第6話 時空(とき)の守人
小雨降る中、林をいくつかの黒い影が駆けていく。その後を追う小柄な少年。
地面がぬかるんでいて、泥が跳ねる。着てきたカッパはすでに泥まみれだ。
「待てぇえええ!」
待てと言われて待つバカはいない。分かってはいるが、追いかける時はたいていこう叫んでしまう。
恩は確実に影との距離を縮めていたが、相手は人外だ。その速さは車並み。……それに追いついている恩も相当な速さではあるが。
相手は鉄鼡という恠妖で、灰と黒のまだら模様の体毛、頭には三本の角があり、大きさは中型犬ほど。
今回の依頼は奴らの駆除だ。農作物を荒らされて困っている、とのことで、恩たちは奴らが出没した村に赴いた。
村長から話を聞き、半日ほど畑を張っていたらようやく奴らが現れたので追いかけていたのだ。
「逃げるなぁ! ちょっとぐらい話を聞け!」
四匹の鉄鼡は後ろを振り返りつつ林を疾走。だが、前方に生まれた気配に、ハッと身を固くする。
雨でぬかるんだ地面の一部が盛り上がり、ズズズ……と人間の形を作る。鉄鼡たちは警戒心を露にし、新たな敵に向かって威嚇の声を上げる。
「千咲さん! 足を狙って!」
恩が叫ぶと、千咲は微笑をたたえたまま頷き、自身の両腕を土の鞭に変えて鉄鼡たちの足元を薙ぐ。
鉄鼡たちは足を払われ転倒。だが、一匹はその一撃をよけ、横の茂みへ飛び込んだ。
「しまった!」
一匹でも逃すと、あとあと面倒なことになる。恩が後を追おうとした時、空から羽根が舞い落ちてきた。
「ビフォー=ゴーゼエルク・フォカ=ムルガンレルク」
澄んだ声が頭上で歌うように紡がれる。すると風が渦を巻き、大きな細長い布のように鉄鼡を優しく捕らえた。
「助かったよ、カーレン」
「お役に立ててよかったです」
背中の翼をはばたかせて、カーレンが笑顔で空から降りてくる。
「じゃあ此武のところに戻ろうか、千咲さん……って、うわぁー!?」
千咲を振り返ると、体が半分溶けかかっていた。彼女は此武の作ったゴーレムで、体は土でできているため雨に弱いのだ。
「溶けてるっ、溶けてますぅー!! あわわ、とりあえず木の下にでもっ」
「その程度でうろたえるな、たわけめ」
聞こえた声は子供の声。木陰から不機嫌そうな顔の此武が現れた。捕らわれた鉄鼡たちを一瞥し、
「仕事は終えたようだな。来い、千咲」
「はい」
千咲が半分泥と化した体を引きずって此武のもとに行くと、此武は無造作に千咲の胸の真ん中に手を突っ込んだ。
本物の女性の体ではないとはいえ、恩がぎょっとする。
何かを探り出し、此武が手を引き抜くと千咲の体がざあっと砂のように崩れる。雨ですぐさま泥となり、地面に同化していく。
「これでいいだろう。本体の方が移動も楽だしな」
手を開くと、手のひらに濃い紫の石がある。これが千咲の本体だ。これを核にして土で体が創られている。
「はあ~、何度見てもドキッとするよ……その核の出し方……」
「どこがだ。あんなことで揺れ動くとは、貴様の心臓はノミ以下だな」
「ノミと比べるなよっ」
ぶつぶつ言いながら、恩は風の鎖で捕らえた鉄鼡を他の鉄鼡のところに連れていく。
「さーてと。あのさ、君たち。なんで畑荒らすの? 何か気にくわないことあるんだったら教えてよ。あ、というか人間の言葉分かる?」
木陰に移動して雨を凌ぎながら、恩はしゃがんで鉄鼡たちに問いかける。鉄鼡たちは顔を見合わせると戸惑いがちに頷いた。
「話聞いてあげるからさ、言いたいことあったら言ってよ。ね?」
にっこり笑うと、鉄鼡たちはポツリポツリと話し始めた。
「ふー、なんとか一仕事終わったなー」
