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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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旅行へ出発

『えー、あー・・・マイクテス、マイクテス・・・オラ静かにしろお前ら』


スピーカーから流れる教師の声にざわついていた生徒たちが徐々に口をつぐみ声の主の方を向く


そこには静希達のクラス担任城島が立っている


マイク片手にけだるそうに声を出しているのがわかる


『これからバスに乗って成田空港に行く、全員お菓子の準備でもトランプの準備でもしておとなしくしていろ、それでは校長の話だ、聞くふりして静かにしてろ』


仮にもこの学校のトップに対して何という対応だろうと感心とともに呆れながら静希達は壇上に現れた校長に目を向ける


こうして姿を見るのは始業式以来だろうか


『えー・・・皆さんは今日から遠い地へと向かうことになります、向こうにはたくさんの文化、君達の知りえない物事や風習などがあることでしょう、君達はそれらを全てあますことなく体験してきて下さい、そしてできることならばこの喜吉学園の生徒としての誇りを持って節度ある行動を心がけてください』


偉い人の話は長いのが相場と決まっているが、この校長は妙に短い


だが静希は見逃さなかった、校長の懐から妙に分厚い紙の束が覗いているのを


どうやら城島もそれに気付いたようで、他の教師陣と連携してそそくさと校長からマイクを奪い取り注意事項を告げていく


一方マイクを奪われせっかく考えてきたであろう演説をし損ねた校長はしょんぼりしていた


専用の貸し切りバスに乗り込み静希達は成田空港に向かうことに


さすがにバスの中で旅行ムードということもあって周囲は活気に満ち、いたるところで笑い声が聞こえてくる


「さすがにこうしてみるといいものね旅行っていうのも・・・あ、静希私にも一つ頂戴」


「イギリスかぁ、どんなとこなのか想像できねえよ、あ静希俺にもくれ」


「お前ら俺の菓子ばっかり強奪していくんじゃねえよ・・・」


静希の持ってきた菓子を次々と口の中に放り込みながら陽太と鏡花は観光スポットのチェックに余念がない


ああだこうだああでもないこうでもないと意見を出し合いながら互いに睨みを利かせている


どうしてこういう時でも犬猿の仲だというのかがわからない


「静希君は楽しみじゃないの?」


「まさか、楽しみに決まってるだろ、ちょっと不安要素あるけど、そこはカバーするさ」


能力者である静希達は能力を完全に制御できるまでは腫れもの扱いだ、まともに旅行など行った例もなければ行こうとも思わなかった


国内で温泉などに行ったことはあれど、大規模、特に今回のような海外旅行などは本当に生まれて初めての経験、楽しみにしないわけがない


陽太もさんざん悪態ついていたが内心楽しみで仕方がないのだ


「向こうの言葉とかは多分明利に頼りっぱなしになると思うから、頼んだぞ」


「うん、頑張ってみる」


酔い止めの薬を飲みながら明利はガッツポーズでこたえる


なんとも頼もしいような頼りないような


「よぉ静希、俺らホテルの何階だっけ?」


「俺とお前は五階、明利と鏡花は七階だ」


今回の宿泊先は大きなホテル、結構いい評価を受けるホテルのようで何階か数えるのもおっくうになる程の高さだった


なんとも高層の建物で男子は三から五階、女子は六から八階に泊まることになっている


二人部屋の為静希と陽太は同じ、そして明利と鏡花が同じ部屋割になっている


「でも陽太よかったじゃない、これで憧れのナイスバディと一夜を過ごせるのよ?」


「あー・・・まぁ俺としてはあいつの世話しないでいいから楽になるけど、死なないようにな」


「なんだよそれ、別にちょっと揉みたいとかそういうこと考えてるだけだぞ」


「・・・それ十分にアウトだよ?」


明利にすら突っ込まれるようではもはやお終いだ


そもそもメフィが陽太のいうことを聞くかどうかも怪しい


静希とは対等契約を交わしているが陽太のお願いもきちんと聞き届けるのだろうか


仮にお願いした場合静希の鉄拳が陽太を襲うことになるだろうがそこは流しておこう


「あ、静希ちょっと茶貰っていいか?」


「なんだ、用意してなかったのか?」


うっかりしてたと陽太は苦笑するが仕方がないといいながらカバンの中から茶を取り出すとき、静希はにやりと笑う


「ほら、あんまり一気に飲むなよ?」


「わかってるって」


陽太は静希に釘を刺されたのにもかかわらず残っていた茶のほとんどを飲み干してしまう


「あんたねえ、もうちょっと遠慮ってもんを知りなさいよ」


「いやいや、マジのど乾いてたからさぁ」


「ったく、まぁこうなるってわかってたけどな」


「静希君、よかったら私のお茶飲む?」


「あぁ助かる」


そんな静希と明利のやり取りに微笑ましくもニヤニヤと眺める鏡花の頭を誰かが掴む


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