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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」
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城と船

城と言われて一番最初に浮かべるのは城壁、そして次に浮かべるのは石でできているか木でできているかの違いだろう


日本なら木が主流だが、海外はすべて石材で構築されている


静希達がエディンバラ城を見て一番最初に持った感想は『崖の上にそびえたつ建築物』だった


実際に崖の上に建っているわけではない、城の周囲の地面が高く反り立っているために高低差から崖のように見えるだけだ


そのせいもあってかどちらかというと城というよりも要塞という見え方の方が正しいかもしれない


近くに行けばいくほどその存在感は強くなり、それが眼前に迫った時に静希はその存在感の意味を理解した


一言で表すならそれは『時間』だった、積み上げて作られた石から、足元を支える通路から、外気にさらされ続けている壁から、静希は何も言われなくともこの城が経験してきた時間の片鱗を感じ取った


入場料を払って内部に入ると石に刻まれる時間はさらに増える


建物のいくつかは再建されているものもあるだろうが、逆に、何十年、いや何百年とそこに在り続けた石達の集合体がこの中には確かにあることを確信した


石に刻む、過去人間が使った伝達手段だ


だが今は人が文字を石に刻むのではなく何百何千何万と雨風にさらされてきた時間がこの石に刻まれている


はたから見ればただの石材の集合体でしかない、だが細かく見れば見るほどにその石がどれほどの時間を越えてきたかが垣間見れた


そして城内の最も古い建築物と言われるマーガレット教会


姿形自体はただの小さな家のような印象を受けるが、これまた異様な雰囲気というか、威圧感というわけでもないのに妙に存在感のある建物だった


移動中の通路から少し上を見上げると先ほど宮殿でも見た馬の描かれた盾のような紋章が飾られているのに気づく


意識的に探せばもっと見つけることができるだろう


城の中のいくつかは撮影禁止エリアなどもあったために写真に残すことは叶わなかったが十分に満足できた


「いやあ、城もなかなかよかったなぁ」


「まったくね、こう心の奥から来るものがあるわ」


「すごかったね、規模が違うというか」


「ああいう城に突貫とかしてみたいもんだ」


一人だけ感想がやたら実戦的だがその件は全員がスルーということで静希達は城を出てさらに移動を始める


「さて、次はヨータお待ちかね、クルージングと行こうか」


「夕方って言ってたけど、ちょっと早くないか?」


現在時刻は二時半、移動を加味しても三時くらいに現場に着いてしまう


「実はツアーは一つだけじゃないのよ、お願いしたらちょっとおまけしてくれたの」


「おまけ?どんな?」


「それは行ってからのお楽しみよ、まずはクルージングを楽しんでちょうだい」


シェリーの案内でクルージングを取り締まる事務所に来ていた


シェリーが二、三職員に話しかけると八人は水辺に止めてある一隻の船の下に案内された


大きなツアー用の物と違い大量の席などはないが八人どころか二十人くらいなら乗せられそうな大きさだった


操舵室と一緒の部屋もあるらしく、船内の内部構造もだいぶ広い


甲板も広く作られていてこれが小型船とは思えなかった


「今ツアー用の大型船は予約いっぱいだから用意できなかったけど、これなら小回りも利くしそれなりの水の上の旅を期待できるわ」


「おぉぉぉおおぉぉ!俺船乗るの初めてだ!」


陽太はすっかりテンションをあげている


静希も手漕ぎボート以外の船に乗るのは初めてである


これほどの大きさの船でさえ小型だというのだから恐ろしい


「操舵は誰が?」


「それも任せなさいって」


そういってシェリーが操舵室に入って帽子をかぶりだす


「シェリーは船舶免許を持っているからね、何も問題ないさ」


「このくらい必須技能よ」


どうやら能力があれば年齢に関わらずに免許が取れるのは日本だけではないようだ


やはり自分も免許を多く持ちたいと思いながら近くの手すりにつかまる


シェリーの合図とともに船は音を立てて動き出す


陽太は甲板の前ギリギリのところに立ち鏡花と明利は操舵室の屋根の上に座ってあたりを一望していた


静希は徐々に離れていく陸地を眺めながら周囲に目を向ける


いろんなところを眺めていてすっかり忘れていたが監査の先生は今ついてきているのだろうか


さすがに船内に入りこむことはできなかっただろうし陸地に置き去りかもしれないことを考えると少しだけ悪いことをした気分にもなる


無論先生からしたらそれは仕事だからしょうがないかもしれないがただの旅行気分の静希からすればわずかなりとも心が痛む


「静希君、いい景色だよ!」


「あんたもこっち来なさいよ!」


明利と鏡花が屋根の上から呼んでいる


どうやら船旅が相当気に入ったようだ


静希も屋根の上に登りながら周囲の景色を堪能し始めた


現在執筆中の方が六話まで完成したのでそのお祝い複数投稿


なお六話はワードに直して117ページほど


執筆速度が遅いからもっと早く書けるようになりたいものです


俺の執筆には情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりも早さが足りない



これからもお楽しみいただければ幸いです

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