雨上がりの帰り道、恩は頭の後ろで手を組んでため息をついた。
鉄鼡たちの話を聞き、事情を村長たちに話して事は一段落した。鉄鼡が畑を荒らしたのは単に食べ物に飢えていたかららしい。
以前に住んでいた場所で食べ物が取れなくなり、村の近くに移り住んできたのだが食べ物を探しているうちに畑に迷い込み、つまみ食いをしていたら味を覚えてしまったのだそうだ。
食べ物さえあれば村に害を与えないというので、定期的に鉄鼡の住処に食べ物を届けるということで和解した。
人外との共存は相互の理解が必要だ。一方的な主張や拒絶は互いのためにならない。そのための橋渡しとなるのが恩たちだ。
恠妖も人間も話し合うことだってできるのに、互いを恐れたり自分より劣るものと認識して、そうした機会を持たない。
言葉が通じなかったり、分かり合えない時もある。けれど、同じ命を持つ存在だ。分かり合えるチャンスがあるならそうするべきだ。
「村の方たちが解って下さってよかったですね。鉄鼡さんたちも喜んでいましたし」
恩の隣を歩くカーレンがぽん、と手を合わせて微笑む。
「うん。大きな騒ぎにならなくてよかったよ。あ、初めての仕事はどうだった?」
「はい、とても楽しかったです」
「なかなかの業績だったぞ。一匹逃しかけたどこぞのクソガキとは大違いだ」
「悪かったなー。……此武なんて何もしてないくせに」
小声でぽそっと呟いたが、しっかりと此武の耳には届いていたようで。此武は後ろを歩く恩の背後に瞬時に移動し、どげんっと尻を蹴飛ばす。
「下僕が口答えするな」
ずべしゃあっ。恩は地面に顔から突っ込んだ。泥だらけだったカッパがさらに汚れる。
その上、少しカッパの間から泥が中に入ったらしく、服にまで泥がついてしまった。
「ああーっ!! 何するんだよ、服汚れちゃったじゃないかぁ!」
「やかましい。換装すれば関係なくなるだろうが」
「それはそうだけどさ……」
ううう、と恩は涙目でカッパを脱ぐ。
今の恩が着ているのはいつもの高校の制服ではない。宿命を紡ぐ者としての宿命を受け入れた時、此武がくれたものだ。
『恩、これから宿命を紡ぐ者として生きるならばこれを着ろ』
鞭で恩をがんじがらめにした此武が片手を中空に広げると、光で描かれた五芒星の魔法円が現れ、そこから衣服が出てくる。
『これは宿命を紡ぐ者である証だ。おい、聞いているのか』
『もめごまぶべ(これを外せ)―――っ!!』
口まで鞭で塞がれ、恩はバタバタと足をばたつかせた。此武は舌打ちし、恩の体を起こすと鞭を力任せに引っ張った。
『ぶげぇぇぇぇぇぇっ!?』
引っ張られた勢いでギュルルル、と高速回転し、鞭が外れる。恩は目を回して床に尻もちをついた。
『ふぇぇえぁぁぁ……』
『ちっ、軟弱者が。恩、“換装”と言ってみろ』
『うえ~? か、換装ぉ~』
目を回しながら恩が言うと、魔法円から出てきた衣服が光った。恩の着ていた服が消えて、代わりに魔法円から出てきた衣服がいつの間にか身についている。
勝手に服が変わり、恩は目をぱちくりさせた。
『? わっ、なんだこれ!?』
緑色に縁取られたレモンイエローのTシャツ、灰色のフードがついた黒いノースリーブジャケット、淡い水色のカーゴパンツ、腕には緑のリストバンド。
『まあ、恩さん、素敵ですよ』
『ほ、本当?』
カーレンの賛辞に恩は頬を赤くした。
『この空間に入る時や、宿命を紡ぐ者としての仕事の時に着るがいい。換装と念じればいつでも着替えられる』
『へえー。便利だなぁ』
普通の素材とは少し違うようだが、着心地がよい。それに、なんとなく体が軽くなったような気がして恩は上機嫌になった。
