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J/53  作者: 池金啓太
番外編「現に残る願いの欠片」

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Julia・Corrinth

静希達が今回の作戦の司令部のある街にたどり着いたのはその日の夜の事だった。途中部隊の人間から連絡が入り、残り一つの核兵器を確保したという、事実上の状況終了の通達があった。


静希の睨んでいた通り、ユーリアの母親のいた場所の地下に保管されていた。


物理的に出入り口を排除し、能力でしか移動していなかったという事から発見が遅れたが、協力していた能力者を捕縛し無事に確保することができたのだという。


後はユーリアの今後を話せばいいだけとなった。


静希を先頭に司令部の奥へと移動していくと、周囲にいる軍人が静希の姿を見てすぐに道を譲ってくれていた。


中には尊敬や畏怖のまなざしを向けるものも、さらには敬礼さえする者もいた。


静希がどれだけ実力を持ち、なおかつそれが広く認められているのだという事が十分に理解できた。


司令室の扉を開くと、その中にいた人間は全員開いた扉の方に注視していた。


いくつもの勲章を胸に下げた軍人、白髪交じりのものや全て白髪になっているような老人のようなものまでその場にいた。


今回の事態がどれだけ大ごとになっているのかというのがよくわかる面々と言えばいいだろうか。


「ミスターイガラシ・・・ご苦労だった。よもや少女の護衛だけではなく核兵器の所在まで明らかにするとは思っていなかったよ。」


「後者に関してはこっちも予想外に事が上手く運んだ。それに関しては半分偶然みたいなものだ。手柄は見つけた部隊にやってくれ。」


「・・・君がそう言うという事は・・・何か裏がありそうだね。」


静希と相対しているこの場の総指揮官である軍人は苦笑しながらも全く油断していないという事がユーリアにもわかった。


ただ話しているだけなのにピリピリと空気が張りつめているのがわかる。その場にいる全員がそれを感じていた。


喧嘩を通り越して殺し合いでもするのではないかというほどの威圧感を両者から感じる中で、軍人は小さく息をついて手をあげる。


「わかった。望みは何だ?できる事ならそれなりに穏便に済ませたい。」


「今回の護衛対象の将来に関しての決定権を俺にくれ。」


その言葉に全員が眉をひそめた。


今回の護衛対象、つまりは今回の事件の鍵ともなったユーリアの事である。


複製の能力、はっきり言ってその能力が手に入ればかなり強力な武器になる。その決定権を自分によこせという事がどういう意味を持っているか、その場にいる全員が理解していた。


「それはつまり、君の妻にでもするという事かい?君は確か妻帯者では?」


「とっくに結婚してるしこんな子供にそんな感情向けるか。それに俺が引き取るとはだれも言ってない。あくまで決定権を俺によこせと言っただけだ。」


そう言って静希は自分のやや後ろにいたユーリアを前に立たせる。それがどういう意味を持っているのかアイナとレイシャも、ユーリア自身も分かっていた。


「こいつの将来の事だ、こいつに決めさせる。こいつが選べる全ての選択肢をこの場で提示してくれ。そしてこいつにその中から選ばせる。」


「・・・すべて・・・?」


「すべてだ。もし可能性がないのなら俺からその可能性を提示しても構わないぞ。できるかどうかはさておいてな。」


最初から彼らが有利な条件を突きつけることはわかっている。だからこそ静希はそれを牽制するつもりでこの発言をした。


有利不利を考えずに全ての可能性を提示し、その中からユーリアに選ばせることが重要だ。今後生きていくのは彼女自身なのだから、彼女が考えて選ばなければならない。


そしてその提案にその場にいた軍人はこれ幸いと笑っていた。


子供を説き伏せるのなんて簡単だ。なにせ彼女はロシアの人間。自分の国に引き寄せることくらい容易だと思っているのだろう。


静希も何もロシアから引きはがしたいわけではない。ただ彼女が納得できるだけの答えを出させてやりたかっただけだ。


そう言う意味では甘くなったと言えるだろう。


「わかった、君がそれでいいというのなら快く受け入れよう。ではまず・・・初めましてユーリア・コリント。君の今後について、ある程度提案をさせてもらう。しっかりと聞いてくれ。」


