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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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演技の時間

『シズキ、任務完了よ』


トランプの中で悠々とくつろぐ姿が容易に想像できるメフィの声に静希は苦笑する


『お疲れ様、どうだった?』


『うん、かなりの枚数撮っておいたわ、精霊を呼び出す物とは決定的に違う陣ね』


予想はしていたがやはりかと静希は眉をひそめる


だが同時に妙な感覚に襲われる


何かを見落としているような、言い知れぬ不安感


「静希、とりあえず写真撮っちゃおうぜ」


「あ、あぁ・・・そうだな」


さっそく回収したばかりのデジカメを取り出し、精霊召喚の陣を撮影する


何枚か撮影し、階段を上り始めた瞬間、轟音とともに地面が大きく揺れる


一瞬天然の地震かとも思ったが、違う


揺れたのは一瞬、初期微動も主要動もない、たった一回大きく揺れただけ


まるで大爆発でも起きたかのような衝撃音だった


邪薙と取り決めた合図だと静希は直感する


「皆、無事か?」


「なんだ今の・・・びっくりした」


「何かあったのかしら・・・って明利大丈夫?」


「こ、腰が抜けちゃった・・・」


「明ちゃん・・・びっくりしすぎだよ」


「さすがに階段を上っている時に地震が来ると驚くな・・・」


五人が驚いている中、静希は邪薙の近く、スペードの3のトランプに邪薙を回収し、手元に引き寄せる


『今のは合図でよかったのか?』


『あぁ、もうあの愚か者の方便につきあうのも我慢の限界だったのでな』


トランプの中の邪薙は冷静さを取り戻しており、すでに思考もクリアになっているようだった


『とりあえずお疲れ様、後は俺達の仕事だ』


『そうしてくれると助かる、私はもう彼奴の相手はしたくない』


老人の相手には慣れているつもりだったがなと付け加えて邪薙は苦笑していた


神様となれば多くの人々の信仰を受けていただろう


同じように多くの人々を見てきたはずだ


その神様にここまでいわせるとは、エルフの長恐るべしと言っておくべきだろうか


だがそんなことを考える前に静希にはやることが山ほどある


「お前らは先生を見つけて指示を仰いでくれ、俺は長のところに行く」


「へ?おい静希!?」


陽太の声を無視して静希は携帯から城島を呼び出す


『もしもし、城島だ』


何回かのコール音の後、けだるそうな城島の声が耳に届く


心なしかその声は喜んでいるようにも聞こえた


「長のところで何かあったようです、今から向かいます」


『ほう、それは何があったかわかるか?』


「彼らは神格の拘束を破るような何かをしたようですね」


心にもないことを言うが、城島の言うとおりまだ監視の目が光っているのであれば滅多なことを言うわけにはいかない、暗喩でなんとか意味を伝えなくては今までの苦労が水泡に帰すことになる


『それは大変だ、神格がもし村で暴走するようなことがあれば災害規模の大事件になる、すぐにでも対抗策を使うとしよう』


まるで用意していたような文章だ、しかもかなり棒読み


どうやら城島はこの事態への対策をすでに用意してあるらしい


「お願いします、では」


城島の言う対抗策がなにかは分からないがとりあえず今は長の家に向かうのが先決だ


『ここからは演技のお時間?』


『あんまりお芝居は得意じゃないんだけどな』


邪薙がどのように長の家の地下から抜け出してきたのかは知らない、知らない方がやりやすい


真直ぐに長の家に向かうと何人かのエルフが長の家の周りを取り囲んでいる、その合間を縫って静希は中に侵入する


客間と長の寝室を通り越して地下への階段へ向かうと、そこには長がいた


肩で息をしており、相当あわてているのが見て取れる


「長!何があったんですか!?」


「あ・・・貴様・・・!貴様のせいで・・・!」


長の態度に静希はあわてて地下へと向かう


地下は酷い惨状だった


床も壁も強い衝撃により崩れかけ、すでに人が入れるような空間ではなくなっていた


それを確認してすぐに静希は階段を駆け上がる


「神格に接触したんですか!?」


静希は怒りを込めて長に掴みかかる


これが演技だということは長にはばれなかったようだ


相当に動揺しているらしく、静希と目を合わせようともしない


「・・・っ!貴様がもっと強い拘束をしていれば・・・」


「万が一があるから接触しないようにとあれほど釘を刺したではないですか!?何を考えているんですか!」


静希の言葉に長は何も言えずにうつむいてしまう


そこに他のエルフが何人も様子を見にやってきた


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