カッパを脱ぐと、宿命を紡ぐ者の証である服は泥で汚れてしまっていた。
恩が「換装!」と言うと服が光り、バイトに来る前に着ていた高校の制服になった。
「やっぱりこっちの方が落ち着くなぁ。なあ、此武。あの証服って絶対着なくちゃいけないものなのか?」
「当然だ。あれは自由に時空渡りをすることを許された者の証でもある。あれを着ている限りは時空渡りをした先で何をしようが大半は許される。
それにだ、あの服そのものに神の加護が与えられているからな、多少の防護服にもなる」
「そんなすごいものだったんだ……」
呟いて、恩はもう一度「換装」と言う。証の服についていた泥はきれいさっぱり消えていた。
改めて証の服を珍しそうに見回している恩を一瞥し、此武は中空に手を伸ばして時空廻廊への入り口を開いた。
「今日の仕事はこれで終わりだが、もう一つ行く場所がある」
「ああ、出る前にそんなこと言ってたっけ。どこに行くんだ?」
此武はなぜかすぐには答えず、三拍ほど置いてから口を開いた。
「時空神の神殿だ」
「え。時空神の、神殿?」
おとぎ話や神話に出てくる名に、恩は目を丸くした。此武はそれ以上は言わず、時空廻廊への入り口を開き、「行くぞ」とスタスタと中に入っていく。慌てて恩とカーレンも続いた。
いまだにこの不思議な空間は慣れずにいる。上下も前後も左右も判らない。もしもこんなところに一人放り出されたら、間違いなく迷う。
だが、此武は道が見えているかのように躊躇いなく歩いている。
それにしても、何度も時空廻廊を使っているが時空神の神殿など見かけたことがない。一体どこにあるというのだろう。
神話の中にも出てくる時空神の神殿は時空を司る神、時空神ジルティリードが住んでいるという。
ただ、どういうところなのかは神話では語られておらず、詳しいことは誰も知らない。神族の一柱である此武ならば知っているだろうが。
だいぶ歩いてきたが、時空神の神殿らしき建物は一向に見当たらない。恩は前を歩く此武に尋ねた。
「なぁ、此武。時空神の神殿っていつ着くんだ?」
「喧しい。黙ってついてこい」
ぴしゃりと言われ、恩は口をつぐむしかなかった。ひたすら無言で歩き続けてどれほど経ったか。
唐突に、時空の狭間を出入りする時のような感覚が全身を駆け抜ける。広がった光景に恩は目を見開いた。
黒い壁に囲まれた円筒形の広い部屋。天井はステンドグラスで、そこから光が落ちてきているため明るい。
黒い床に白線で描かれた複雑な魔法陣。正面に見える巨大な三つの扉。
どれも銀色で、表面には太陽や月、星、雲、空や大地、山に海、草木や花、鳥、動物、人間や天使、悪魔、恠妖など、あらゆる生き物や自然物のレリーフが施されていて壮観だ。
「う……わぁ……すっごく綺麗……」
三つの扉のレリーフは一続きになっていて、一つの絵になっているようだ。
レリーフの絵に見とれていた恩は、左手の黒いドアが開いた瞬間、緊張した。
ドアが開いた瞬間に溢れ出てくる強い神気。そこにいた存在に息を呑む。
紺色の長い髪は毛先が淡い浅葱色。そのグラデーションが光を弾き、まるでオーロラのように美しい。
伏し目がちなマリンブルーの瞳は角度によって様々な色に変化するプリズム。
典雅な身のこなし、整った顔立ち、何よりもその身が放つ清らかな神気。
(……時空神、ジルティリード……)
神気の清廉さに気圧された。此武――いや、戦神クロムとは全く質の違う澄んだ神気と存在感。これが、時空神なのか。