「・・・はい・・・」


ユーリアは静希の服の裾を掴みながら彼の話を聞いていた。


今後というのは、これからユーリアがどのような道を進むかという事だ。


無論もはや無能力者には戻れない。能力者としての教育や義務を受けなければならないだろう。


その上で平穏な生活を送るために必要なのは後ろ盾。何かしらの組織の庇護下に入らなければならない。


ここまではユーリアも理解していた。そして彼らが提示してくるのもおおよそ同じようなものだった。


軍の庇護下に入り、軍学校や能力者の専門学校に通いながら生活する。もっとも単純な提案だった。


その中には国外、つまりは今回の作戦で協力してくれた国のものも含まれた。ロシアにこだわらないのであれば、それも十分選択肢に含まれる。


そしてそれを聞いていた静希は特に何も言わなかった。彼らが提示しているのは本当にすべての可能性だった。それこそロシアの敵に回るという選択肢まで用意していたのだ。


全ての選択肢を用意してくれていたのであれば、自分が言うことはない。ユーリアに全ての選択を任せる。そう言うつもりだったのだろう。



「・・・以上が、今君が選ぶことができる選択肢だ。この中から、あるいは君が考えていることなども踏まえて選んでくれるとありがたい。」


全ての可能性の提示が終わったうえで、ユーリアは静希の方を向いた。


静希は何も言わなかった。彼らが提示したのが静希の考えうるすべての内容であるという事を理解していたからでもある。


そして何より、これ以上自分が言うことはないと小さくうなずいてみせた。


後はお前が決めることだと、そう言っているようだった。今までそうだったように、今も静希は自分に決めさせてくれる。


ただの子供に過ぎない自分に、選択肢を与えてくれる。嬉しい反面迷惑でもあった。こういう時は無理にでも引っ張ってくれた方が安心できるというのに。


子供に対して甘くなったと言っていたが、まだまだ十分厳しい。その厳しさは優しさでもあるのだろうが、子供にとっては理解できない優しさなのだ。


だがそれでも静希が与えてくれたチャンスだ。ものにしない手はない。


「もう一つ、選択肢があります。」


「・・・ほう?聞かせてくれないかな?」


自分を見ている大人たちの目をユーリアは見ていた。自分をただの能力を使える子供としか見ていない目だ。


その能力にしか目がいっていない。自分自身を見てくれない、能力だけを評価している瞳だった。


ユーリアはもう一度静希の方を見る。自分をまっすぐと見ている大人の目。ひいき目なしに自分を見て評価してくれる目。


自分を見てくれる、能力だけではない自分自身を。


「シズキ、いえ・・・シズキ・イガラシ、私をあなたの弟子にしてください。」


その瞬間、その場にいた全員が吹き出し、驚愕の表情を作った。


それは軍人だけではなく、アイナやレイシャ、さらにはそれを言われた静希さえも驚いてしまっていた。


「はぁ!?おま・・・お前何言ってんだ!?」


「シズキ言ってたじゃない!自分には軍も国もそうそう手は出せないって!自分の身内もそうだって!だから貴方の身内になる!貴方の養子にはなりたくないけど弟子になれば身内同然でしょ!」


その場にいた全員が放心し彼女の言葉を聞く中、静希は僅かに体をふるわせた後笑い始めてしまっていた。


「・・・くははははは・・・お前・・・いつからそれを考えてた・・・?」


「・・・ここに来るまでの車で・・・どうしたら平穏に暮らせるかってずっと悩んでたから、頑張って考えた。間違ってないでしょ?」


その答えに静希は笑いを止められなくなってしまっていた。腹を抱えて笑うという言葉の通り、腹筋の痙攣を抑えられないのか本気で笑ってしまっていた。


そして静希が笑う中、他の軍人は全く笑えなかった。五十嵐静希という人物の危険性を十分に理解していたからである。


もし彼の下に彼女が渡ったらどうなるか。彼の脅威は兵器などの現代の力で推し量れるものではないし、何より複製の能力が彼の下に渡ったところで何が起こるというわけでもないかもしれない。


