パート4:魂を灯す言葉
スタジオの控室は、静寂に閉ざされている。
レコーディングの熱が冷めた部屋に、残された四人が集まる。
窓から差し込む夕陽が、壁に長い影を刻む。
アオイはソファの端に座り膝を抱える。
カノンはテーブルに肘をつき、シャツの袖をまくる。
ユイは床に座り、白のニットとデニムのショートパンツで膝を揺らす。
ヒナは泣きそうな顔で座っている。
奏が静かに部屋に入ってくる。
グレーのスーツが、彼女の落ち着いた存在感を際立たせる。
「アオイちゃん、カノンちゃん、ユイちゃん、ヒナちゃん…大丈夫?」
奏の声は、柔らかくも力強い。 アオイが顔を上げる。
「大丈夫じゃないよ、奏さん。リンと玲さんがあんな…。バンド、バラバラになるんじゃないかって。」
彼女の声に、情感豊かなボーカルの震えが滲む。 カノンがため息をつく。
「リンが飛び出して、ミズキが追いかけて…。こんなの、初めてだ。『灰の果ての光』、私の歌詞も、リンのビートも、全部繋がってるのに。」
ユイが膝を抱える。
「リンちゃん、ミズキちゃん、大丈夫かな…。バンド、バラバラになっちゃう?」
彼女の声が、不安で震える。 ヒナが窓の外を見つめる。
「リン姉さん、怒ってた…。ミズキ姉さんも、追いかける時、泣きそうだった。ネクターヴォウ、壊れるの…?」
彼女の声に、純粋な恐怖がこもる。
奏が椅子を引き、座る。
彼女の瞳が、四人を順に見つめる。
「みんな、目を閉じて、聞いて。心の底で、どんな音が響いてる?」
アオイが眉を寄せる。
「音…?リンと玲さんのケンカ、頭から離れないよ。前のバンドみたいに、バラバラになる音しか…。」
カノンが頷く。
「私も。前のバンド、情熱がぶつかって壊れた。ネクターヴォウも、こうなるのが怖い。」
ユイが涙ぐむ。
「アオイちゃん、カノンちゃんの話、聞いてて思い出した。前のバンド、ケンカで終わったって…。」 ヒナが奏に近づく。
「奏さん、ネクターヴォウ、守れるよね?リン姉さん、ミズキ姉さん、帰ってくるよね?」
奏が立ち上がり、部屋の中央に立つ。
彼女の声が、静かな炎のように響く。
「アオイちゃん、カノンちゃん、ユイちゃん、ヒナちゃん。目を閉じて思い出して。
ステージで、ゴスロリの衣装に身を包んで、スポットライト浴びる瞬間。
アオイちゃんの歌声が魂を震わせ、カノンちゃんの歌詞が心を刺す。ユイちゃんのメロディーが空を切り、ヒナちゃんの笑顔が光を灯す。
リンちゃんのビートが鼓動を刻み、ミズキちゃんのグルーヴが命を繋ぐ。あの音、覚えてるよね?」
アオイが息を呑む。
「…覚えてる。ステージで、みんなと響き合った瞬間。私の歌、リンのビートに支えられて、自由だった。」
カノンが目を閉じる。
「私の歌詞、リンのビート、ミズキのベースに合わせて書いた。魂が、言葉になった瞬間…。」
ユイが膝を握る。
「私のメロディー、みんなの音と重なって、輝いた。リンちゃんのビート、ミズキちゃんのグルーヴ、全部繋がってる…。」
ヒナが微笑む。
「リン姉さんのドラム、ミズキ姉さんのベース、ステージで響くの、大好き。」
奏の瞳が燃える。
「届いてる。ネカターヴォウの魂は、バラバラになんてならない。
リンちゃんとミズキちゃん、今、きっと話してる。私はバンドの経験はない。
ピアノの鍵盤を叩いて、音で魂を紡いできただけ。
でも、ネクターヴォウのステージを見た時、初めて分かった。音楽は、魂が響き合う奇跡なんだ。」
アオイが首を振る。
「でも、奏さん、玲さんの指導、厳しすぎる。
私の歌、魂を削られる気がする。
リンも、ミズキも、限界なんじゃない?」
奏がアオイの手を握る。
「アオイちゃん、私も怖かった。ピアノの前で、魂を音に込めるたび、届かない恐怖と戦ってきた。
でも、ネクターヴォウの音を聞いて、変わったんだ。
アオイちゃんの歌声、カノンちゃんの言葉、ユイちゃんのメロディー、ヒナちゃんの笑顔、リンちゃんのビート、ミズキちゃんのグルーヴ…全部、私の心に響いた。
初めて、魂が仲間と繋がる喜びを知った。
玲さんの指導は、魂を届けるための道だよ。
厳しいけど、沙羅が動いてる。私も、玲さんと話す。みんなの魂、絶対守るよ。」
カノンが眉を上げる。
「沙羅?ママ、リンやミズキのために動いてるの?」
奏が頷く。
「そう。沙羅は、みんなの魂を信じてる。
リンちゃんのビート、ミズキちゃんのグルーヴ、アオイちゃんの歌、カノンちゃんの歌詞、ユイちゃんのメロディー、ヒナちゃんの笑顔…全部、ネクターヴォウの光だよ。
私にとって、ネクターヴォウは新しい居場所なんだ。ピアノの鍵盤じゃ届かなかった夢を、みんなと一緒に追いかけたい。
前の傷、灰に埋もれた過去を、光に変えるために、私はここにいる。」
ユイが目を輝かせる。
「奏さん…。リンちゃん、ミズキちゃん、帰ってくるよね?私のメロディー、みんなと響き合うよね?」
ヒナが手を振る。
「リン姉さん、ミズキ姉さん、帰ってくる!奏さん、ありがとう!ステージ、みんなでまた立つよ!」
奏の声が、部屋に響き渡る。
「ネカターヴォウは、灰にはならない。みんなの魂は、炎だ。『灰の果ての光』は、その炎で輝く。リンちゃんとミズキちゃんが帰ってくるまで、準備しよう。アオイちゃん、歌声を磨いて。カノンちゃん、言葉を尖らせて。ユイちゃん、メロディーを響かせて。ヒナちゃん、笑顔でみんなを照らして。私も、沙羅と一緒に、玲さんと話す。ネクターヴォウの魂、世界に届ける。私の全てをかけて、守るよ!」
アオイが深呼吸する。
「分かった。奏さん、信じる。私の歌、魂のまま届けるよ。」
カノンが拳を握る。
「私の歌詞、リンのビートに合わせて書く。魂、絶対削らない。」
ユイが立ち上がる。
「私のメロディー、みんなと響き合うよ!リンちゃん、ミズキちゃん、待ってる!」
ヒナが笑顔を見せる。
「リン姉さん、ミズキ姉さん、早く帰ってきて!ステージで、みんなの光、輝かせるよ!」
奏が四人に微笑む。
「それでいい。ネカターヴォウの魂は、みんなの手にある。『灰の果ての光』、一緒に光らせるよ。」
夕陽が控室を照らし、四人の不安が熱い希望に変わる。
「灰の果ての光」のメロディーが、心の中で力強く響き始める。
ネカターヴォウの絆は、奏の熱い言葉で再び燃え上がり、スタジオへの一歩を踏み出す準備を整える。




