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J/53  作者: 池金啓太
四話「異国の置き去りの時間」
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旅行の事前準備

「そもそも観光する場所なんてあるのか?専門学校に行くんだろ?」


今回の旅行の目的はあくまで海外にある専門学校との交流


自由時間も設けてあるのだが実際どうなるかは怪しいものだ、予定表全部無視してイベントをやることになる可能性だって十分にある


「えと、エディンバラの観光名所っていうと、お城とかあるわよ」


「城かぁ、いまどき城が残ってるのか」


日本も多くの城を残してはいるものの、そのほとんどは修繕や再現したものである


老朽化、災害による倒壊、火事や戦火によって消えて行った城も多々ある


こうして残っていることが奇跡といえるほどに、かつての栄光を残す城という存在は貴重なのだ


「日本と違ってほとんど石材で作られているからね、構造自体は丸々残ってるみたい、ある程度修繕されて一般公開もされてるわよ」


「城なんて見てもなぁ、他になんかないのか?ツアーとかさ」


陽太としては城にはあまり興味はないらしい


というより人が残した栄華の残影に興味がないといった方が正しいだろう、もっぱら歴史関係が嫌いな人間にありがちである


「ほかにっていってもね、街自体が世界遺産に登録されてるみたいだし見て損することはないだろうけど」


「街見て他に何もしないでボケっとしてろってか?そういうんじゃなくてさ、こうなんつうの?驚きとかそういうのが欲しいのだよ」


「お前って圧倒的に旅行とか向かない性格してるよな」


その土地にある特有の街並み、しかも世界有数とも言えるだろう規模で存在する遺産とも言うべき街並みを見れるというのにこの反応


「陽太君、実際に見てみると感動するかもしれないよ?」


「そりゃ感動はするだろうさ、でもそれは『おぉぉ・・・』って感じだろ?俺がほしいのは『おぉ!』なんだよ」


陽太のまったく理屈の通らない説明を要約すると、威厳や風格から起こる感動がほしいのではなく、意表を突かれたドッキリのような新鮮な驚きが欲しいということなのだろう


「えと・・・静希こいつ一発殴っていいかしら、もう少しまともになるかもしれないわ」


「無駄だよ、殴ったってただでさえ少ないネジが一、二本吹っ飛ぶだけだ、余計に性質が悪くなるだけだっての」


「お前ら俺をなんだと思ってんだよ・・・」


こういう場面において陽太に対しての静希の評価は辛辣を極める


もはや一昔前のテレビのような扱いだ、人扱いさえされていないのではないかと思う程に毒を直接たたき込んでいる


「んん・・・あ、陽太君、だったらこれはどう?」


鏡花の携帯とにらめっこしていた明利が一つ陽太の興味を引きそうなツアーを指さす


それはクルージングのツアー広告だった


内容はエディンバラに流れる川から海へと出て洞窟や沖合に出ての生き物とのふれあいだとのこと


広告サイトには動画や写真などもアップロードされており、見てみると川の上流へ向かう写真や近海に出るのだろうかイルカと戯れる男女の姿が映っている


「おぉぉ!これだよこういうのだよ俺が求めてたのは、こういう実体験を含むやつじゃないとな」


「静希、要約すると陽太はどんなのが好みなわけ?」


「つまり昔話や歴史のお勉強じゃなくて遊びたいってことだろ」


なるほどねと鏡花はため息をつきながら帰宅の準備を進める


さすがにこれ以上陽太に振り回されるのは御免なのか、配布された旅行の資料に目を通しながらすぐにカバンの中に教科書などをしまい終える


「明日は忘れ物しないようにね、特に陽太、パスポートと生徒手帳忘れないように、出国できなくなるわよ」


「おいおい、いくら俺でもその二つは忘れねえって、むしろ忘れる奴なんているのか?」


「それもそうね、でも一応気をつけなさい?」


今フラグが立ったなと静希は万が一のことを考え始めながら鏡花と同じく帰宅の準備を進める


「皆旅行の準備はできてるのか?特に陽太」


「できてるよ、てかなんでお前らは重点的に俺を責めるかな」


「私もできてるよ、カップ麺は持っていかないけど・・・」


「確認の必要もないわ、数日前には終わらせたもの」


こうしてみるとこの班の陽太の信頼のなさは定評があるなと感じながら静希は悩んでいた


「ひょっとして、あんたまだ終わってないの?」


「いや、荷造り自体は終わってるんだが・・・あいつらがな」


その言葉に全員が『あぁなるほど』といった顔をする


静希がただの学生で、ただの能力者であればこんな悩みはなかっただろう


いや、その言い方は語弊があるかもしれない


静希自体はただの能力者なのだ、ただ運に恵まれず、悪魔と神格の契約者であり監督役になってしまっているだけ


「でも実際どうするのよ、連れてくの?」


「連れてかない選択肢があるとは思えないんだよなぁ・・・帰ってきたら街がなくなってたなんてことになったら・・・」


守り神たる邪薙はともかく、純真なる悪魔メフィストフェレスは八つ当たりなら何でもしそうだ


自分が旅行に連れて行ってもらえないことを知れば何をするか分からない


かといって海外に悪魔を連れていくのにも、というより長期学校行事に悪魔を連れていくこと自体に抵抗がある


何せこの悪魔はいざとなれば静希を瞬殺して街ごと滅ぼせるだけの力を持っているのだから


この連投には意味がある


できる限りこの四話の冒頭を早めに終わらせたいだけなんです


決して今日暇だからというわけではありません


えぇ、そんな訳ありませんとも

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