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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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教師の役目

鏡花の言葉を無視して紅茶を堪能しているとだいぶ日が昇ってきたのがわかる


あたりは十分明るくなり窓の外には異国の風景が映されている


だいぶ時間が経ったためか、いまだ興奮が収まらないのか、生徒の数はどんどんと増えていた


「なんだお前達、優雅にお茶会か?」


紅茶を飲みながらのんびりしているとけだるげな欠伸まじりの声が静希達に飛んでくる


静希達の担任教師の城島だった


「ったく、若者は早起きでうらやましいことだ、もう少し寝かせろってのに」


「眠いなら寝ていたらいいのに、まだ七時にもなってませんよ?」


「旅行メインのお前たちと違って私達は引率って立ち場があるんだよ、夜は次の日程の会議、朝は見張りだ・・・」


まったくやってられないと愚痴をこぼしながら城島は静希達のテーブルの一角に腰を下ろす


「五十嵐、清水、旅行において問題はないか?」


問題はないかという言葉に静希と鏡花は視線を交わす


恐らくいいたいのはメフィと邪薙のことについてだろう


石動がいるからそこら辺を濁しているのだろう、陽太がこの場にいなくてよかったと半分安心した


「えぇ、何も問題ありませんよ、部屋も問題ないです」


「そうか、ならいい」


ホテルの部屋に監視カメラの類がないことを伝えようとしたのだが上手く伝わったかどうかは分からない


どちらにせよ無意味な衝突や面倒事は避けないと本当に豚箱行きになりかねない


注意は何重に重ねても問題ない


問題があるとすればそれは静希ではなくメフィや邪薙だ


「ところで他の班員はどうした?まだお休み中か?」


「えぇ、陽太は二度寝」


「明利はまだ」


「私の班も同様です」


「そうか・・・とはいえ生徒の数が増えてきたな」


旅行中はどうしても興奮が残る者が多い


寝付けないものもいれば目覚めるのが早いものもいる


普段とは違う生活のリズムや独特な空気が生徒に緊張と興奮を与えるのだ


「先生、今日の交流って一体何するんですか?詳しいこと何も聞いてないんですけど」


「あぁ、単純だ、今日は学校内のクラスずつ別に行動して各班、交流するクラスのどこかの班に学校内を案内してもらい、明日は街を案内してもらう、それだけだ」


聞いているだけなら何でもないただの交流会だ、何かイベントがあるわけでもなく、ただ一緒に行動しているだけ


それが通じるのはあくまで同じ国の出身であればの話だ


違う国で違う言語で一緒に行動しろと言われても何を話せというのか


正直拷問以外の何物でもない


せめて集団行動であればまだ気も紛らわせたのに


「ていうか街の中まで向こうの班と一緒にいなきゃいけないんですか?」


「そうだ、せっかくの交流会だ、仲よくしてろ」


「通訳とかは?」


「あるわけないだろ、身ぶり手ぶりのボディランゲージで何とかしろ」


そんな無茶なと呆れるが、この街に住んでいる学生の案内が入るというのはありがたい


言葉の問題さえクリアすればこれほど心強い観光ツアーもないだろう


「なんていうかすごい投げやりな交流会ですね」


「生徒の自主性を重んじる交流会と言い変えろ、聞こえがいいだろう?」


物は言いようだが、にしたって教師陣がなんの企画もしていないというのはいったいどういうことなのだろうか


確かに交流というのは本来生徒同士で行うべきであるというのは理解できる


だからと言って異国同士の人間を突然鉢合わせて一体何を話せというのか


「お前らからすれば普通のことかもわからないが、向こうからすれば特殊なことだってある、自己紹介と日本の生活くらいは話してやれ」


「と言われても、私は何を話せば・・・」


そう、静希達からすれば一般的な日常生活を話せばいいのだが、石動はエルフだ


ある程度知名度のある人種であり、最も注目されることだろう


なにせクラスにも学年にもエルフは石動ただ一人なのだから


「あー・・・そうだな、とりあえずエルフの掟のことでも話しておけ、こちらでもエルフは珍しいようだからな」


「そんな適当なこと言って」


「事実だ、向こうの学校のエルフは三年生に一人いるだけで二年にも一年にもエルフはいない、珍しがられることはあるだろうが、話題には困らないだろう」


「あとは言葉をどうするかということですね」


最も根本的で最も大きな問題だ


静希達が話せる英語などたかが知れている


だからこそ能力で何とかしたいところだが、明利の能力が当てにできなくなった場合の対策はしておくべきだろう


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