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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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厄介な説明

「なんかさ、身体の節々が痛いんだけどさ、一体何があった訳?」


意識を強制的に戻された陽太はどうやら城島から受けた物理的な説教を記憶から抹消してしまっているらしかった


いや、むしろそのほうがよかったのかもわからない


身体の痛みが城島から受けたものか雪奈が強く押したつぼが原因なのかは不明である


「ていうか雪奈さん、さっきのってどうやったんですか?」


「いやなに、筋肉の隙間とでもいうのかな、そういう場所を指で突き刺して臓器とかにある痛覚を直接刺激しただけだよ」


「へえ、すごいんですね、結構強い技じゃないですか」


「いやいや、相手が力を抜いてないと使えないから実戦向きではないよ」


呑気に笑っていられるのはそれを受けるまでの間だ


実際はすごく痛い、ものすごく痛い


どれくらい痛いかというと眼球にワサビを塗りたくられたうえで熱湯をぶちまけられるくらいに痛い


それが電流が流れるように全身に回るのだ、聞いているだけではそうなのか程度にしか思わないだろう


何というか痛みの次元が違うのだ


それを知っている静希は冷汗しか出ない


「それで五十嵐、今日は石動に案内してもらうのか?」


「はい、とりあえず召喚陣を見せてもらおうと」


見せてもらえればの話だが


可能性で言えば見せてもらえないだろう


わざわざ自分達の犯行の証拠を見せるバカはいない


逆にいえば何らかの理由をとってつけて見せることができないなどと言ってきた日には確実に黒だ


腹に一物どころか腹に真っ黒な汚物をため込んでいてもおかしくない、発言には注意しなくてはいけない


「先の会話、あれは何か意味があるのか?」


さすがに二年生で頭の切れる熊田には先ほどの会話の意味をある程度汲み取られていたようだ


同じ二年生なのにまったくそこら辺を理解していない雪奈とは大きな違いだ


戦闘型と補助型ではまったく思考の仕方が違うのはわかってはいたが、こうして目の当たりにするとなかなかどうして、微妙な面持ちである


「ちょっと説明はできないんですけど、まぁいろいろあるってことで」


「ふむ、わかったそういうことなら任せよう、これはお前達の任務だからな」


二年生はあくまで一年生の補助だ、一年生の実習において手に負えない場面があれば手を貸すまでが義務だ、わざわざ問題に首を突っ込むことはない


「なんだ熊田、静と内緒話なんてして、お前そっちの趣味もあったのか」


「え・・?」


「ちょっ先輩マジッすか・・・?」


「ふざけるな、俺はちゃんと女性が好きだ、男になんぞ興味はないぞ」


熊田は不快そうに否定するが、静希と陽太は若干距離を置いた


「おい!お前たちなぜ距離をとる!?」


「いやだって、先輩あいつが出てきたときも平然としてたし・・・」


「もしかしてほんとに・・・俺そっちの趣味ないっすよ?」


あいつとはもちろんメフィのことだ


風呂場での熊田の態度を見ているからこそ疑念が深まる


年上好きとはいえまったくの無反応というのはさすがにない


「?五十嵐さん、どういうことなんですか?」


この場で意味がわかっていないのは幼い東雲姉妹だけだ


首をかしげて今どういう状況なのかわかっていない


今はその純粋さが恨めしい


「えとつまりな、女の人でなくて、男の人というか、同性というか・・・そういう人が好きな人なんだ」


「え?でも熊田さんは男の人ですよね、何で男の人が好きなんです?」


あぁもうこの幼子にどうやってこの状況を説明したものか、言葉が浮かんでこない


明利や鏡花に目線を送っても目をそらされてしまう


味方はいないどう説明したものか


「違う!俺は熟女が好きなだけなんだ!若い女に興味を持てないというだけで」


「そんなこと言って実は裏では・・・あぁ風香ちゃん達にはちょっと早いお話だったかな?」


「お前その口を閉じないと細切れにするぞ・・・!」


「ほぉ?私に斬りあいで挑むってか?いい度胸だ」


まずい、非常にまずい空気になり始めた


ただでさえ戦闘能力の高い雪奈と実は能力の高い熊田が本気でぶつかりあったらどうなるか、想像だにしたくない


「えと、あれだ、風香や優花は石動のこと好きか?」


「「はい、好きです、大好きです」」


「そういうことだよ、同性でも好きになることがあるってことだ」


こういっておくしかない、この幼子達にそんな人間関係の深くて腐っている部分なんて見せるべきでも触らせるべきでもない


この場ではごまかすことこそ最善の選択肢だ、それ以上のことは静希には選べない


明利も鏡花もほっとしたようで胸をなでおろしていた


何が悲しくてこんな小さい子に同性愛とは何であるかを説かなくてはいけないのか


「そういうお前はいつだって年下趣味じゃないか人のことを言えるのか!?」


「あぁ!?一回りどころか二回りも上の人間にしか興奮できないお前に言われたくないね!」


二人の口げんかは加速していく


個人の趣味嗜好性癖に口を出す気などないし、そもそもそんなもの興味の欠片もありはしない


だが二人は口悪く互いの言葉をぶつけあい、目の前の幼い少女はまだ微妙に納得していないのか首をかしげて何やら話しこんでいる


何やら今日は厄日な気がしてならなかった


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