パート3 スカウト
夕暮れの駅裏。
雑踏の中、ストリートの隅で一人の女子高生が演奏していた。
アコースティックギターの繊細な音色、透き通る歌声。 アオイとカノンは少し離れて立ち、じっと聴き入る。
「…優しい声だね。」
アオイが呟く。
「うん、ギターも丁寧。キーも正確だし。」
カノンが頷く。
周囲に聴衆はほとんどいない。
宣伝もせず、ただ静かに弾く彼女。
曲が終わり、ヒナがギターを下ろす。
アオイがタイミングを見計らい、近づく。
「すごい優しい曲だった。」
カノンが笑顔で続ける。
「キーもバッチリ! めっちゃいいよ!」
ヒナは驚いたように顔を上げ、小さな声で答える。
「…ありがとう、ございます。」
アオイが柔らかく微笑む。
「名前、教えてくれる?」
「陽菜、です。」
カノンが身を乗り出す。
「ヒナちゃん! 今度、うちのバンドの練習見に来ない?」
ヒナが目を丸くする。
「バンド…? え、でも…」
アオイが落ち着いた声で続ける。
「ひとりでギター弾くのも魅力的だけど、
みんなで音を重ねるのも楽しいよ。」
ヒナは困った顔で俯く。
「でも、えっと…私、バンドとか…」
カノンが笑って手を振る。
「大丈夫! 気が向いたらでいいから!
ほら、これ、スタジオの場所ね。」
アオイがユイが作ったGoogle Mapの印刷を渡す。
丁寧に折り畳まれた紙に、スタジオ場所にピンクのマーキング、住所と簡単なメッセージ。
「明日、ここに来てくれると嬉しいな。」
カノンがウィンクし、二人で笑顔でその場を去る。
ヒナは渡されたMapを手に、呆然と立ち尽くしていた。