ジルティリードはゆっくりと恩に近づいてきた。目が離せず、立ち尽くす恩から少し離れたところで立ち止まる。
「……そなたが、宿命を紡ぐ者か」
凛とした声に、恩はどうにか「はいっ」と答えたが裏返った。
「我は時空神ジルティリード。時空を守り、宿命を紡ぐ者を支えし者。
終焉の刻への導となる者よ。そなたのすべきことは、宿命の鍵となる“フェイトパース”を導き、終焉の刻を見届けること。時には様々な時空を渡ることもあろう。そのために、我の加護を授けよう」
ジルティリードの繊手が恩の眼前にかざされる。ジルティリードの体から神気が流れ出て、恩を包み込んだ。
薄絹を纏ったような感覚。涼やかで、それでいて優しい。
「あ、ありがとうございます。ジルティリード様!」
恩は勢いよくお辞儀をする。恩を見下ろす瞳が、わずかに影を帯びる。此武だけがそれに気づいたが、小さく鼻を鳴らしただけだった。
顔を上げると、ジルティリードは無表情でマントを翻す。その時に、ジルティリードの背後に立っていたローブ姿の人物に気づいた。
気配などまったくなかった。いや、認識した今でも、存在感が希薄な気がする。
(誰だ?)
まさか霊などではあるまい。ここは神の神殿だ。ジルティリードはローブを着た何者かを一瞥する。
「そなたも挨拶をするといい」
「…………」
ローブを着た人物は無言で、動こうとはしなかった。
白いローブが足元まで覆うほど長く、顔はフードに隠されていて下半分しか見えない。
両手で抱え込むように持っている灰色の杖は、先端が鉤爪のようになっていて、その中央に細長い透明な六角水晶が浮かんでいる。
此武がジルティリードを睨みつけるが、意に介さず、ローブの人物を前に押しやる。
「……挨拶くらいならば、構わぬだろう」
小柄なその人物はためらっているのか、口をもごもご動かしている。人見知りなのだろうか?
ジルティリードがため息交じりに告げる。
「これは我に仕えし守人。我の補佐をしている」
「そうなんですか。えーっと、こんにちは。初めまして」
恩が声をかけてみると、びくっとして、ローブの人物はジルティリードの陰に隠れてしまった。こちらから声をかけたのはまずかったか。
自分の後ろで、此武が小さく舌打ちしたのが聞こえた。不機嫌オーラが出ている。まずいかもしれない。
「おい、恩。用件は済んだ。とっとと帰るぞ」
「え、あ、うん」
此武に促されるまま、恩が踵を返そうとした時、ジルティリードが抑揚に乏しい声で呟いた。
「相も変わらず短気であるな」
ぴく、と此武の片眉が上がる。途端に空気が張り詰めた。恩は、たら……と冷や汗をかく。
「貴様こそ、いつ見ても気の抜けた顔をしてやがる。珍しく起きていたかと思えば、頭は眠ったままなのではないか?」
「すぐさま悪態をつくところも変わらぬ。まるで童よ。姿形だけでなく、心までも幼稚であるか」
「幼稚、だと?」
「ちょっ、此武! 帰るんだろ? なっ?」
もしやこのふたりは仲が悪いのか。此武を制止しようとしたが無駄だった。
「オレ様が幼稚だと言うなら、貴様は赤子だ!!」
怒号とともに、此武は真の姿に戻る。黒いざんばらな髪、二メートルを超す長身、身にまとうのは民族衣装のサリーに似たものと古ぼけたズボン。
此武の真の姿――戦神クロム。狂神とも言われる異端の神。
「図星を指されると激昂するところも変わらぬ」
「貴様、よほどオレ様と一戦交えたいようだな……!」
此武の時と違い、低い大人の男性の声。今は怒りで一層凄みが増している。
(戦神のクロムと時空神のジルティリード様じゃ、どう考えてもジルティリード様の方が不利だろ!)
