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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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GWの始まり

翌日、世間的にはゴールデンウィークの始まりとなる長期連休一日目


静希達は学校の校庭に集まっていた


海外への旅行ということもあって一年生は全員浮足立っており、校庭中から話声が聞こえる


無論浮足立っているのは静希達も同様だった


「とうとう来たぜ海外進出・・・パスポートもぬかりなしだ」


「なんだ、結局忘れなかったのね」


「昨日メールで確認させたからな、こんなところでもたつかれてたまるか」


「パスポートないと出国できないからね」


これ見よがしにパスポートを見せつける陽太にうんざりする鏡花をたしなめながら静希も自分の荷物の最終確認を行う


「よし、忘れ物もない、準備万端って感じだな」


「ほほう?万端ってことはスペードの切り札も準備できたのか?」


陽太の言い回しに静希は眉間にしわを寄せる


スペードの切り札


静希がメフィと戦った際に消費した硫化水素のことである


「ふざけんな、何で旅行にあんなもんが必要なんだよ、つか二週間程度しか経ってないのにあんなもん用意できるか」


「へえ、意外ね、案外ちょちょっと用意しちゃうものかと思ったけど」


「一応、あれ毒物だから、用意するのは時間かかるみたい」


事情を知らない鏡花に明利の解説が入る


さすがに長年静希を見てきた陽太と明利はそこら辺の事情を知っている


陽太は知っていながらこの話題を振ってきただけによけいに腹立たしかった


「水素や酸素ならカード一枚に大体遅くても一週間程度で用意できるけどな、あいにくと硫化水素の方は材料調達が難しいんだよ・・・また申請書と許可証からいろいろ取り揃えなくちゃいけないからな・・・」


ある種の毒物やそれに属する薬品などを購入する場合、それに際して学校側、そして委員会側に許可証を受け取る必要がある、そしてその許可証を受け取るにはまず適性審査を受け申請書を手に入れる必要がある


さらに言えば許可証を受け取ったところでその薬品を手に入れるためには専門店に足を運び、なおかつ危険物や薬品等の取り扱い免許がなくては購入できない


「そういえばあんたっていろいろ持ってるけど、ちゃんと免許持ってるの?危険物取扱とか」


「当たり前だ、どっかの誰か(雪奈)と違って俺が扱うべきものは全部持ってるよ、しばらくしたらバイクの免許も取るつもりだ」


能力者、特に収納系能力者はこの世界に在るありとあらゆる物質や道具を扱うことが多い


その場合取り扱いが厳しい物などに触れることも多々ある


時に爆発物や毒物、刀剣などの危険物を取り扱うことも少なくない


静希の場合は特に収納許容量が少ないため即効性がありそれでいて威力の高い物が必要となる


能力者はその素質と実力、知識があればどの年齢でも免許や取り扱い許可が取れるように工面されている


もっとも一定年齢を越えないととれないものもあるが、静希は危険物、薬品、銃や刀剣などの取り扱い免許を取得しているためそこは問題ない


だがやはり材料だけとはいえ有害物質を扱うために学校側や委員会側も慎重になるだろう


以前静希がこの材料をそろえるのには約二カ月ほどかかった


材料をそろえるだけでそれほどの時間がかかるのだ、次の校外実習にも間に合わないことはほぼ確実だろう


「ったく、どっかの誰か(メフィ)に使うんじゃなかったよ、結局無駄打ちだったし」


「ふふ、結局静希君、あの実習でほとんど気体系は使い切ったんだっけ?」


「あぁ・・・陽太の火力強化に水素爆発、毒として硫化水素・・・そろそろ別の攻撃手段考えないとな」


「これ以上何を増やすっていうのよ・・・ナイフにワイヤー、爆発に毒、スタンガンもどきまで入れてるくせにこれ以上何するつもりよ」


「その上やっかいな連中抱き込んでるしな、攻撃手段だけじゃなくていろいろ多彩になってきてるな」


「やめてくれ頭が痛くなってくる」


自分の置かれた状況を再確認したように静希は頭を抱える


客観的に見て静希の攻撃のパターン自体は確かに多い

先に鏡花が上げた通り物理攻撃にナイフ、味方である陽太の能力強化、火を起こすことで爆発を起こす小規模水素爆発、そして自分の肉体と体術からスタンバトンでの電撃、切札として硫化水素の毒殺


これだけの能力を見れば多彩と受け取れなくもないだろう


だが静希の能力は圧倒的に突破力に欠ける


陽太のように力ずくで物事を押しのけられるわけでもなければ鏡花のように地形ごと変える力があるわけでも明利のように仲間を癒して劣勢をひっくり返すこともできない


あくまで静希の行っているのは小手先の小細工


いざという時に連発できるようなとっておきが彼にはない


静希自身何かもう一つか二つ手札に欲しいところではあるがなんともままならないのである


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