だが彼に彼女を渡すのは危険だと、そう考えていた。


「ま、待ちたまえ。ミスターイガラシは日本に住んでいるんだぞ?君が彼の弟子になるという事は、日本で暮らさなければいけないという事で。」


「わかってます。どっちにしろロシアではもう暮らせない。これだけ広い国じゃ本当に軍の基地にでも住まないと安心して暮らせないもの・・・」


ユーリアはそれら全てを考えたうえでこの答えを出していた。日本に住んだらどうなるか、祖父母はどうなるか。それら全て考えたうえでその答えを出していた。


今静希とこうして普通に話せているのだ、何かしら手があるだろう。何より自分は静希に多くを教わったのだ。


何もできない少女から、少しずつ能力者として成長しているのだ。静希から力の扱い方を学び、考え続けることを学び、静希から選択肢を授かった。


何とかできないはずはないのだ。今までだって、この短期間の間にこれだけ変えられたのだから。


「・・・アイナ・・・レイシャ・・・聞いたか?こいついつの間にかこんなことを考えるまでになってたんだな・・・!こんなに笑ったのはいつ以来だ・・・!?」


アイナとレイシャに話しかけながらも静希は笑いを止めていない。このタイミングで、まさか自分がユーリアに選択権を譲渡することさえも読んでいたのだろうか。


この十二歳の少女に考えを読まれ、なおかつ自分が考えもしなかった可能性を提示してみせた。今までただの無能力者として暮らしていた、ただ能力が使えるだけだった幼い少女がだ。


しかも今回の件に関わった人間の中でも、トップクラスの権力を持った人間が集結しているこの場でそれを言い出す。まさか本当にここまで予想済みだったのかと静希は笑いを止められなかった。


勿論ユーリアだって全てを予想していた訳ではない。司令部に行くなら偉い人もいるだろうなくらいにしか考えていなかった。読めたのは静希が最後は自分に決めさせてくれるという事だけだ。


だがそれでも、ユーリアは静希の予想を大きく覆して見せた。だからこそ静希はユーリアの肩に手を置いた。


「いいだろう。ユーリア・コリント、今日からお前を俺の弟子にしてやる。俺の知恵、知識、技術、全てお前に叩き込んでやる。」


その笑みは、今まで何度か見たことがあるものだった。悪いことを考えていそうな邪な笑みだった。


「ま、待ちたまえ。ミスターイガラシ!正気か!?そんな幼い少女を君が弟子にするだと!?」


「そうだ!子供にはしっかりとした教育が必要だ!まして君のような危険人物にそんなものを託すわけには・・・!」


周りの軍人たちが異を唱える中、その中心にいる白髪の男性だけは動かなかった。真っ直ぐに静希とユーリアだけに視線を向けている中、静希はその言葉を受けて薄く笑って見せた。


