色が見えないお姫様
色が見えないお姫様がいた。見えるとしたらただの白黒の世界。
お姫様は幼い頃から色のある物に憧れている。この大地に、空に、太陽に、夜空に、銀河に、世界に。
「私も、皆みたいに色が見えてたくさんの色を見てみたいわ」
お姫様は毎日願った。いつか、色が見えますようにと。
お姫様が17歳になったある日、他国のたくさんの王子がお姫様の元に現れた。
「どうか、僕と結婚を!」「いえ、この私と!」「何を言っている!?この俺とだ!!」
「貴方のほしいものを何でも与えよう!」「僕と結婚すれば必ず幸せになれる!!」「あなたは世界一美しい!」
たくさんの求婚にお姫様は嫌になった。だから、お姫様はワガママを言った。
「私にも分かるような色のある物を見せてください」
他国の王子たちは必死にお姫様でも分かる色のある物を探した。ある者はあきらめ、ある者は危機に立ち向かい、またある者は国中の住人を働かせ…。
お姫様は分かっていた。絶対に私の求めている物はみつからないと。
結局、お姫様の元に誰も現れなかった。
お姫様の目から一筋の涙がこぼれる。
「やっぱり、無理なんだ」
18歳になったある日、一人の王子様がお姫様の前に現れた。
「僕は貴方に色を見せることができます」
王子様はお姫様に近づき、そっと手を触る。
「無礼で申し訳ありません。姫様、僕は何色に見えますか?」
「白、黒」
「僕の目は空色です」
「空、色?」
お姫様は空色が分からない。
王子様は微笑んだ。
「空の色です。想像してみてください。どんな色になってもいい」
お姫様は想像した。空の色を。お姫様の心がワクワクしてきた。
すると、王子様の目が綺麗な水色になった。
「あ…綺麗な水色」
「そうです、綺麗な水色です」
お姫様はそっと王子様の目元を触る。
「次は貴方が身に着けているドレスです。可愛らしいピンク色だ」
「可愛らしいピンク…」
自分のドレスをじっと見つめると薄い色が付いていく。お姫様はもっと想像し、考えた。すると、ドレスの色が一気に桃色になった。
「姫様、色がなければ想像して色をつければいいじゃないですか。他人の力ではなく、自らの力で」
「色をつける…」
それを聞いた瞬間、お姫様の目から涙が流れ、すべての物に色がついた。
END