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パート3:魂の奥で響き合う

東京の夕暮れが、スタジオ裏の路地を淡いオレンジに染める。

雑踏のざわめきが遠く響く中、リンはコンクリートの壁にもたれ、緑の髪を乱暴にかき上げる。

デニムのジャケットと黒のスキニージーンズが、彼女の苛立ちを際立たせる。

ドラムスティックの感触が、手に焼き付いている。

緑の瞳は、怒りと痛みで揺れている。 ミズキが息を切らせて追いかけてくる。

ピンクのツインテールが夕陽に揺れ、ゆるい白のTシャツとフレアスカートが軽やかに動く。

ヘーゼル色の瞳が、リンを心配そうに見つめる。 「リン、待って…!お願い、話したい。」

リンは顔をそむける。

「話す?ミズキ、なんで私のドラム否定するの?」

力強いビートが、彼女の心臓を叩くように響く。

ミズキが一歩近づく。

「否定なんかしてない!リンのビート、最高だよ。『灰の果ての光』、あのビートがないと、曲に命がない。」

リンが鋭く振り返る。

「なら、なんで止めるの?玲さんの指導、魂を縛るだけだよ!」

ミズキの手が、ベースを握る癖で空を掴む。

「私も…玲さんの言うこと、全部正しいとは思わない。でも…。」

彼女の声が、かすかに震える。

「でも、何!?」

リンの緑の瞳が燃える。

「売れるためなら、私のドラムを殺していいって!?魂を削って、数字に合わせろって!?」

ミズキが唇を噛む。

「魂を削るなんて、思ってない!リン、聞いて…。」

ヘーゼル色の瞳に、過去の傷がちらつく。

「前のバンド…覚えてるよね?あの日、みんなバラバラになって、音楽が灰になった。」

リンが息を呑む。

「…あの時。」

「あの時、私、止められなかった。」

ミズキの声が、夕陽に溶ける。

「情熱がぶつかって、仲間が離れて、何も残らなかった。リン、ネクターヴォウをそうしたくないんだ。」

リンが壁を軽く叩く。

「私だって、バラバラにしたくない!でも、玲さんの指導は…私のドラムを、魂を否定してる!あのテンポの修正、精度の話…私のビートを壊すだけだ!」

ミズキが首を振る。

「否定じゃないと思う。玲さん、厳しいけど…私たちの音楽を、もっと遠くに届けたいんじゃないかな。」

彼女の声に、グルーヴィーなベースの響きが滲む。


「私のベースだって、玲さんに『ポップさに欠ける』って言われた。でも、リンのビートと私のグルーヴ、響き合ってるよね?」

リンが目を細める。

「遠くに?そんなの、私のビートじゃない!私のドラムは、魂を叩き出すためのものだ!」

「リンのビートだよ。」

ミズキが一歩踏み出す。

「『灰の果ての光』、リンの力強いビートが命なんだ。アオイの歌、カノンの歌詞、ユイちゃんのメロディー、ヒナの笑顔…全部、リンのビートが繋いでる。」

リンの拳が緩む。

「…ミズキのベースも、だろ?」

ミズキが微笑む。

「うん。私のグルーヴ、リンのビートと響き合ってる。前のバンドじゃ、できなかったこと。」

彼女の瞳が、夕陽に光る。

「でも、玲さんの言うことも…少し分かる。売れなきゃ、私たちの音楽、誰にも届かないかもしれない。前のバンド、届かなかったから、灰になった。」

リンが地面を見つめる。


「届けるためなら、魂を曲げるの?前のバンドも、売れるために魂を失って、終わったんだ。」

彼女の声が、かすかに震える。

「私、あの時のこと、忘れられない。仲間が去っていく音、ステージが静かになる瞬間…全部、頭に響いてる。毎晩、夢でステージが崩れるんだ。」

ミズキがリンの肩に手を置く。

「魂は曲げない。リンのビート、私のグルーヴ、ネクターヴォウの魂だよ。」

彼女の声が、静かに力強い。

「玲さんに、ちゃんと伝えよう。私たちの音楽、魂のまま届けるって。

沙羅ママなら、話を聞いてくれる。奏さんなら、玲さんと話してくれる。」

リンがミズキの手を見下ろす。

「…玲さん、聞いてくれるかな。あの人、数字と売上しか見てないよ。私のビート、ただの音符にしか見えてない。」

ミズキが小さく笑う。

「分からない。でも、きっと沙羅ママが聞いてくれる。

リン、奏さんが間に入れば、玲さんも分かってくれるよ。」

リンが夕陽を見上げる。

「ミズキ…私、ドラム叩くの、怖いんだ。」

彼女の声が、初めて弱々しく響く。

「前のバンドみたいに、魂を否定されて、消えるのが…。ネクターヴォウ、こんな大事な場所なのに。みんなとステージ立つたび、初めて魂が自由になった気がした。ゴスロリの衣装着て、スポットライト浴びて、ビートが響く瞬間…あれが私の全てだ。」 ミズキがリンの手を握る。

「消えないよ。リン、覚えてて。前のバンドで、私、守れなかった。」

彼女のヘーゼル色の瞳が、リンをまっすぐ見つめる。

「仲間が離れる瞬間、胸が潰れる音、聞いたよ。叫んでも届かなくて、音楽が止まった。あの時、約束したんだ。もう二度と、仲間を失わないって。」

リンが目を見開く。

「ミズキ…そんなこと、初めて聞いた。」

「言えなかったんだ。」

ミズキの声が、かすかに震える。

「前のバンド、情熱だけじゃ繋ぎ止められなかった。リンと一緒にドラムとベースでグルーヴ作って、初めて分かった。ネクターヴォウは、私の居場所なんだ。

アオイの歌声、カノンの言葉、ユイのメロディー、ヒナの笑顔…全部、私のグルーヴに響いてる。」

リンの緑の瞳が、涙で揺れる。

「…私もだ。前のバンド、魂をぶつけすぎて、仲間を見失った。」

彼女の声が、夕陽に響く。

「ネクターヴォウで、初めて分かったよ。

魂って、みんなで響き合うものなんだ。アオイの歌声、カノンの言葉、ユイちゃんのメロディー、ヒナの笑顔…全部、私のビートに響いてる。」

ミズキが頷く。

「だから、玲さんに伝えよう。リンのビート、私のグルーヴ、魂のまま『灰の果ての光』を光らせるって。」

リンがミズキの手を握り返す。

「…怖いけど、やってみる。前のバンドの灰、ネクターヴォウで光に変えるよ。魂、絶対削らない。」 ミズキが微笑む。

「一緒に叩こう。私のグルーヴ、リンのビート、ネクターヴォウの魂だ。」

夕陽が、二人の日常的な姿を照らす。

リンの力強いビートとミズキのグルーヴィーなベースが、心の中で高鳴る。

「灰の果ての光」の未完成なメロディーが、二人をスタジオへと引き戻す準備を始める。



挿絵(By みてみん)

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