恩は止めなければ、と思うのに体がすくんで動けずにいた。カーレンはぽやんとした表情で成り行きを見守っている。
「貴様如きの力でオレ様に敵うはずもないがな! 縊り殺してやる!」
ぶわっ、と此武の全身から殺気と神気が放たれる。その凄まじさに、ジルティリードの陰に隠れていた人物が悲鳴を上げた。
「きゃああっ」
恩がそちらに顔を向けると、放たれた神気で顔を覆っていたフードが脱げたのか、顔が露わになっている。
それは可愛らしい少女だった。中学生くらいだろうか。青いリボンのついたピンク色の髪、桔梗色の大きな瞳。恐怖からかその眼は濡れていて。
その瞬間、恩の脳裏を何かがよぎる。どこかで見たことがあるような。
「ぃお……?」
「「……!」」
恩の呟きに、ジルティリードとクロムの顔色が変わる。少女はすぐさまフードをかぶり、逃げるように黒いドアへと走っていった。
少女の姿が消えると、クロムは此武の姿へと変化した。
「興が醒めた」
「は? へ?」
唐突な戦意の喪失に、恩の方が拍子抜けである。頭上に疑問符を浮かべる恩を、此武はげしっと蹴り飛ばす。
「帰るぞ!」
「いった! もう、なんなんだよ~」
どうやら出入り口であろう白いドアを開け、此武は恩とカーレンを先に行かせる。出ていく直前に、冷ややかな目でジルティリードを振り返った。
「貴様がどうなろうと知ったことではないがな、余計な真似をすると、身を滅ぼすことになるぞ」
ジルティリードは答えなかった。しばらくして、黒いドアから少女がおそるおそる出てくる。
「ジルさま……」
「大事はないか」
足早に、しかし優雅に少女へと近づき、足元に跪く。フードを脱がし、少女の頬に手を添えると、少女は微笑んだ。
「大丈夫です。でも、少し怖かったです」
「すまぬ。そなたを巻き込んでしまった」
「ジルさま、ケンカはめっ、ですよ」
眉を曇らせる少女に、ジルティリードは視線を泳がせた。
「……あれとは反りが合わぬ」
「戦神さまはこわい方です。でも……」
『恩』
あの人の名前を呼んだ。神の言葉には力が宿る。もしもあのヒトが言霊を宿していたら……
「昔とは違うのかもしれないです」
『恩』
少女は泣きそうな顔で、ジルティリードに抱きついた。
『ぃお……?』
「ジルさま、ごめんなさい。ちゃんとお話しできなくて」
小さく震える体を、ジルティリードはそっと抱き上げた。
(やはり、宿命を紡ぐ者をこの娘に引き合わせるのは酷だったか)
どれほどの時が経っても、そう簡単に癒える傷ではないか。
「……すまぬ。そなたを傷つけてしまったな」
ふるふると首を横に振る。
「ジルさまは優しいから、わたしを外のひとに触れさせようとしてくれたのですよね? ジルさまの気持ちはうれしいです。でも、それはきっと許されないことだから」
「無理強いはせぬ。そなたが恐ろしいと言うのなら……」
少女は顔を上げ、ジルティリードの頬を両手で包む。
「こわくはないのですよ。だって、ジルさまがいてくれるから」
顔をほころばせる少女。ジルティリードは目を瞠り、ゆっくりと目を伏せた。
このぬくもりを、笑顔を失いたくない。だから望みを叶えてやりたい。彼女も本心では望んでいるはずだ。他者と関わることを。
「次の機会を待つとしよう。案ずるな、時はある」
「……はいです」
ここは時空神の神殿。時間の流れから切り離された孤城なのだから。