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三夜一夜物語  作者: 黒潮 潤
第三夜 The fated night
7/29

1話

時刻は23時。人間は寝静まり、闇の世界に生きる者たちの時間だ。今日とて例外ではなく、人気のない森の中で人間に敵対する怪異との戦闘が行われている。もっとも、戦闘というよりは一方的な蹂躙というほうが正しい様相だが。


「今日の奴も大したことねえな。回し蹴り一発でダウンか。サクヤ、あとは頼んだぞ」


「おつかれさまでしたニュクス。あとは私に任せてください。…天におります我らが神よ。地上に残る悪しき魂を正しい場所までお導きください。悪霊退散!」


先祖代々言葉に特殊な力を持ち、詠唱により怪異を調伏させ続けてきたツキシマ家。そんなツキシマ家当主の娘であり期待のホープ、ツキシマ サクヤはいつもと変わらぬ落ち着いた表情で詠唱を唱える。


「ぐええええ。覚えていやがれ~」


彼女の詠唱を聞いた怪異は断末魔を残しながら消え去っていく。完全に消滅するまで、30秒とかからなかった。


「お前なんかのために脳みそ使うかっての。っとそんなことより。おつかれさんサクヤ」


180センチ程の長身に鋭い牙が特徴的な男、ニュクス。数千年の時を生きる吸血鬼である彼は、人間とは比較にならないほど高い戦闘能力を持ち、先ほどのような三下怪異の相手など朝飯前だ。調伏担当のサクヤ、近接戦闘担当のニュクス。息ぴったりのコンビネーションを発揮し、今日も任務をこなしていく。


「ニュクスのおかげですよ。…彼を救うことができなかったのは心残りですが」


「お前らしいっちゃお前らしいが、捨て台詞まで吐かれた相手にそう言えるのはさすがだな。まぁ今回はどうやっても無理だったと思うぜ、敵意むき出しだったしな。お前は悪くねぇよ。もう遅ぇ時間だしあまり気にせずに帰ろうぜ」


「ありがとうございます、次はこうならないことを祈るばかりです。お父様への報告もありますし今日は帰りましょうか」


怪異を調伏させ一段落着いた。夜も更け、日付が変わろうとしている時間帯。二人は帰路につくことだろう。


『ファントムハンター』。人間に迷惑をかける怪異を調伏し適切に祓ってやる職業。これはファントムハンターとして生きることを運命づけられたツキシマサクヤと、その運命に巻き込まれた吸血鬼ニュクスの物語。


***


「お父様、ただいま戻りました」


町のはずれにある大きな和風家屋。二人は、当主であるツキシマ カムイの待つツキシマ家の屋敷にたどり着いた。


「お疲れ様。今日の報告をお願いしてもいいかな」


柔和という言葉を体現するようなカムイに、今日の任務について洗いざらい報告する。


「特に問題はなかったみたいだね。君にとっては朝飯前だったかな」


「いいえ、私の力ではなくニュクスの力によるものです。私ではなくニュクスを褒めてあげてください」


「おいおいサクヤ、立ててくれるのは嬉しいけどよ。俺はチョイチョイっと戦っただけだぜ」


「まあニュクスもそう言わずに。こんな時は素直に受け取っていいんだよ。なにはともあれ、二人ともお疲れさまでした。あとはゆっくり休んでね」


当主カムイの言葉により、報告会は閉められる。時刻は丑の刻、もう朝も近い時間帯だ。夜通し戦い、眠気が襲ってきたサクヤは足早に部屋へと戻ろうとする。しかし…。


「…すまないサクヤ。これから部屋へ行っていいか?」


「もうその時期ですか…。分かりました。部屋で待っておりますので、準備ができ次第来てください」


二人の夜はまだ終わりそうにはない。

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