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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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朝のティータイム

「茶葉はそんないいやつじゃないけどそこは勘弁な」


カップにそれぞれ紅茶を淹れ二人に手渡す


「いや、こんなところで飲めるとは思わなかった、有り難いよ」


石動は仮面の下半分を外し口元を露出させゆっくりと口をつけた


「静希の能力がこんなふうに役立つなんてね、戦闘以外で使うとこ初めて見たかも」


「失礼なやつだな、俺の能力は本来こうやって使うものなんだよ」


そう、収納系の能力の真髄は運搬と保存、戦うためのものなどではない


本来の用途は後方支援であり、非日常より日常に近い場所が活躍の場となる


それは収納系統の能力者である静希も同じことのはずである


だが静希の場合は圧倒的な劣等性も組み合わさって試行錯誤の上で今のスタイルを確立したに過ぎない


「ふむ、やはり朝は紅茶だな」


「ミルクと砂糖はないの?またはレモンとか」


「贅沢ぬかすな、砂糖はあるけど牛乳やレモンはねえよ」


「砂糖はあるんだ、なら頂戴よ」


しょうがないなといって静希はハートのトランプの中から鏡花の紅茶めがけて砂糖を少量投下する


「にしても石動は紅茶を飲む姿が似合うな」


「朝一番の行動は、新聞を見ながらこうして紅茶を飲むことだからな、あいにく新聞はないが・・・」


「天気予報ならわかるわよ、本日は快晴、魔素も大気の流れも穏やかな一日となるでしょう、やっぱ紅茶は甘くないと」


携帯で今日の天気を眺めながら甘くなった紅茶をすする


魔素濃度も安定、大気も安定している、これなら不意の雨に降られることもなさそうである


魔素濃度


文字通り空気中に含まれる魔素の濃度のことである


能力者が能力を使うために必要な燃料でもあるこの魔素は濃度の濃薄によって天気に若干の影響を及ぼす


具体的には風の向きが微妙に変わり本来雨になる場所が晴れになっていたり、またその逆であったり


狐の嫁入りと呼ばれる現象も魔素の濃度の違いによって起こると言われている


大気も濃度も安定していればその日は安定して晴れであるという証でもある


「あれ?お前の携帯こっちでも使えるのか?」


「もちろん、世界各地で使えるようにしたんだから」


「俺のはここでは対応してないみたいでな、機種変するかな・・・」


携帯電話は基本的に現在は海外でも使えるようになってはいる


だがその企業によってはある一定の地域では使用できないことが多い


静希の使用機種はちょうどヨーロッパ一帯は使えないようだった


「そういえば石動のクラスも交流するんだろ?エルフって海外にもいるのか?」


「あぁ、海外にいる同胞のいくつかとは交流がある、もっともこの国にいるかどうかは分からないが」


「海外のエルフもやっぱり仮面をつけてるの?」


「どうだろうな、日本のエルフの民は掟を守ることを重視しているが、海外はそうでもないと聞いたことがある、顔を隠すのも仮面ではなく別の物をつけているものもいると聞く・・・仮面を持っている者もいるだろうが、四六時中つけている、ということはないだろうな」


精々アクセサリー程度の認識だろうと自分の仮面に触れながら石動はカップを傾ける


やはり同じエルフといえど国が違えば風習なども違うのだろうが


どうやらエルフにとって重要なのは仮面ではなく素顔を隠すことにあるようだ


そう考えると仮面の下を覗かれるというのは非常にまずい行為なのではと今更ながらに思う


そう考えていると石動はわずかに笑う


「そう深く考えるものでもないだろう、お前たちが服を着るような感覚で私たちはこれを身につけている、それこそアクセサリーのようなものだ」


「でも掟って言っても面倒じゃないの?なんていうかずっとそんなのつけてるんだし」


「そうでもないぞ、慣れてしまえば特に困りもしない」


「夏場とか蒸れそうだよな」


「確かにそれはあるが、夏は仕方ないだろう、暑いからと言って服を脱ぐわけにもいかないのと同じだ、少しお前たちがうらやましくもあるがな」


やはりエルフといえど思うところはあるのだろう


無理もない、周りがすべて仮面をつけているのであれば疑問に思うことはないだろうが石動の周りは皆ただの能力者、仮面をつけていることもない


自分が仮面をつけることが掟であると頭ごなしに説明されたところで理解も納得もできないことだってある


静希がもし仮に石動の立場であれば里に戻る時だけ仮面をつけてそれ以外では外していると断言できる


「時に五十嵐、このティーカップはどこのものなんだ?」


「あぁ、昔アンティークショップで買ったやつだよ、それほど高くないし軽いから手頃でな」


三人が持っているカップはそれほど大きくなく、それでいて小さくもなく非常に軽かった


静希の能力の性質上軽いことが絶対条件、そういう意味ではこのカップは最適だと言っていいだろう


「ふむ、いい趣味をしているな、見直したぞ」


「そりゃどうも、もっとも俺の趣味じゃなくて明利の趣味だけどな」


「ほう、幹原の趣味か、なら彼女を見直すべきだったな」


「さりげなく一緒に買い物に行ったことあるのね・・・」


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