パート2:ヒナの告白
進学校の教室、放課後。
ヒナは窓際の席で、一人でノートを見つめる。
教科書の端に、誰かが書いた「暗い奴」「目立つな」の落書き。
廊下から同級生の笑い声が聞こえるけど、ヒナには関係ない。
(私、いつもこう。教室の隅で、息を潜めて。
進学校って、みんなキラキラしてるのに、
私だけ…影みたい。)
ヒナはペンを握り、ノートにギターのコードを書き殴る。
「永遠の風」のアルペジオを思い出しながら、
少しだけ心が軽くなる。
でも、隣の席の女子がチラッと見て、クスクス笑う。
「ヒナ、ギターばっかやって、勉強大丈夫?」
その声に、ヒナの胸が締め付けられる。
(勉強、頑張ってるよ。
でも、どんなに頑張っても、
「暗い」「変な奴」ってレッテル貼られる。
私、ただ…音楽が好きなだけなのに。)
ヒナはノートを閉じ、俯く。
(NectarVowのみんなには、こんな私、
知られたくないな…。)
スタジオ。
練習開始時刻を少し過ぎ、ヒナが息を切らして駆け込んでくる。
ギターケースを背負い、制服のネクタイが乱れている。
「すみませんでした…! 遅れて…。」
ヒナの声は震え、敬語がいつもより硬い。 カノンがギターを手に、明るく振り返る。
「ヒナちゃん! 大丈夫、学校お疲れ様!
さあ、『永遠の風』やろう!」
でも、ユイがキーボードの前で眉を寄せる。
「ヒナちゃん、なんか…元気ない?」
ヒナが慌てて笑顔を作る。
「いえ、大丈夫です…! すみませんでした…。」
リンがドラムスティックを置いて、ヒナに近づく。
「ヒナ、目、ちょっと赤いよ。
なんかあった? 話してみなよ。」
ヒナがギターケースを握りしめ、俯く。
「本当に…大丈夫です…。
リンさん、心配かけて、すみません…。」
アオイが冷静に、でも優しく言う。
「ヒナ、ここは君の居場所だよ。
隠さなくていい。話したいなら、聴くよ。」
ヒナの肩が震え始める。
(隠したい。
でも…この人たち、優しすぎる。
カノンさんの厳しさも、リンさんの笑顔も、
ユイさんの声も、ミヅキさんの冗談も…
全部、温かくて、怖いくらい。)
ヒナがぽつりと、独白が漏れ出す。
「私、学校で…あんまり上手くいかなくて。
みんな、頭よくて、キラキラしてて。
でも私は…暗いって、変な奴って、
いつも笑われる。
教科書に落書きされたり、
『ギターばっかやってんな』って、
陰で言われる。
勉強、頑張ってるのに、
どんなに頑張っても、
私、いつも一人なんだ。」
スタジオが静まり返る。
ヒナが慌てて顔を上げ、敬語で続ける。
「ご、ごめんなさい…!
こんな話、皆さんに…関係ないですよね…。
忘れてください…!」
リンが一瞬でヒナの前に立ち、強く抱きしめる。
「ヒナ、謝らなくていい!
そんな奴ら、許さないよ!
ヒナがどんなに頑張ってるか、
私が一番知ってる!」
ヒナがリンの腕の中で小さく震える。
「リンさん…ありがとう、ございます…。」
ユイが目を潤ませ、ヒナの手を握る。
「ヒナちゃん、私も…昔、
ピアノばっかりやってて、
『変わってる』って言われたことある。
ヒナちゃんの気持ち、すっごくわかるよ。
でも、ヒナちゃんのギター、
私、大好きだよ。」
ヒナがユイを見て、涙目で。
「ユイさん…ありがとう、ございます…。」
ミヅキがベースを置いて、ニヤリと笑う。
「ヒナ、めっちゃわかるよ、
そういうバカな奴らのこと。
私もさ、小悪魔キャラで行く前、
いじられたことあるもん。
でもさ、ヒナのギター、めっちゃカッコいいよ!
次のライブで、そいつら黙らせちゃおうよ!」
ヒナが驚いた顔で。
「ミヅキさん…ありがとう、ございます…。」
カノンがギターを肩にかけ、真剣な目で言う。
「ヒナ、聞いて。
『永遠の風』、ヒナの音がなかったら、
あの力強さ、出なかったよ。
学校の奴らの言葉、全部ゴミ!
ヒナの音楽、めっちゃすごいんだから!」
ヒナがカノンを見て、涙がこぼれる。
「カノンさん…ありがとう、ございます…。」
アオイが静かに近づき、ヒナの肩に手を置く。
「ヒナ、君の音は、NectarVowの魂だよ。
学校で何があっても、ここで、君は絶対一人じゃない。
そしてね…ここにいるメンバーは皆、過去に挫折を味わって集まった。だからみんなでヒナに寄り添うよ。」
ヒナが嗚咽を漏らし、
「皆さん…本当に、ありがとう、ございます…。
私、こんな優しい人たち、初めてで…。」 (この人たち、家族みたい。
私、こんな場所、初めて。
ギター、握っててよかった。
ここなら、私…変われるかもしれない。)
リンがヒナの頭を撫でる。
「ヒナ、つらいことあったら、
いつでもお姉さんに言って。絶対、守るから。」
ユイが微笑む。
「ヒナちゃん、私たち、
一緒にキラキラしようね。」
ミヅキがウィンク。
「ヒナ、次は敬語なしで話してよ~!
でも、頑張ってるヒナ、ほんと愛おしいよ!」
カノンが笑う。
「ヒナ、次の練習、
もっと魂ぶつけてこいよ!
約束な!」
ヒナが涙を拭い、力強く頷く。
「はい…皆さん、絶対、頑張ります…!
ありがとう、ございます…!」
スタジオに、メンバーたちの温かい笑顔が響き合う。
ヒナの心に、小さな光が灯り始める。




