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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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街と情景

「終わりました、けど監査の先生も旅行に来ていたんですね」


「無論だ、お前達の警戒は常に行っている、安心して旅行を楽しめ」


監視されているから安心しろというのも妙な話だが、保険はかけておいた方がいい


万が一に備えることは重要だ


その万が一が起きた際、監査の教員、そして学校側がどのような対応に出るかは静希にもわからないが悪いようにはしないだろう


もちろん万が一が起きないに越したことはない


その日は注意事項のみで終了した


どうやら他の班のクラスメートたちも何とか言葉の壁を越え上手く交流できたようだ


能力を使用した生徒同士の交流はおおむね成功したと言っていい


旅行二日目の交流はこうして終わる


そして三日目、街を案内してもらうことになっている静希達はまずバスで専門学校の駐車場まで来ていた


時刻は十時


昨日とほぼ同じ時間帯で大体街は動きだし、各店も開店しているころだ


教師陣の指示に従いそれぞれ班と合流している中静希達も問題なくハワード達と合流に成功していた


「やあ皆、昨日はよく眠れたかい?」


「まぁまぁってところかな、今日はよろしく頼むよ」


昨日と同じように明利とローラの能力による通訳を受けながら静希達は朝の何気ない挨拶を交わしていく


「ところでシェリー、クルージングの件はどうだった?」


「えぇ、時間が夕方からに指定されちゃったけど、小さな船でよければ出せるわ」


「よっしゃ、期待してるぜ」


陽太のお楽しみとだけあって意気揚々としていた


「そうそう、今日の予定を軽く話しておこうか、君達の行きたい場所をとりあえず順に回っていくよ、昼食は何か食べたいものはあるかい?」


「んと、それじゃあお勧めでお願いするわ、美味しいランチを期待してるから」


無駄にプレッシャーをかけるのは鏡花らしいが、なんとも無茶ぶりだ


正直何でもいいと言われるのが一番困るのに


同じくお任せというのもかなり困る


それをわかった上でやっている鏡花はやはり曲者だろう


「期待されちゃあ最高の物を用意するしかないね、それじゃあ行こうか」


ハワードを先頭に移動を始め、鏡花は城島たちに出発する旨を伝える


「B組一班、これから市街交流に向かいます」


「了承する、くれぐれも気をつけてな」


その気をつけてというのはどちらかというと静希に向けた言葉なのだろうがこればかりはしょうがない


悪魔と契約したものの宿命なのだと諦めよう


城島の視線に気付きながらも静希は肩をすくめてハワード達の後に続く


「さて一班諸君、まずは我が街の美しい景観を見ながらの移動とさせてもらおう、近くからバスが出ている、それで街の中心部まで行くよ」


ハワード達が静希達の背を押すようにバスに乗せる


バスの料金は一ポンド弱、しかも距離に関係ないのだという


日本とはバスの制度まで違うのだなと半ば感心する


つり革につかまりながら外の姿を眺めていると今までバスで移動してきたのとは全く別の道を通っているのに気づく


空港からホテル、ホテルから学校までしか通ったことがなかったために新しい場所に来ると新しい発見がいくつもある


「それじゃあさくさく見て回ろうか、時間も限られていることだしね」


ハワード達の案内で静希達は本格的に移動を開始する


一番最初に向かったのはロイヤルマイルという通りだった


多くの店や土産物屋があることで静希達は数多くの土産を手に入れることに成功する


「あまりたくさん買うと荷物が重くなるよ?」


「重くなったら陽太に持ってもらうから問題ないわ」


「お前さりげなくひどくね?」


さすがの鏡花もこれは冗談だったのかわざわざ陽太に荷物持ちをさせることはなかった


適度に土産も購入し静希達は次にホリールード宮殿に連れられた


外観はまさに昔の西洋の建物といった古風な雰囲気を醸し出している


石で構築され細部にまでこだわりを持って作られているのが素人目にもわかるほどに


かなり古くに建てられたもののはずなのに硬度的にほとんど劣化しておらず丁寧に掃除されているであろうこともうかがえた


広い敷地には芝生が敷き詰められ見るものが見れば要塞とも城壁とも見れるほどに大きく、何よりも気品を感じさせた


どうやら一般公開もされているようで静希達は中に入ることもできた


入場料を払うとそこには外からは見ることのできないまったく別の世界が広がっている


門や壁、そして天井などに時たま馬の描かれた紋章のようなものが取り付けられているのに気づく


そして内部からうかがえる風景は外から見るものとはまた違った印象を受けた


外から見ればそれはどこかの写真の一枚に残されたような、届かない風景のように感じたが、中に入るとまた一変、まるで自分が絵画の中に入りこんだかのような錯覚に陥る


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