「俺はこいつを弟子にすると言った。そして決定権は俺にある。違うか?」


口約束とはいえ、すでにそれは了承されたことだ。静希のいう事は正しい。だが彼らが言っていることもまた正しいのだ。


静希は危険人物。そんな人間に少女が弟子入りするなど正気の沙汰ではない。成人する前に潰されてしまうのではないかと思えるほどである。


「一度決定したことを覆すか?俺はもうこいつを弟子にした。それとも小娘一人のために俺を敵に回すか?」


静希が全力で威圧するとその場にいた全員が動けなくなってしまっていた。


五十嵐静希、世界を二度救った『悪魔の契約者』


その気になれば国を、いやそれどころか世界を滅ぼすことさえできる力を持つと言われている男。


せっかく今まで友好的な関係を築いてこれたというのに、特殊な能力とはいえただ一人の娘を取り合って敵対するなど、明らかに採算が合わない。


「我々は決定を覆すことはない。その少女の将来の決定権は君にあり、なおかつ彼女は君の弟子になることを望んだ。我々が口出しをするような事ではないだろう。」


「さすが話が早い・・・依頼料はしっかり振り込んでおけよ?俺はこのまま日本に帰る。後始末は任せていいな?」


「・・・任せたまえ・・・今回の協力に感謝する。」


そりゃどうもと言いながら、静希は三人を引き連れてさっさと退室していた。


その笑みを最後まで崩すことなく、静希は歩き続けている。


そしてその背を追うように弟子となったユーリアと、彼の補助をしていたアイナとレイシャが続く。


「ミスコリント、まさかあのような手段を取るとは思いませんでした。」


「まったく末恐ろしい方です・・・よもやミスターイガラシの弟子になろうとは・・・」


「えと・・・あはは・・・うまくいってよかったよ・・・」


三人がそう話している中、静希は小さくため息をついていた。


なにせ彼にとっては面倒が増えたことに他ならないのだから。


「とっとと帰るぞ。その前にお前は日本に住む手続、それとお前の祖父母にも事情を説明して日本に住んでもらわないとな。」


「あ・・・うん・・・そうだね・・・」


ユーリアはロシアから外の国に行ったことがない。それこそ一度も。


そんな中で海外で暮らすことへの不安がないと言えばウソになるだろう。


だが静希と一緒だから大丈夫という考えがその中にはあった。


「ねぇシズキ、シズキは私以外に弟子をとったことってあるの?」


「・・・いやない。お前が最初の弟子だ。」


最初の弟子、つまりは一番弟子だ。その言葉に少しだけ嬉しくなってしまっていた。


自分が静希にとって初めてなのだと。


何のことはないただの自己満足だがその嬉しさはそのすぐ後の言葉によって打ち消されることになる。


「だから加減とかはよくわからないから、厳しくいくぞ。今までみたいな加減は一切ないと思え。」


「・・・えと・・・身内びいきとかは・・・?」


「俺は身内にはむしろ厳しくするタイプだ。覚悟しておけ、お前が思ってるような平穏な生活は送れないからな。」


ユーリアはこの時点で自分が失敗したという事を理解していた。


この五十嵐静希の弟子になるという選択が一体どのような意味を持っているのかを正しく理解していなかったのである。


そしてそんな様子を見てか、アイナとレイシャがユーリアの肩にやさしく手を置いた。


「頑張ってください。私達も幼いころ死ぬほど鍛えられましたから。」


「大丈夫です。実際に死ぬことはありません。ですが大変なのは間違いありません。」


実際に静希に指導された経験のある二人からすれば、彼女が選んだ道はむしろ茨の道なのだという事が十分以上に理解できる。


それを教えておくべきだったかなと少し後悔していたが、彼女が自分でそれを選んだのだから自分たちが口をはさむ権利などありはしない。


自分で考えて出した答えというのは、正解も失敗も分からない。特に今回のユーリアの答えは正しいともいえるし間違っているともいえる。人によって変わるその選択と答えと正否、今回のこれがユーリアにとって正しいのか間違っているのか、今の段階では見当もつかなかった。


