パート1 次のステップ
静かなカフェの片隅。
奏はテーブルの上にタブレットを置き、沙羅と向き合う。
いつもの軽やかな雰囲気は鳴りを潜め、真剣な眼差しだ。
「沙羅、ちょっと相談があるんだけど。」 沙羅はコーヒーを一口飲み、真面目モードに切り替わる。
「どうしたの? 」
奏はタブレットをスライドさせ、動画を再生する。
画面には、ストリートでアコースティックギターを弾く女子高生。
シンプルなコード進行、透き通るような声。
「この子、たまたま通りかかった道で演奏してて。
思わず動画撮っちゃったんだ。」
沙羅は眉を寄せ、動画に目を凝らす。
「ふむ。キー自体はありふれてるけど…
ギターの音に優しさがあるね。声も、透明感がすごい。」
奏が頷く。
「でしょ? NectarVowの音、もっと厚みが欲しいと思ってて。
この子なら、バンドに新しい色を加えられる気がする。」
沙羅が腕を組む。
「スカウトしたいってこと?」
「うん。絶対にこの子がいい。」
沙羅は立ち上がり、ジャケットを手に取る。
「わかった。私がスカウトしに行くよ。」
「待って、沙羅。」
奏が慌てて止める。
「今回はメンバーにスカウトに行ってほしいんだ。」 沙羅が怪訝な顔で振り返る。
「メンバーに? なんで?」
奏は微笑む。
「だって、バンドの絆って、そういうところから生まれるじゃん。
新しい仲間を迎えるなら、メンバー自身が動いた方がいい。」
沙羅は一瞬考え、頷く。
「…確かに。じゃあ、メンバーに話してみるよ。」




