確かな痕跡
「にしてもこのガラクタ、一体何なんだ?」
あちこちの棚に放置してあるガラクタという以外の表現が見当たらない謎の物体たちは反論もなくその場に在り続けている
奇妙な生き物の形をしたオブジェやら、人と獣の中間の姿をした人形やら、中には砕けた壺などまで置いてある始末
もし誰かがここを掃除したのであれば最初にこのガラクタを何とかするべきではなかったのだろうかと思えるほどに視覚的な騒音を出している
「これは・・・埃やゴミがないだけましだけど」
「俺でもこんなに散らかさないぞ、捨てられない体質ってやつか」
「でもこれって何の役に立つのかな」
探索班三人ともさすがに呆れてしまっている
これはエルフが過去使用していたものだろうか
祭具なのかただのがらくたなのか、かぼちゃっぽいもので作られたジャックランタンまで放置してある
この道具に何か意味があるのだろうか
窓の向こうは森、すぐ下には地面がある
「お、いいね・・・静このまま進むぞ」
「え?進むって・・・」
窓から外に飛び出した雪奈を追って静希と明利も窓から外へと移動する
雪奈はまるで犬のように四つん這いになってあたりの地面を探索している
「雪姉・・・なにやってんの?」
「ワンちゃんの真似ですか?」
「違うよ!足跡見つけたから追跡しようとしてるの!そんな冷たい目で見ないでよ!」
二人の呆れた視線が突き刺さってつらかったのか雪奈は必死に弁解する
静希もその言葉を信じて自分たち以外の足跡を探してみる
なるほど確かに窓から一mほど離れた地点に足跡がある
静希達同様窓から着地した時についたのだろう、大きさは静希とほぼ同じくらい
大人の足跡のようだが、そこから先の足跡はあまり残っていない
「明利、同調で探せないか?」
「やってみるね」
明利は近くの木や草にマーキングを施した後に同調し近くを探知する
さすがに足跡のような土の細部となると探索は難しい
それなりの技術や経験がなくては見つけられないような特徴や痕跡をたどらなくてはならない
ふと、明利が何かを見つけたようで近くの茂みに向かう
「静希君、雪奈さん、これ」
明利が手に取った枝を二人で注視するとそこには数本葉を落とした枝や折れてしまっている枝がある
さらに探索を続けるとその折れた枝の痕跡は一直線上に続いているのがわかる
単に葉が落ちているだけなら何の不思議もないが、枝が折れているとなればそれは異常の証だ
山に出る動物がこんな人里の近くまで出るとは考えにくいし、しかもわざわざ茂みに突っ込んで移動し続けるとは思えない
「静、この先には何があるんだ?」
「特に何もないはずだけどな、村の外周伝いに行くなら北の入り口に出るくらいか・・・」
「一応たどってみる?」
他にやることもないしなと頭を掻きながら静希達は追跡を続行する
そしてその結果、予想通りに村の北の入り口にたどり着く
痕跡は森の方には伸びておらず、村のどこかに入っているようだが足跡などはすでに消えておりこれ以上の追跡ができるとは思えなかった
「静、どう思う?」
「誰かがあそこにいたのは確かだろうな、でも入口からあの部屋までは足跡やらはなかった、あの窓から出入りしてたと考えるのが普通だろ」
「でもどうしてあんな場所に?」
「さあな、そこまでは分かんないけど埃がまったく積もってなかったってことはここ数日あの場で掃除したってことだろ?悪魔や神格が召喚されたこのタイミングにわざわざあんな場所にいた奴、無関係と言えるか?」
「私ならとっ捕まえて情報源にするね」
俺も同じだよと来た道を戻り先ほどの窓の前へと戻ってくる
靴についた土を落として再度埃一つないがらくた部屋の中に侵入すると静希達はこの場所の探索を始めた
ガラクタと一言で表してもたくさんのものがあることは確かだ
これらがなにを表しているかは不明、ひょっとしたらエルフの道楽で集められたものかもしれない
だがここに手掛かりがあるかもしれないというのも確かだ
確率的には低いだろう
捜索されるとわかっている以上、そこに証拠を残しておく馬鹿はいない
あたりをくまなく探していると明利が何かを見つけたらしく、ガラクタの詰まっている棚の下の方に手を伸ばしている
「どうした明利?」
「どったの?なんか見っけた?」
「ま、まって・・・もうちょっと・・・!」
必死に手を伸ばし、何かを手にとってそれを二人に見せる




