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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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観光

「おぉお・・・」


陽太は以前の予想通りの反応をしておりそれ以上の言葉が出ていないように見える


いやその反応をしているのは静希も同じ


それ以上の言葉が出ないのだ


今までゲームや映画の中でしか見たことのなかった風景に自分たちが立っている


感動とも興奮ともつかない独特の昂揚感に襲われる


鏡花も明利もあちらこちらで写真をとっている


静希達もそれに負けじとこの風景をファインダーに収めていった


外壁や通路だけでも十分に心躍る光景だったが、中はさらに異国の風景だった


壁や装飾、床や天井に至るまで日本には見られない独特の空気を演出している


そこに置かれている家財道具、絵画、何に必要なのかもわからない壺など一様に『よくある西洋の描写』を体現している


一通り写真に収める頃にはすでに時間がかなり過ぎていたようで十一時過ぎになっていた


「さて、ご満足いただけたようだし、少し早めだがキョーカのリクエストにこたえるとしようじゃないか」


ハワードの案内で到着したのはパブ・コナンドイル


そしてそのすぐそばにシャーロックホームズの銅像は鎮座していた


「これよこれ!実物見るとやっぱり違うわね」


鏡花はいろんな角度から銅像を撮影しだした


そしてその光景は他の生徒にも見られた


どうやらこの銅像、結構有名なものらしい


コナンドイルの出身地であることすら知らなかった静希にはなんとも異様な光景だった


「なあハワード、昼飯はどうするんだ?そろそろ小腹がすいたんだけど」


「もしかしてあそこのパブか・・・?」


パブを指さしながら微妙な顔をしているとハワード達は笑いだす


パブは日本で言うなら酒場だ


いかに海外が酒万歳の国だって未成年の学生に酒を出す店で昼食というのはさすがにはばかられる


「さすがにあそこでは食べないよ、日本の学生は真面目と聞いているからね、希望を叶えるついでにちょっと遅めのランチを用意してあるよ」


鏡花が写真を撮り終えたあたりでまた静希達は移動を開始する


各所で写真をとりながらたどり着いたのはエレファントハウス


かつて有名作家がここで作品を生み出したというカフェだ


赤を基調としたカフェで周囲と比べると少しだけ目立つ


時刻は十二時四十五分ごろ


確かに昼食には少しだけ遅いだろうか


店の人にハワードが二、三話しかけている間にあたりを見回す


まさにカフェといった感じの店内は同じデザインのテーブルと椅子、そしてショーウィンドーの中にはいくつかのパンケーキなどが並んでいる


その近くにはメニューの看板もつけられており全て英語だったがなにを示しているのか程度は静希にも理解できた


ハワードに続いて奥の席に行くとそこには二つのテーブルをくっつけて八人で座れるようにしてある空間があった


「ひょっとして予約とかしておいたのか?」


「その通り、ここは有名だからね、この人数で入るにはさすがに事前に知らせておくのが筋ってもんさ」


なるほど確かに平日の昼間であるのに席はほとんど埋まってしまっている


席について各員適当に昼食を注文する


窓際の席からはエディンバラ城を見ることができた


「へえ、ここから城が見えるのか」


「ここから見えるだけじゃないわ、ちょっとしたイベントもあるもの」


「そりゃ楽しみだ」


静希達が談話しながら昼食をとっていると、突然空気の振動するような轟音が近くで響いた


今まで聞いたことのない独特な音だが、それが何かの炸裂音であることが静希には理解できた


「な、なんだ!?」


とっさに一班のメンバーに緊張が走るが周囲の客は平静を保ったままだった


「はっはっは、やっぱり驚いてくれたか」


「は?今の音なんだよ」


驚きながらも窓の外から周囲の状況をうかがうが街の様子もまったく変化はない


「今のはエディンバラ城から聞こえたのさ、毎日十三時にあそこは大砲をうつんだ、驚かせてすまない」


悪気はなさそうだが静希達の驚きが忘れられないのかハワード達は肩を震わせている


「人が悪いぜハワード、こっちは銃社会に慣れてねえんだ、そういうことでもあったのかと勘違いしちまったよ」


「ふふ、最初は驚くのは当然よ、あとで城も案内してあげる」


「それにしてもヨータの驚きっぷりは傑作だったな」


「うるせえ!」


陽太は紅茶を飲み干しながら少しばつが悪そうにしていた


その数分後、昼食を終えた静希達はすぐそばのエディンバラ城へと足を運んだ


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