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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」

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姉貴分の来訪

荷物の再確認を終えると邪薙が神棚から姿を現し玄関の方に注目する


「シズキ、来客だ」


「ん・・・」


邪薙の勧告から数秒後呼び鈴の音が聞こえ、来客を部屋中に知らせた


邪薙の能力は有り体に言えば防護結界


守護対象に特殊な結界を張ることでその結界内に侵入する存在を感知したり攻撃から身を守ることもできるらしい


「知り合いか?」


「うむ、ユキナだ」


「あぁ、雪姉か」


玄関を開けるとそこには報告通り雪奈がいた


邪薙の能力は有能ではあるがこれでは呼び鈴代わりでしかない


本人いわくもっと強い力も使えるが、昨今の平和な日本では使うことはほとんどないと言っていい


「やあ静、明日から旅行だろ?お土産のリストを作っておいたんだ、ぜひ私に買ってきて欲しかったりするん「すいません、押し売りの方はご遠慮願います」ごめんごめん!悪かったからとりあえず入れてよ!お供えも持ってきたからぁ!」


扉を閉めようとする静希と必死に中に入ろうとする雪奈がせめぎ合う間に邪薙が声を聞きつけてやってきたのか仲裁に入る


「まぁ待てシズキ、何やら美味そうな匂いもしている、ここはひとつ入れてやったらどうだ?」


「さすがわんちゃん神様!ほら!家の守り神様もこうおっしゃっておられる!私を入れるべきだよ静!」


邪薙のフォローをこれでもかと押しつけるが静希の眉間にはしわが残りっぱなしである


「邪薙、お前お供え味わいたいだけだろ」


「無論だ、それに供える者がいればいるだけ私の力は増すのだ、困ることはあるまい?」


仮に雪奈を入れても静希がつかれるだけ、特に問題はないのだと言い張る


確かに静希の家に入れたところで何の問題もない、多少家がうるさくなるだけだ


「な、なあ静、そろそろ痛いからドアではさむのは」


「でもな邪薙、俺はたまには静かに過ごしたいんだ、メフィもテレビに夢中、お前もお供えがあってご満悦、有意義な放課後を騒音発生機のような姉貴分に破壊されちゃあたまんないぜ?」


「痛い痛い痛い!静痛いよ!お願い悪かったから冗談が過ぎたから!お願いだから入れてよ!」


わざと会話を続けて雪奈に嫌がらせしようかとも思ったがさすがにやり過ぎかとドアを開けると若干涙眼の雪奈がコンビニの袋を持って入ってくる


「うぅ・・・痛かった・・・はいお供え」


「はいよ、それはともかく何しに来たんだよ、まさかお土産の為だけじゃないだろうな?」


「そんなわけないじゃんか、こっちはこっちで色々あるんだよ」


雪奈は部屋の中に入っていき中にいるメフィに挨拶して静希の部屋に直行する


勝手知ったる静希の家と言わんばかりに部屋を物色する


「なに?また実習で使うのか?」


「あぁ、そっちは旅行だろうけど、こっちは実習でね、久しぶりに二年のチームでの行動だ」


二年生は通常自分の実習を行うだけだが、成績上位半分の生徒が一年生の指導に当たる


二年生の行う実習は一年生のころに比べ減るがその分難易度の高いものが多いと聞く


そのため二年生の半分は実習だらけになり、逆に半分は実習が極端に減るのである


「雪姉たちが俺達の指導につくのっていつまで?」


「んと、一学期までって聞いてるよ、二学期からは静達だけ、頑張りなさい」


「はいはい、とはいえ前衛が一人になるのはきついな」


今までは二年生を含む前衛二人、後衛二人、索敵二人という理想的な班で行動できたが二学期からは前衛一人後衛二人索敵一人で行動することになる


索敵は一人でも問題はないが前衛が一人だと多少問題がある


「静たちなら大丈夫だよ、何せ私が育てたんだから」


「なんか癪に障るけど、まそういうことにしておくよ」


昔からよく静希、陽太、明利の三人と遊んでいた雪奈にとって彼らは自分の兄弟同然、能力的にも身体的にもそして性格的にも強い信頼を持っていることがうかがえた


「そいじゃこのナイフ借りてくね」


雪奈の手の中には合計十二本のナイフがおさまっている


大小様々、投擲用から近接格闘用までよりどりみどりだ


「そんなに持ってくのか?一度に装備できんのかよ」


「ふふん、ちょっといい買い物をしたからね、問題ないって」


ナイフでジャグリングしながら雪奈は陽気に静希の部屋から退出する


玄関に出る前に雪奈は脚を止めて静希の方へ振り返る


「静、気をつけて行ってらっしゃい、向こうでは水とかいろいろ注意しなくちゃだめだよ」


それはちょっとした親心からだろうか、頭を撫でながらそんなことを言うが、静希より背の低い雪奈が頭をなでると奇妙な絵になる


「わかってるよ、雪姉に言われるまでもない」


「はっはっは、それもそうだね、それじゃあね、お土産よろしく」


雪奈はそういって部屋から出ていく


相変わらず何というか、突然やってきて颯爽と帰って行く人だと感心すら覚える


去り際の小さな心配が静希にとっては煩わしくもあり、少しだけ嬉しくもあった


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