表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/1032

機内の様子

「機内食ってこんな感じなんだな、なんか意外だ」


「もっとレトルトな感じかと思ってたけどそうでもないな」


「まぁ本場とかと比べるとしっかりしてるとはいい難いけどね」


「これはこれで美味しいと思うよ」


日本時間で換算して正午あたりになったころ、機内では食事が振る舞われていた


和食か洋食か選ぶことができ、静希と鏡花は洋食、明利と陽太は和食を選択していた


「俺らが向こうに到着するのって何時くらいなんだ?」


「それは日本時間?それとも現地時間?」


イギリスと日本の間には九時間の時差がある


常にイギリスの方向へ向けて移動し続けている静希達からすれば時間感覚が微妙に狂い始めるだろう


「えと、向こうに着くのに十二時間で・・・イギリスとの誤差が九時間で・・・えと十時の便に乗ったから」


「日本時間で言えば向こうへの到着は二十二時、でもイギリスの現地時間で言えば十三時に到着することになるな」


「おぉ!なんだ実質三時間しか経ってないってことか!案外近いなイギリス」


その考えは果たして正しいものか、いや正しくはないだろう


九時間という時差は言葉で言えば軽いものだが一日の三分の一以上の時間がずれていることになる


睡眠時間で調整できないこともないが、その慣れを起こすためには静希達は海外行動に圧倒的に不慣れなのだ


「逆にだ、イギリスから日本に帰る時は例えばイギリス時間十時の便に乗ったとしたら日本時間の翌日の七時に着くことになる」


「はぁ!?二十一時間もかけてんじゃねえか!結構遠いなイギリス」


時間の関係を理解していない陽太に対してはイギリスが遠いものなのか近いものなのか上手く理解できていないようだ


静希だって時差の関係を完全に理解しているわけではない


どちらにせよ時差を上手く調整するために時計をすでに現地時間に直して行動する方がよさそうだ


「今はイギリスは深夜、もう二、三時間すれば日の出ってところか、今のうちに寝ておいた方がいいんだろうけど」


「さすがに眠くないわよ、お昼からぐっすりなんてできないわ」


「うん、それにすこしだけど興奮してるし、眠れないよ」


「それこそ睡眠薬の出番じゃねえか?」


「っていってもあれの効果時間短いからな、身体が眠る体勢に入ってなきゃ無駄に終わるだけだぞ」


バスの中での陽太と同じく、身体が眠っている状態でなければ結局二時間程度で目を覚ましてしまう


静希の持っている睡眠薬はあくまで睡眠誘発剤のようなもの


深い眠りに陥れるものではなく眠りのきっかけを与えるものだ


身体が眠る状態に入っていればそのまま深い眠りへと移行するのだが、初の旅行でテンションの上がっている状態では効果は期待できないだろう


後十時間何をして過ごすかで向こうの行動も随分と違ってくるだろう


万全を期したいところではある、頭ではそれを理解できているのだが身体はどうしても行動していたいという欲求にかられている


「うだうだしててもしょうがねえし、せっかくだから飛行機を満喫しようぜ、聞いた事ねえ曲とかまだ見たい映画もあることだし」


「それもそうね、眠くなったら静希の薬を貰うわ」


「まだ空の旅は長いもんね」


「あぁ、後十時間くらいか、先は長いな」


静希の言うとおり、先は長かった


半日を飛行機の中で過ごすということもあり、普段自分がしている行動の半分以上が拘束されている状況ではできることは限られる


それこそ機内サービスというものも多く存在するが、それで時間を潰せるのもせいぜい一、二時間


搭乗してから約四時間程度が経過したあたりから静希達は全員仮眠をとっていた


時間にして五時間ほど眠っていただろうか


はしゃぎ疲れた身体と同じように、日頃神経をすり減らしていた静希にとって穏やかな睡眠は非常に癒しとなったのだろう


目を覚ます頃には妙な爽快感とさっぱりと眼のさめた状態になっていた


「お、静希起きたか、あとどれくらいで着くんだ?」


「あぁ・・・ちょっと待ってくれ」


静希は時計を確認するとイギリス現地時間で十二時、後一時間ほどで到着することになる


「そろそろこいつらも起こしておくか、おい明利、鏡花、そろそろ起きろ」


「んん・・・あによ・・・」


「・・・もう時間?」


二人は眠気眼をこすりながら朦朧としている頭を揺らしながらあたりを見回す


どうやらいま自分がどこにいるのか確認できていないようだ


そして数秒した後に自分が今どこで何をしているのかを確認できたようで急に目を見開いた


「静希あんたねえ、乙女の寝顔を何だと思ってるのよ・・・」


「あ?んなもん見慣れてるっていったろ、ほら明利おしぼりで顔拭いておけ」


「うん・・・ありがと」


まだ覚醒しきれていない明利に熱いおしぼりを渡しながら静希は鏡花に構うことなくコーヒーを飲み干す


「なんか納得いかないわ、こいつ手慣れすぎじゃないの?」


「今更だよ、こいつにそういうのを求めるのがまず間違いだ」


静希の対応に普段犬猿の仲の二人も呆れ半分にため息をつく


彼らがイギリスの地にたどり着いたのはそれからきっかり一時間後のことだった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