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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」
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村の構造

「説明を続けるぞ、この村には四つ召喚陣を作るための建物がある、北東、北西、南東、南西部にそれぞれ一つずつだ、それぞれ回ってみることにしよう」


「前言ってた廃校はどこにあるんだ?」


「あぁ、それなら村の東部にある、後で見てみるか?」


「そうだな、頼むよ」


ようやく村の全体像が見えてきた


南北に村の出入り口、そして先に石動の言った四つの方角に召喚陣、そしてほぼ中心部に長の家、そして村の形と同じく円を描くように各家があるような配置だ


そして村の東部にはかつて学校であった建物、今は集会所として使われているんだったか


簡単に図解しながら静希は各所をマッピングしていく


北の入り口から時計回りに番号をつけていき、見やすいように整理していく


「村の形が丸いのにもなんか理由あんのか?」


陽太は時たま確信をつくようなことを聞く


確かに山岳地帯に村をつくるのに円であることはあまり効率がいいとは思えない


「もちろんだ、円にすることによって龍脈を探りやすくする、そして建物などの関係を対称にすることで力の歪みをなくすことが目的だ」


「・・・なんだか風水的な話?」


「風水とは違うが、まぁ意味合い的にはそんな感じだ」


エルフが時折話に出す龍脈というものはもともと風水的なものなのだが、どうやら風水とは本質的な意味で一線を画す物のようだ


「対称ってことは西にもなんかあるのか?」


「あぁ、村の西部には古い集会所がある、だが今は古くなっているので立ち入り禁止だ」


なるほどねと静希は手書きの地図に情報を書き加える


古いほうの集会所が使えなくなったから廃校を集会所として代用しているのかと納得しながらあたりを見回してみる


どうにも土地勘がないためか、妙な感覚だ


そもそも町や村をつくるうえで円を基盤にした作り方などまずしない


新規参入の特殊な趣味を持った人々を集めたデザイナーズマンションだって円状にはしない


人の居住空間は大概が四角形で作られており、それは先日泊った東雲家も同じだった


四角のものを円状にするということはそれだけ隙間が生まれ無駄が出るということだ


だがそれは物理的理論の上の話、エルフたちの使う『龍脈』とやらを基にした技術の上ではおそらくこれが最も効率的な建物の配置の仕方なのだろう


だが気になることもまだある


「ていうかここの人はどうやって生活してるの?ガス水道は来てたし、電気も各家庭にあったし、食材とかどうしてるの?」


そう、村の内部である街灯部分は先ほどのメソロンギ草を使った光を使用しているが、各家庭にしっかりと電気などのライフラインは通じている


だが通電の方法に関しても電線はないし、こんなところにガス会社が来るとも思えない、水道管なんかが山の地下を通っているとも考えにくい


「ライフラインは各家庭で契約などをしている、詳しくは知らんがエルフの仲間がある程度手配してくれているのだそうだ、食材は時折下に降りてまとめ買いしている、運ぶのに能力は使うがな」


「あぁ、なるほど」


各機関にエルフの人員がいればこうしてエルフの里の住所や状況を隠すのには困らない


委員会にまで顔が利くようなエルフだ、ある程度の業者なら顎で使えるだろう


そしてエルフの民は基本的に全員が能力者だ、食材購入でたとえかなりの大荷物になったとしても転移や収納、身体能力強化などの能力保持者が一人でもいれば事足りてしまう


それこそ村全体の買い物を終えることができるほどに


あの幼いエルフが暴走状態でさえあれだけの能力の多様性を見せていたのだ、それが大人で理性を持って能力を制御したら、その力は底が知れない


話をしながら進んでいると、場所はちょうど村の南東、召喚の陣のある建物だ


これも屋根から壁から全て円の形をしている


一階建て、というより地下に召喚の場所があるらしく、見えているのは階段だけだ


入口にはエルフが一人見張りとして立っていた


身体、特に皮膚の状態から見て恐らく五十代位だろうか


「ここが召喚の陣のある建物だ、中に入れるといいのだが」


石動が近付くと見張りのエルフはすぐに気付いたようで一行を見回す


「石動の娘か、何の用だ?」


顔もわからず仮面しか判断材料がないというのにどうやって見分けているのだろうかと一瞬疑問に思ったが、エルフにはエルフの見分け方というものがあるのだろう


東雲姉妹を仮面の違いで見分けているようなものだろうと静希は勝手に納得する


「この中を彼らに見せてやりたいのですが」


「人間に・・・?ダメだ、それでなくてもここは事故の起こった場所だ、誰も入れるなとの長の命令が出ている」


「そうですか・・・」


見張りの言葉に静希は目を細める


ここで事故が起こった


それがどちらの事故か、悪魔か神格か、それによって行動が変わる


「すいません、その事故っていつ起こったんですか?」


「なんだ?言う必要があるのか?」


見張りの高圧的な態度に全員の怒りのボルテージが上がっていく


なるほど確かに石動や東雲家族とは対応も反応もまったく違う


大人の、特に高齢のエルフはみんなこんな感じなのだろう


静希もつい舌打ちをしかけるが、ここはこらえて冷静に紳士的に


「えぇ、俺達はこの事故についての任務できました、ある程度調べる義務があります、長が入れるなとおっしゃるならそれには従いますが、いつ頃に起こったのかなどは記録しておかなくてはなりません」


だからとっとと話しやがれと言いたいところだったが、その言葉は何とか飲み込む


見張りも多少静希達を疑っているようではあるが、静希達が喜吉学園であること、ここに任務できていることなどが決定打になったのだろうか渋々話し出す


「ここ数日だ、もう北東の召喚所では二週間以上前に同様の事故が起きている、あっちも現在立ち入り禁止だ」


決定的だ、静希の次の行動は決まった


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