ただこの時ユーリアは少しだけこう思った。


もう少しよく考えて決めればよかったなと。


だがもう覆すことはできない。彼女は決めてしまった。静希は認めてしまった。すでに彼女は静希の弟子になった。そして静希は彼女を鍛える気満々だった。


「あの・・・シズキ・・・おて・・・お手柔らかに・・・」


「する気はないな。それと呼び方も気を付けろ。ファーストネーム呼び捨てってのは日本じゃ失礼にあたるぞ。」


「えと・・・じゃあ・・・マスターシズキ・・・」


まるでどこかの映画のようだなと思いながらも静希は悪い気はしないようで笑いながら移動を開始していた。








その後の顛末を、少しだけ記そうと思う。


ロシアを離れるための手続きをした静希達は、ユーリアを連れて日本へと旅立った。


別行動していたエド達とも合流し、ユーリアはそこで初めて祖父母と再会することができた。


そしてユーリアの祖父母に今までの事の顛末を包み隠さず説明し、ユーリアが静希の弟子になるという選択をしたことも全て話していた。


ユーリアの祖父母は最初こそ驚いていたものの、そこまで動揺はしていないようだった。


半ば予想はできていたらしい。ユーリアが静希のことを信頼しているということがわかると彼らは反対することなく彼女のことを任せてくれた。


そして日本にわたってから数日後、ユーリアの父親と、そのほかの幹部たちも捕縛されたという報告が入った。


事実上、今回の事件を起こした人間はすべて捕縛され、事件は解決したということになるだろう。


それに対してユーリアは特に何も言わなかった。もうすでに両親との決別は終えているという事らしかった。


ユーリアの生活は事件の前と後では一変していた。


学校は日本にある能力者専門学校である喜吉学園に編入することになる。夏休みという事が幸いし日本語を覚えながら静希からの指導を受けている。


ユーリアは五十嵐家に居候し日本の生活になじむために日々鍛錬に励んでいる。


ユーリアの祖父母は、その邪魔をしまいと近くのマンションを借りて生活を始めていた。


最初静希の家族たちは全員驚いている様子だった。


まさか隠し子ではないかとも疑っているようだったが、事情を説明するとすぐにユーリアを受け入れてくれた。


静希の家族は、五人家族。静希と静希の妻である明利、そしてその子供の優理と優希、そして静希の姉兼愛人の雪奈だった。


最初は戸惑っていたものの、ユーリアは子供たちである優希と優理のおかげですぐ馴染むことができた。


それから彼女は毎日のように静希から訓練を受けている。


それこそ平穏な日常とは程遠い、決して平穏とは言えない多忙な毎日だった。


だがそれでも、平和ではあった。


誰から狙われることもなく、日々を安心して暮らすことができていた。


アイナとレイシャが言っていたように、静希の施す訓練ははっきり言って地獄と称しても過言ではないほどのものだった。


毎日のようにくたくたになるまで訓練を施され、それに加えて日本語の勉強。目が回りそうなほどの毎日の連続だった。


だがそれでも、暖かかった。


明利の作る料理はおいしく、雪奈は自分や子供たちと一緒に遊んでくれる。子供たちも自分のことを徐々にではあるが慕ってくれているのがよくわかった。


そして静希も、自分のことを大事に、なおかつ正しく教育しようとしてくれているのがよくわかった。


日本の気候に慣れるまでユーリアはだいぶ時間がかかったが、それでも毎日は充実していた。


ロシアに残したままになってしまった友人にはメールや電話を通じて別れを告げ、彼女は日本での生活に慣れ始めている。


徐々にではあるが成長し、静希の友人たちと出会いながら日々成長していた。


彼女の一生に左右する選択、それを彼女自身ですることができた。


そう言う意味では静希の選択は正しかっただろう。


そして時折静希の仕事を手伝いながら、彼女は一人前になるために日々努力している。


誰にも負けないように、誰にも手が出せないように。


それが静希が掲げたユーリアの目標でもあった。


自分の庇護下から外れてもなお誰も手を出せないくらいに強くなること。


静希が弟子とした以上半端は許されない。それこそ自分よりも強くする勢いで彼は指導を続けていた。


時折アイナやレイシャ、そしてノエルとコナーとも会って訓練をしたりすることもあった。


静希の人脈に触れ、ユーリアはその広さと強さに驚いたものだった。


一個人がもつ人脈の広さではないと思えるほどに、静希のコネは多かったのだ。


それは歳を重ねるほどにそう思えてくるだろう。


多くの面倒事に静希が巻き込まれるたびに、彼女もまた静希と行動を共にしその面倒を解決するために活動した。


その未来まで、あと少し。今はまだ、幼く弱いただの少女


彼女はこうして、世界を救った英雄、五十嵐静希の一番弟子になった。


そして彼女は後に、一人前になった後でこう呼ばれることになる。


悪魔の弟子、悪魔の再来、死神、あげればきりがない。


静希によって鍛えられ、実力を有した彼女はやがて静希さえ超える存在になる。


彼女の名はユーリア・コリント。


ただ能力が使えるだけだった少女は、やがてその名を世界にとどろかせることになる。


それが良い意味なのか悪い意味なのか、それはまだわからない。


そして彼女がした選択は、彼女が出した答えは正しかったのかどうか、それもまだ答えは出ていない。


だが彼女は自分で答えを出した。自分で考えその答えにたどり着いた。

ただの少女は能力者へと成長し、やがて師を超える。


幼い少女は成長する。悪魔の名を持つ男の下で。


これにて番外編終了


そして書き溜めていたJ/53のストックもゼロになりました。


新しい生活環境がどのようになっているかはわかりませんが、とりあえず少し時間をいただければと思います。


これまでご愛読いただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品を知ってから一気に読んでついに番外編を読み終え興奮が収まりません。 本当に面白くて語彙力が低い自分にイライラするほどです… また更新は来るのでしょうか? 更新来ることを願って待っ…
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