パート5:魂を繋ぐ真意
スタジオの扉が静かに開く。
夕陽がガラス窓を染め、機材の間に柔らかな光を落とす。
リンとミズキが並んで戻ってくる。
リンはデニムのジャケットと黒のスキニージーンズ、緑の髪が少し乱れている。
ミズキはTシャツとフレアスカート、ピンクと黒のツインテールが夕陽に揺れる。
アオイがソファから立ち上がり、一歩踏み出す。
カノンはテーブルに置いたノートを握り、ネイビーのシャツの袖をまくる。
ユイは床から跳ね起き笑顔を見せる。
ヒナは窓辺から振り返りレーナーとスカートで手を振る。
奏は部屋の中央に立ち二人を迎える。
沙羅がブースから出てくる。
カジュアルなシャツとパンツで、静かに微笑む。
「リン、ミズキ、戻ってきたね。」
霧島玲がその後ろに立つ。
白のシャツと黒のパンツ、普段の冷静な佇まいが、今日は慈愛に満ちた表情に変わる。
「リン、ミズキ、アオイ、カノン、ユイ、ヒナ。話したいことがある。座って、聞いてくれるか?」
メンバーが集まり、床やソファに座る。
リンとミズキは並んで壁にもたれ、互いの肩が触れる。
玲が深呼吸し、目を閉じる。
開いた瞳は、優しく、温かい。
「まず、ありがとう。ネクターヴォウの音楽は、魂そのものだ。
リンのビート、ミズキのグルーヴ、アオイの歌声、カノンの歌詞、ユイのメロディー、ヒナの笑顔、奏のピアノ…全部、私の心を震わせる。」
リンが顔を上げる。
「玲さん、でも、なんで私のドラムを変えようとした?私のビート、否定された気がした。」
玲が微笑む。
「リン、ごめん。否定したかったんじゃない。君たちの魂を、もっと遠くに届けたかったんだ。」
彼女の声が、静かに響く。
「昔、私もバンドをやってた。クリムゾンヴェールって名前だった。魂をぶつけて、ステージで燃えた。毎晩、仲間と音を重ねて、夢を追いかけた。
でも、売れなかった。情熱だけじゃ、誰も聞いてくれなかった。
レーベルとの契約も打ち切られ、認知も広がらず、仲間が離れていった。
音楽が、灰になった。あの痛み、胸に刻まれてる。」 ミズキが息を呑む。
「…そんな過去、知らなかった。」
玲が頷く。
「話したくなかった。辛すぎて、目を背けたかった。でも、ネクターヴォウを見て、思い出した。あの頃の自分たちを。
リンの力強いビート、ミズキのグルーヴィーなベース、アオイの情感豊かな歌、カノンの詩的な歌詞、ユイのキャッチーなメロディー、ヒナの純粋な笑顔、奏の繊細なピアノ…君たちの音楽は、奇跡だよ。」
アオイが目を潤ませる。
「玲さん…。」
玲が続ける。
「でも、音楽の世界で生きていくには、奇跡だけじゃ足りない。現実的な数字が必要だ。
レーベルとの契約、チャートの順位、ライブの動員数…そういう数字が、バンドを生き残らせる。
認知が広がらないと、魂は誰にも届かない。
クリムゾンヴェールは、それで終わった。
リン、ミズキ、アオイ、カノン、ユイ、ヒナ、君たちは音楽の世界に踏み込んだ。覚悟したよね?
魂を届けるのは、簡単じゃない。だから、厳しく指導した。
テンポの精度、ポップさ、売れる音…魂を削るつもりじゃなかった。君たちの魂を、世界に届けるためだった。」
カノンがノートを握りしめる。
「玲さん、私の歌詞、詩的すぎるって言われた。でも、リンのビート、ミズキのベースに合わせて書いた。魂を、言葉にしたかったんだ。」
玲がカノンを見つめる。
「カノン、君の歌詞は心を刺す。ポップにと言ったのは、もっと多くの人に届くようにしたかっただけ。君の言葉、魂そのものだよ。」
ユイが膝を握る。
「玲さん、私のメロディー、リンちゃんのビート、ミズキちゃんのグルーヴと響き合うように作った。売れるためだけなら、作れない…。」
玲が微笑む。
玲が微笑む。
「ユイ、君のメロディーは光だ。
魂を削るつもりなんてなかった。君の光を、もっと多くの人に届けたかった。」
ヒナが手を握る。
「玲さん、リン姉さんのドラム、ミズキ姉さんのベース、私の笑顔、全部繋がってます。壊さないでください…。」
玲がヒナに近づく。
「ヒナ、君の笑顔はネクターヴォウの宝だ。壊すなんて、絶対しない。君たちの魂を守りながら、届けたいんだ。」
アオイが涙を拭う。
「玲さん…私、怖かった。前のグループ、バラバラになった。
でも、わかるよ。魂を届けるために、戦ってくれてたんだね。」
リンが目を潤ませる。
「玲さん、私も、怖かった。前のバンド、魂を否定されて壊れた。ネクターヴォウも、そうなるんじゃないかって。」
ミズキがリンの肩に手を置く。
「私も。前のバンド、仲間が離れる音、忘れられない。でも、玲さん、信じていい?」
玲が二人に近づく。
「リン、ミズキ、信じて。君たちの魂、否定しない。君たちの炎は、絶対に灰にならない。『灰の果ての光』は、君たちの魂そのものだ。私は、クリムゾンヴェールの灰を、君たちの光で乗り越えたい。ネクターヴォウは、私の夢なんだ。」
カノンが頷く。
「玲さん、私の歌詞、リンのビートに合わせて、もっと鋭くする。魂、届けるよ。」
ユイが笑顔を見せる。
「玲さん、私のメロディー、みんなと響き合うよ。リンちゃん、ミズキちゃん、一緒に!」
ヒナが手を振る。
「玲さん、ありがとうございます!リン姉さん、ミズキ姉さん、ステージでまた笑いましょう!」
アオイが深呼吸する。
「玲さん、信じる。私の歌、魂のまま届けるよ。」 メンバーの目が、涙で輝く。
玲の優しい言葉に、誰もが頷く。
「灰の果ての光」のメロディーが、スタジオに静かに響き始める。
ネクターヴォウの絆は、玲の真意を受け入れ、新たな炎を灯す。




