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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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今更の忠告

「五十嵐、響達はどうした?」


「あいつらとは別行動中です、それよりこの人たちは?どうせ呼んだの先生でしょ?」


「あぁ、私の同期と後輩達だ」


「ってことは先生は元特殊部隊の所属ってことですか」


「よくわかったな、大正解だ」


まともな人ではないとは思っていたが、まさか普通の軍部所属ではなく特殊部隊所属とは


道理でやたらと好戦的な上に目が鋭すぎるわけだと静希は呆れかえる


「隊長!学生三名保護しました!」


「うむ・・・ってその銃どうした!?何があった!?」


静希達に遅れて隊員に引率されて陽太達も合流してきた


だがその隊員の持つ銃は大きく変形していてもう使い物になりそうにない


「あの、すいません、反射的にやっちゃいました」


頭を下げながら申し訳なさそうにしているのは陽太だ


どうやら静希と同じように突然銃口を向けられ、反射的に能力を使用して銃を破壊してしまったのだろう


雪奈といい陽太といい、前衛型の能力者はだてではないようだ


「まったく、たるんでいるぞ!学生に武器を破壊されるなど!」


「申し訳ありません!」


こういう部分はまさに軍隊だが、その原因を作ったのが自分の班員であることを考えると静希はなんだか申し訳なくなってくる


「おい静希、この軍人さん達はいったい何者だよ、危うく集会所が火事になるとこだったぞ」


「まったくよ!消すの大変だったんだから」


ということは引火はしたんだなと戦々恐々としながら静希はため息をつく


「えと、この人たちは先生が呼んだ特殊部隊の人で、先生の知り合いらしい」


「なるほど、先生の言っていた『対応』というやつか」


熊田の言葉に静希が頷くとようやく城島が静希達を連れて部隊の人たちにむけて声をあげる


「お前達、こいつらが私の教え子だ、まだまだ甘いところはあるが骨はある連中だ、よくしてやってくれ」


城島の号令にイエスマム!と全員が敬礼を持って答える


今は教員をやっているはずなのにこの統率力、どちらかというとこっちの方があっていたのではないかと思えるほどしっくりきている


「全員装備確認の後、村に突入、長とその側近を捕縛した後、調査に移る」


「神格の探索と捕縛はもう終わってる、お前達は荒探しだけ頼むぞ」


隊長鳥海と城島の言葉に再度敬礼で答える隊員達


静希達とは圧倒的に違う統率力、これが軍隊というものなのだろう


「で?城島、神格の捕縛が既に済んでいるとは聞いていないのだが?」


「それはさしたる問題じゃないだろ、連中は意図的に神格を召喚した、それは疑いようがない」


「何か証拠でもあるのか?」


「私の勘だ」


城島の言葉に呆れかえっている鳥海を見て静希は内心同情する


何か自分と近い匂いを感じ取った静希はトランプの中からデジカメを取り出して中身を確認する


「先生、報告遅れましたが神格が召喚されたらしき場所に残されていた召喚陣の写真です、これが証拠になるんじゃないですか?」


「おぉ五十嵐、優秀な我が生徒よ、お前ならやってくれると信じていたぞ」


「都合いいこと言ってないで、鳥海さんもどうぞ」


二人に見えるようにカメラの画面を見せると、そこには淡く光る召喚陣がしっかりと撮影されていた


ちゃんとメフィが仕事してくれてよかったと安心する半面、ここで仕事をしっかりとこなしていなければ契約反故にできたのにと残念に思った


「ふむ、専門家に回せばこれが証拠になるだろうな、にしてもエルフたちがよくここに入れてくれたな」


「いえ、立ち入り禁止でしたが無理矢理撮影しました」


その言葉に城島は口を押さえて笑いだし、数秒遅れて鳥海も大きく口を開けて笑いだす


「なるほど、君は確かに城島の教え子だな、だがこいつにつられてあまり無茶はしないようにな?」


「その言葉は言うのが一週間ほど遅かったですね無茶どころか無謀なことやっちゃいましたから」


「そうかそうか、はっはっはっは」


「はははははは」


鳥海はちょっとした冗談のつもりで話しているだろう


だが静希からすれば冗談などではない


初の実戦である校外実習でただの能力を持った動物かと思えば奇形種、そんな予想をしていたら正体は実は暴走状態のエルフの少女で、その暴走を引き起こしていた悪魔と戦うことになってその悪魔と契約してしまってエルフのもめ事に半ば強制的に巻き込まれて今に至るだなんて


きっと話しても信じてもらえないだろう、静希も他人からそんな話を聞かされても信じない


我ながら濃い一週間だなと思いながら静希は壊れたラジカセのように笑い声をあげている


その声が妙に虚しく、切ないものであるのを班員は感じ取っていた


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