちには悪いけど」


依頼者からすれば死活問題だ、自分達の育てた作物が野生動物にやられてしまうのでは何カ月も育てた苦労が水の泡、無に帰してしまう、これほど悔しいことはないだろう


「でもね、そうでもないらしいの、実はその村、イノシシが出て以来野生動物に対して対策しているらしくて、村の外縁、山に面する場所に結構頑丈な金網を作ったらしいの、それも二重にして」


「ずいぶん厳重だな、そんな金よくあったな」


「何でもその土地の野菜の愛好家たちから寄付があったらしいわ、それほどおいしい野菜だってことよ、足りない分は村の人たちでお金を出し合ったんですって、それでこの写真を見て」


清水が一番上に置いた写真には金網の写真が写っている、金網の上には有刺鉄線が取り付けられており、猿などでもよじ登れないようにされていた


だが気になる点はそこではなく、その金網が一部大きく破壊されていたというところである


「なんだこりゃ、爆発でもあったのかよ」


「地面にも衝撃が伝わってるみたい・・・すごく強引に破ったみたいだね」


明利の言うとおり、破壊されているフェンスだけでなく、地面も少し抉れているように見える、フェンスはひしゃげてなぎ倒されているような構図だ


「この写真がどうしたって?」


「これらの写真を見て管制委員会はこう結論付けたらしいわ、能力を保持する野生動物の犯行であると」


その言葉を聞いて全員の顔が引き締まる


能力を保持するのは何も人間だけではない、特殊な能力を保持する可能性は生物すべてにあり得るのだ

動物が能力を保持する例は極めて稀だが、それは単に能力の存在に気付けないだけである。


本来ならば人間と同じ確率で能力を発現することができるのだろうが、野生動物にとって自分の体以外を操作するのは非常に高いストレスになる、しかも能力を保持していてもなんの指導も受けられない、まさに野生動物からしてみれば突然変異と言えるだろう


約百年ほど前、初めて能力を有したと言われる動物はアフリカで発見された


肉食動物から逃げる草食動物が発した炎を観測した時、人以外にも能力を有する可能性があると実際に証明されたのだ


それ以来、実験と解明により、人間と同程度の確率で能力が発生することもわかっており、全国的に能力を使用する生き物の被害が明確化してきている


今まで人の仕業とされていた能力による被害が野生動物による被害だとわかって以来、管制委員会もそれに対処しながら対策を施しているのだ


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