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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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甘さと貢物

雪奈が去った後、彼女の持ってきたお供えの袋を開けると中にはシュークリームが三つ入っていた


一つは静希に一つはメフィに一つは邪薙にということらしい


だがここで一つ考えてほしい


静希は普通に食べるとして、メフィは静希の味覚と同調している状態でしか食事として味わえず、邪薙は基本的に味覚とは別の部分でものを味わっているため直接ものを食べているわけではない


残すのはもったいないので食べることになるのは結局静希だ


加速度的に甘い物の摂取量が増えている気がしてならない


「さあシズキ、せっかく貰ったのだ、さっそくご相伴預かろうではないか」


「・・・俺この一カ月でかなり太るかもな」


邪薙が来てからというもの家に常備される甘いもの


邪薙が責任もって消滅させるなり消費させるなりしてくれればよいのだが結局のところ静希が片付けることになるのが問題だ


太りやすい体質ではないのが救いだが、毎日こんな生活をしていれば太らない方がおかしい


メフィと違って邪薙は静希にとって利のある能力である分出費もかさむ


ノーリスクハイリターンとはいかないのが世の常である


貰ったシュークリームを神棚に供えて静希は水を一気に飲み干す


「いいわねシュークリーム、ねえシズキ、私の分で一個食べない?」


「もう甘い物はいいよ、一日一個で十分だ」


「ええー・・・神にお供えしておきながら悪魔に貢物がないってどういうことよ」


シュークリームを味わっている邪薙を見て自分も食べたくなったのかメフィがわがままを言いだす


他人の芝生は青いというやつだろうか、他の人が食べているのを見るとおいしく見えるのはいったいどういう原理なのだろうか


「お前さっきチーズケーキも味わっただろうが、残りのシュークリームは明日の朝飯にでもするよ」


朝から甘い物というのは静希的にはつらいのだが、コーヒーでも一緒に添えれば少しはましな朝食になるだろう


「チーズケーキは甘さ控えめ、でもシュークリームはしっかりとしながらまろやかな甘さじゃない、別腹よ別腹・・・あ、しかもこれ新作のやつじゃない?」


「・・・一つ思ったんだけどお前ってどこからそういう知識持ってくるんだよ、日本に来たのも久しぶりなんじゃないのかよ」


思えば久しぶりにこっちの世界に来て色々観光したいとか言ってた割にメフィはこの世界のことをやたらと熟知している


常識から知識まで、そして何より言葉をしっかりと話せている


メフィの話している言語が本当に日本語かどうかは怪しいが、少なくとも意思疎通はできている


「私は、というより私たちみたいな存在だけの存在はいろんなものに同調したりできるのが当たり前だからね、そうやっていろんな情報を引き出してるのよ」


「同調するだけで情報引き出せるのか?」


「そうよ?私の場合は記憶とかじゃなくて情報だけだけど」


けっこう便利なのよ?といいながらこれ以上のわがままは通らないとふんだのかメフィはソファに戻ってテレビを眺め出す


だがさすがに退屈なのか終始欠伸をしている


悪魔が眠るのかという疑問はさておいて、リアクションから鑑みるに退屈しているようだった


静希はコーヒーを入れてシュークリームを一つだけ皿に出す


「あら?甘い物は一日一個で十分なんじゃなかったの?」


「うるさいぞ、俺が食べたくなっただけだ、コーヒーがあれば食べられる」


「あぁんもう!シズキ愛してるわ!」


こうしてメフィに抱きつかれてもなにも嬉しくないと悪態をつきながらメフィに同調させてシュークリームを味わっていく


やはり甘い


コーヒーがあってようやく食べられるくらいだ


やはり甘い物は一日一個もあれば十分だなとシュークリームを食べ終わった後でしみじみ思う


なぜ女子や邪薙はこんなにも甘いものが好きなのだろうか


甘い物は別腹というが、これではさすがに胃がもたれる


「んん、幸せだわ、やっぱり甘い物は最高ね」


「よし、じゃあ今日の晩飯は純和風にするぞ」


「ええ、ハンバーグとかは?」


「一日何回わがまま通すつもりだ、こっちの身にもなれ」


「あら、女の子はわがままで作られてるのよ?」


「ふざけんな、わがままは一日一回まで」


「ふうん、一回は認めてくれるんだ」


ニヤニヤとこちらを眺めるメフィにデコピンしながら静希は夕食の準備を始める


もう慣れたものだ


この悪魔を悪魔と認識せずにただの同居人と認識し始めた静希はもはやメフィを完全に対等の存在として扱い始めていた


対等契約を結んだ契約者として正しい姿かは分からないが、静希はこの状況に確実に順応していた


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