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J/53  作者: 池金啓太
番外編「現に残る願いの欠片」

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作戦開始

僅かな揺れが続く中、彼は座りながら呼吸を整えていた。


鋼鉄の壁と床で覆われた場所で彼は神経を研ぎ澄まし、集中を高めている。


壁の外側からは僅かな振動音と駆動音が聞こえてくる。機械的なその場所に腰を下ろし何をするでもなくただ佇み続けている彼が何をしているのか、その場の人間でなければわからなかっただろう。いやもしかしたらその場にいる人間さえも彼が一体今何をしているのかわからないかもしれない。


彼が身に着けているのは数々の装備品。それこそ一般人などでは手にはいる事はないであろう軍用装備ばかりである。


この空間にいるのは彼以外には一人だけである。体のラインからして女性であることがわかるが、その顔は酸素マスクのようなものを着けており、同じように軍用の装備を身につけている。


この二人の様相から明らかに彼らが一般人ではないことがわかる。


『機内減圧完了・・・目標地点まで後五分』


男性の声で響くアナウンスを受けると彼は大きくため息をついて懐に入れてある写真を見て小さく祈るように額に当てて見せた。


そこに写っているのは彼の家族だ。この場にはいない彼の守るべき人達。

今ここに彼がいるのは彼女たちを守りたいからに他ならない。


『目標地点まであと三分、降下準備を始めてください。』


男性の声でアナウンスがこの空間に流れる中、彼はゆっくりと立ち上がり準備運動を始めていた。


これから何が始まるのか、それを理解しているのはこの場にいる人間だけだ。


彼はゆっくりとその場所の端へと移動し最後の装備チェックを行っていた。


そしてその準備を手伝うべく、近くにたたずんでいた女性が彼の装備の最終チェックをし始める。


その手つきは手慣れており、何度も行ったものであるという事がよくわかる手際だった。


「目的を忘れるな?我々の目的はあくまで目標の保護だ・・・余計なことはするなよ?」


「わかっているよ・・・任せておけって」


話しかけてきた女性は小さくため息をつきながら彼を心配そうに眺めていた。


彼のことを昔から知っているだけに心配になってしまうのだ、余計なことをしないだろうか、無茶なことをしないだろうかと。


「君が素直にそういうことを行ってくれればいいんだがな・・・毎度毎度面倒を起こす。」


「別に俺が起こそうとしているわけじゃないんだけどな・・・今回だってそうだろ」


この会話からこの二人の付き合いがそれなりに長いことがうかがえる。


そしてそれだけの数の何かに関わり、互いを信頼しているという事も。


『我々は回収ポイントで待つ。定期連絡を忘れないように。』


アナウンスが再び響く中、彼は無線をつないでアナウンスの向こう側にいる男性に声をかける。


「了解、サポートは任せるぞ。」


『オーライ、気を付けて。』


「お前もな。」


先程までの機械的なアナウンスではなく、この二人の声には互いを信頼しているが故に暖かさのようなものが感じられた


友人と話すときのような気やすさと、気楽な感じがそこにはあった。


これからやろうとしていることに対してなんと緊張も感じていないように思える


そしてそれから数秒経過すると彼がいる場所の端が徐々に開いていく。


その先にはどこまでも続いている空が見えていた。ところどころにある雲はオレンジに輝いており、今が夕刻であることを表していた。


そう、先のアナウンスでも分かる通り今彼らがいるのははるか上空、今彼らは飛行機の中にいるのだ。


しかもただの旅客機のようなものではなく、特殊な機体だ。それも一般人が使用するようなものでは決してない。


入り口を開いたせいか周囲に轟音が響いてくる。それが風の音であると気づくのに時間はかからなかった。


今も飛行機は航行を続けているのだ、これだけの風の音がするのは当然かもしれない。


『降下まであと一分・・・カウントダウンを開始する。』


男性の声でカウントダウンが始まる中、彼はゆっくりと機内後部へと移動していく。


これから彼が行うのは単純、ただ飛び降りるだけだ。


これから行く場所へ一直線に何の弊害も障害も妨害もなく向かうにはこれが最適だと判断したのである。


「気を付けろ、サポートにあの子たちも向かっている。」


「了解、やれることはやるさ」


女性の言葉を受け彼はゆっくりと深呼吸していく。自分がこれから行う事が正しいかどうかは知らない。


傍から見れば犯罪にも見えるかもしれないが事は急を要するのだ。

ならば多少強引でもできることをするほかない。


そうしなければ世界が崩壊してしまうかもしれないのだ。


『十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、幸運を祈る。』


カウントがゼロになると同時に彼は飛行機から飛び降り無限に広がる空中へと体を投げ出して見せた。


体を風圧が捉え、その体を強烈な冷気が襲い掛かる。だがそれでも彼は落下し続けた。


目的の場所へと、目的の存在へと近づくために少しでも早く。


「こちら『ジョーカー』・・・これより作戦行動を開始する。」


落下しながら告げられたその言葉を無線で届け、彼は延々と落下し続けた。その先にある彼の目的のために。


今回から番外編スタートです


ただここから完全予約投稿で反応できない上にキリの良いところで文章を区切るため文量は安定しないかもしれません。


そのあたりご容赦ください。




投稿しなきゃ・・・(使命感)

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