第1話「伝説の魔法少女? 俺ですか?」
「愛と希望の煌めきを、その胸に! 魔法少女プリティ☆ルナ、参上!」
俺は決めポーズを取った。
鏡に映るのは、銀髪ツインテールの美少女──ではなく、魔法少女のコスプレをした俺。
「よし、今日も完璧!」
そう、俺は魔法少女ガチ勢のコスプレイヤーだ。
最高の出来栄えに満足しながら、イベントへ向かおうとした。
──その瞬間だった。
突如として、空が裂けるような轟音が響き渡る。
「うわっ、なんだ!?」
反射的に外を見ると、まばゆい光と共に何かが降ってきた。
ズドォォォォン!!!
衝撃が地面を揺らし、砂煙が駅前広場を包む。悲鳴とざわめきが広がる中、俺は目をこすりながら立ち上がった。
──そこにいたのは、青髪の少女だった。
白と青を基調とした魔法少女服を纏い、手には輝く杖を持っている。少女は真っ直ぐ俺を見つめ、息を呑んだ。
「……見つけた! 伝説の魔法少女さま!」
「は?」
突然の宣言に、思考が一瞬止まる。
「あなたがそうですね! 伝説の魔法少女、ルナ・セレスティアさま!」
「いや、俺ただのコスプレイヤーなんだけど?」
「そんなはずはありません! その衣装、完璧な魔力の波動、そして何より──その名乗り口上!」
「いやいや、これは俺のオリキャラなんだけど!?」
そもそも『魔法少女プリティ☆ルナ』は、俺が幼少期に考えたオリジナルの魔法少女だ。秘密のノートにストーリーを綴り、設定を詰め、落書き帳がルナ一色になるほど夢中になった。そして、その夢をコスプレという形で再現したのが、今日の姿なのだ。
なのに、この少女──いや、明らかに本物の魔法少女が俺を「伝説の魔法少女」だと断言している。
少女は感動に震えながら俺の手を握る。
「私は神楽坂ルミナ。ルナ様をお迎えに参りました!」
「いや、俺、天野春斗っていう普通の男なんだけど!?」
「伝説の魔法少女に性別は関係ありません!」
「いやいやいや! 絶対関係あるだろ!」
必死に否定するが、ルミナは感動で涙ぐんでいる。
「やっと……やっとお会いできました……!」
「泣くな! こっちが泣きたいわ!」
そして、追い打ちをかけるように──
「ふふふ……ついに見つけたぞ、伝説の魔法少女……!」
空間が裂け、闇のオーラを纏った黒髪の少女が現れた。
黒と金を基調としたゴシックドレス、長い黒髪をツインテールに結い、妖艶な赤い瞳が俺を射抜く。
「は? 誰?」
「私は夜月シエラ。お前を消すために来た!」
「消さないで!? 俺ただのコスプレイヤーだから!!!」
「言い訳は無駄よ! 受けなさい、闇の呪縛!」
シエラが黒い魔力を放つ。
──終わった。
俺の人生、ここで終了だ。
そう思った瞬間、反射的に手に持っていたおもちゃのステッキを振った。
すると──
「……きゃああああ!?」
闇の波動が弾かれ、逆にシエラへと跳ね返る。
「な、なんですって!?」
「いや、こっちのセリフなんだけど!?」
シエラは吹っ飛び、地面に転がる。
「さすがルナ様……!」
ルミナが感動のまなざしを向ける。
「だから違うって!!!」
こうして、俺は伝説の魔法少女として、魔法少女たちの戦いに巻き込まれていくのだった。
「俺の平和なオタクライフ返せえええ!!!」
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