空へ
「なあ、バスの中での記憶がほとんどないんだが・・・俺何してた?」
「ぐっすり寝てたぞ、楽しみ過ぎて寝不足だったんだろ」
「そうか、そうかなぁ」
バスのほとんどを寝て過ごした陽太は首をかしげながら疑問符を飛ばしている
空港についてすぐ静希達は荷物を持って整列、人数確認を含めた点呼とともに各クラスでのわずかな自由行動を行っていた
パスポートの確認と荷物の搬送、そして手荷物の確認、これらが一番の難関だったという他ない
特に静希の能力、収納の能力で一番苦労した
収納能力は多くのものを搬送できるために重宝されるがその分自分が今持っているものを事細かに記す必要がある
あらかじめ書類にまとめていたために提出は楽だったがその記入内容を工面するのが最も苦労した内容だ
素直に収納内容悪魔及び神格などと書くわけにはいかない
静希のよく使う気体系等に紛れ込ませることで事なきを得たがはっきりいって何度もわたりたい橋ではなかった
出国検査を終えた後での空港内はいくつもの店と談話室のような場所が設けてあり時間を潰すには事欠かなかった
特に必需品の再確認、そして入手にも何の苦労もなく静希達は有意義に時間を過ごしていた
陽太に関しては予想外の忘れ物が目立ち少しながら買い足していたようだが他の班員はそのようなことはなく、敷地内の喫茶店や購買で時間を潰していた
これから半日飛行機の中に缶詰めになるということもあり全員が少々浮つき、それでいてわずかな期待と少々の倦怠を見せている
バスに二時間以上乗った後に半日飛行機ではさすがの飛行機初体験といえどだらけるのが目に見えている
「よっしゃ、後は菓子でも買っとくか、結構長くなるみたいだしな」
だがそんなことはお構いなしに買い物を続けた陽太に関してはなんというかさすがとしか言いようがない
ただ何も考えていないのか瞬間瞬間を生きているというべきか、なんにせよ非常にうらやましい生き方だなと静希は陽太の後に続いていろいろ買いだしを続けていた
「おぉぉおぉぉ、これが飛行機か!」
「おぉ・・・実際見ると凄いもんだな」
「うわぁ・・・座席フカフカだよ」
集合時間となり機内に入るころには先ほどまでの倦怠が嘘のように全員がはしゃぎ始めている
指定の席に座り離陸を待っていると各教師がいくつも注意事項を述べていく
曰く、能力使用は厳禁、離着陸時は着席さらにシートベルトを必ず着用、有事の際は教員の指示を仰ぎ各員行動すること
なにか起こるのが前提のような言い回しだがなにもないことを祈るしかない
とうとう時間となり業務用のアナウンスとともに放送が入り生徒の緊張をわずかではあるが加速させていく
窓から見える景色は先ほどまでいた空港、そして縦横無尽に張り巡らされている幾多の滑走路
陽太は窓にへばりつき、鏡花は陽太をたしなめ、明利はわずかに震え、静希は明利を勇気づけていた
そして飛行機が長い直線に入り数分後、旅客機が急加速を始める
静希達の身体にわずかなGが襲いかかり浮遊感とも取れないような不快さが体中を走る
その不快感が訪れた数秒後、静希達を乗せた旅客機は滑走路を離れ空へと昇っていく
小さな歓声とともに生徒の緊張が途切れ一斉に話声が聞こえだす
徐々に離れていく陸を眺めながら陽太ははしゃいでいた
「やっぱりあの加速は何回乗っても慣れないわね・・・」
「妙な感じだったな、何というかぞくっとした」
「ふぅ、思ったより揺れないね」
「すっげー!もうあんなにちっちゃいよ」
班員が緊張の糸を緩めていると機内放送でシートベルトをはずしてもよいという放送が入る
どうやら安定した飛行ができるくらいにまで高度を上げたようだ
こうなってしまえばあとは十二時間ほどの空の旅、何もすることはないだろう
ゆったりとした空間を満喫しようと静希は大きく息をつく
トランプの中の二人には絶対に出てくるなよと伝えてあるために出てくることはないだろう
思えば高校生になって、もっといえば実習が終わってからゆっくりと過ごすのは実に久しぶりな気がした
家ではメフィや邪薙たちの相手で忙しく、学校ではやることが多く、のんびり過ごすというのは最近では記憶にない
我ながら爺臭いと思いながら静希は席に用意された機内放送の一覧を眺めていた
映画や音楽、ゲームなどもできるようでかなり種類があるように思える
「おい静希、映画見れるぞ映画、しかもこの前やってたやつだ」
「あぁ、車が変形するのとか宇宙戦争ものとかな」
「他にもいろいろあるみたいだよ、アニメ映画もあるみたい」
「まぁ数時間は暇つぶしになるでしょうね」
四人で色々と選択しながらいくつもの映画を探し、全員で視聴、ゆっくりと空の旅を満喫していった
大量の誤字報告となんかランキングにいつの間にか載ってた(本人は確認していません)らしいので、お詫び&お祝いで1日2話投稿
これからも誤字報告の度にお詫びとして複数投稿することがあるかもわかりません
大量の誤字発覚に全くお恥ずかしい限りですが、これからも楽しんでいただければ幸いです
結構本気で穴に入りたくなりました




