演習場の差異
注 これからの会話は全て翻訳できているものとして行います
私は英語が苦手です!
「改めて、初めまして一班のみなさん、俺がこの班の班長、ハワードだ」
「おなじくA班、マーカスだ」
「同じくシェリー、同調しているのはローラよ」
「よろしくね、通訳は任せて頂戴」
金髪の男子生徒、A班の班長ハワード、そして黒髪のマーカスに栗色の髪をしたシェリー、黒髪で同調能力により静希達の言葉を全員に伝えているのがローラ
これでこの学校を案内してもらううえでの最大の障害が取り除かれたわけだ
「にしてもそっちも俺らと同じことを考えているとは思わなかったよ、日本人は綺麗な英語を使うからてっきり必要ないかとも思っていたんだが」
「そうでもないよ、さっきのだって事前に考えてあっただけだ、英語の成績なんてそう良いものじゃない」
「たしかに発音もそんなによくなかったものね」
「シャラップ鏡花」
苦笑いと談笑に咲く中、静希は咳払いして改めて自己紹介する
「ではこちらも改めて初めまして、一班班長清水鏡花よ、今日はよろしく」
「同じく一班、響陽太だ」
「同じく一班、五十嵐静希、同調してくれてるのは幹原明利だ」
「よ、よろしくお願いします」
挨拶を終えたところでハワード達は教室を出て学校内を案内してくれることになった
静希達の知る高校と違い、海外の高校はいたるところが日本のそれとは異なっている
具体的に言うなら規模が違う、教室の大きさから道の大きさから天井の高さまで何もかもが違う
そして何よりも違うのが屋外の構造だった
一通り校舎を見て回った後、静希達を連れたハワードは演習場に来ていた
喜吉学園と同じく数多くの状況に対応できるように森林地帯、岩石地帯、平野、コンクリート、そして最も異なる点があった
「なあハワード、あの建物はなんだ?」
静希の指さす先には小型のビル群が設置されている
全てコンクリートがむき出しになっているただそこに在るだけのビル、静希達が見てきた校舎と違い随分と傷んでいるようにも見受けられた
「あぁ、あれは屋内戦闘用の演習場だよ行ってみるかい?」
「屋内・・・そういうのもあるのね」
静希達からすれば屋内戦闘などという考えなど及びもしなかった
屋内で派手に能力を使いでもしたら即学校側に連絡が通り何らかの処罰がなされてしまう
特に部屋や建物自体を破壊するような能力はご法度だ
だが確かに屋内における戦闘がないとも言いきれない
そういう意味では屋内戦闘用の演習場があるのもうなずける
ビルの中はまったくの空白と言っていいほどになにもなかった
通路、なにもない部屋、そして窓、視界に入るのはそれだけで他はすべて灰色のコンクリートで構成されている
窓の向こうは別のビル、どうやらこの演習場はビル群を想定した障害物ありきの三次元戦闘も行えるようになっているようだ
「ここから隣のビルに飛び移ったり、ビルの壁や床をぶちぬいたりして戦うんだ、なかなか爽快感があるんだよ」
「あまりやり過ぎると怒られるけどね」
「でもそうでもしないと奇襲できないからなぁ」
「ビル一つ破壊した奴もいるくらいさ、戦い方は人それぞれ」
四人の説明に静希は納得しながら窓から顔を出す
なるほど隣にあるビルの間隔からして確かに跳躍すれば飛び移れそうだ
戦略に幅が広がるというのもうなずける
何より通路や壁によって視界確保が難しい上にどこに敵がいるかもわからないという緊張感を味わうことができる
森林地帯はまだ葉の音などで判断できる人の気配も、人口建築物の前にはないに等しい
ここでは動物的な戦闘より戦略を使った戦い方が主流となるようだ
ブービートラップや待ち伏せ、時には高低差も利用できる
考えれば考えるほど良い演習場だ
何で日本にないのかと考えるとやはり土地の問題か
少々残念に思いながら静希は窓から身体を乗り出す
「よっ!」
全力で跳躍して何とか向かいのビルの窓に飛び移る
ビルの高さはせいぜい十mといったところか、この高さであれば十分な制圧戦を演じることもできる
「陽太、ちょっと屋上までいってみてくれないか?」
「おうよ」
陽太は即座に能力を発動し、炎を纏った鬼の姿になる
その姿にハワード達は驚いていたが同時に感心しているようだった
「こっちも行ってみるか」
壁を蹴り跳びあがり三角飛びの要領でどんどんと上の階層へと跳躍していく陽太に負けていられないと思ったのか、マーカスもその後に続いた
「うわ、あの人すごいわね、陽太についていってるわよ」
「むしろヨータの方がすごいよ、マーカスは強化能力なんだけど、彼と同じ動きができるとはね」
陽太はほとんど強化能力者のようなものだ、そう考えるとマーカスとは何か通じるところがありそうだった




