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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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国の違い

静希達の宿泊するホテルがあるのは街のほぼ中心部


周囲を見ればそれだけでいつもと違う光景が目に入る


ただ歩いて周囲を見渡すだけで観光になってしまう


日本とは違う構造概念の下作られた建築物


日本が木で造られた建物が多いのに比べこちらは石で造られたものがほとんど


採石技術の違いか、加工技術の違いか日本では見られないような石造りの建物や道路やモニュメント


裏通りなどはコンクリートではなく煉瓦造りで舗装されているところもある


時間もそれほど多く見積もられているわけではないため静希達はとりあえずホテルの位置する街の中心部、特に店などのある場所を重点的に見て回った


といっても時間が足りな過ぎた


見慣れぬ街で店を探して店頭で商品を見て回る、それだけであっという間に時間は過ぎてしまう


十七時少し前にホテルに戻り、ロビーで書類を書いている城島を見つける


そして彼女も静希達に気付いたのかこちらに来いとジェスチャーで合図してきた


「自分達の知らん街はどうだった?」


「すごかったです、なんていうか、まったく私たちとは違う感じがしました」


「空気もそうですけど、街全体が歴史を感じさせましたね、何枚写真に収めたかわかりませんでした」


「確かにね、ちょっとした街角も風格を持っていた感じだったわ」


「なんにせよ来てよかったって感じっす」


四人の反応に城島も満足そうにそうかと呟いた


自分達の知らない世界を見れたことで四人のテンションは高め、明利ですら少し気分が高揚しているのか嬉しそうにし、口数が多くなっている


「この後の指示は何かありますか?今日は自由時間くらいしか見るものがなかったんですけど」


今回の旅行の資料を目に通すが、一日目はほぼ移動、そしてわずかな自由時間


二日目は某能力専門学校との交流、となっており一日目のスケジュールが非常にあいまいだ


「ふむ、こちらとしてもいろいろあってな、向こうの教師陣との会合の間お前達には暇を持て余してもらうことになる、十九時に夕食があるから二階の大広間に集合なのは資料の通り、それまでの間は好きにしろ、ただしホテルからは出るな」


「せっかく時間があるのにホテルから出るなって・・・なんかもったいなくないっすか?」


陽太のいうことはもっともだ


十九時に夕食だというのなら集合時間を十八時にしてもよさそうなものだが


「お前達は仮にも能力者、しかも日本に四つしかない専門学校の一年生ではっきり言えば日本政府の未来の虎の子的な存在でもある、余計な茶々を入れようとする奴らもいるってことだ」


「だから自由時間も少ないと?」


「自由時間というか、監視下から外れられると困るんだ、特にお前はな」


静希を指さし城島はため息をつく


城島の持つ資料にはこの街の警備体制や監視状況、そして今後の行動内容などが書き記されていた


「はっきり言えば、この交流旅行も国同士の牽制のやり取りと同じようなものだ、うちにはこんな能力者がいます、いえいえこちらだってこんな能力者が、てな感じでな」


「なんか外交のカードにされてる気がするんですけど」


「国が関わればどんな人間だってカード扱いだよ、お前達はまだ外交に深く関わることにはならないだろうさ」


まだなと最後に付け加えて城島はロビーから自室に戻っていく


能力者の待遇は国によって異なる


それこそ一般人と同程度の扱いしかしていない国もあれば国自体が能力者を援助している国もある


その中で日本は能力者の援助はそれなりに多い国だ


過去諸外国と戦争していた時代に人的にも技術的にも劣る日本が各国とほぼ対等に渡り合えた理由に能力者の教育制度があげられる


当時から自国資源の乏しかった日本が国全体の計画として立ち上げたのが能力助長による国力の増強


当時、能力が解明されてから随分と時間が経ちその知識も一般的になってきた中で国が能力者を育てようとした試みは世界で日本が初めてだった


それまでただ個人の個性や特技などでしかなかった能力を組織に組み込もうとした、それは技術や資源、人員で劣る日本のとった量より質とも言える苦肉の策ではあったが、その効果は凄まじく次々と戦果をあげていったと聞く


だが結局は物量には勝てず、日本は敗戦し、諸外国との条約締結を機に終戦、そして今なお能力の助長は国にとっても外交にとっても良い戦略手段になると今の能力専門学校を設立することになる


そしてそのノウハウ、教育における注意事項や能力系統の分析や分別を各国と改めて協議、そうして生まれたのが世界各国に点在する能力専門学校


つまりは世界中に在る能力専門学校は日本の四つの学校が基盤となって生まれたと言っても過言ではない


そして静希はその能力者の中でさらに稀有な存在になりつつある


ただの能力者ならたとえ能力が強くても外交のカード程度だっただろう


だが静希はただの能力者ではない


悪魔に魅入られ、神格の加護を得た存在だ


日本を含め政府の人間にそれを知られればどうなるかわかったものではない


それがわかっているから城島も慎重になっているのだろう


そのことは静希も十分に察していた


予約掲載なので二話投稿してみたり


できるか分からないけれど年明けまでは二話連続投稿していこうかと思います


これからもお楽しみいただければ幸いです

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