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三夜一夜物語  作者: 黒潮 潤
第二夜 ヨゾラと見るヨゾラ
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1話

(キョウ)ちゃん、おはよー! 一緒に学校行こ!」


「あぁ、おはよう。いつも思うが、月曜の朝一に、その挨拶ができるのがすげえよ」


「響ちゃんが元気なさすぎるだけだよ。元気な一日は元気な挨拶からなんだから!」


文月フミヅキ 夜空ヨゾラ星川ホシカワ 響夜キョウヤは家が隣同士にある、いわゆる幼馴染だ。ダンス部キャプテンで天真爛漫な夜空と、定期テスト学年1位で頭脳明晰な響夜。真逆の性格ながらも、ウマが合うのか高校2年生となる今に至るまで付き合いが続いている。ただ、男女交際の関係にあるわけではない。しかし…、


「おっ、夜空と星川くんじゃん。おはよ~。今日も一緒に登校? さっさと付き合っちゃいなよ」


「七海~、そういうのじゃないから。私と響ちゃんはただの幼馴染だから」


「そうだな。切りたくても切れない腐れ縁みたいなもんだ」


客観的に見れば、誰が見たって恋人の距離感だ。登校中に偶然出会ったダンス部員、青葉七海も同じように思っているだろう。


「まぁ、そういうことにしておきましょうかね。…あっ、そうそう。今日から延長練習で20時までだったっけ? 昨日のミーティングで言ってくれてたと思うんだけど」


「うん、20時までで間違いないよ」


ダンス部員二人が部活の話をしている。彼女たちの話によると、普段より1時間長く練習できる延長練習が今日から始まるようだ。


「延長練習? ダンス部で何かあるのか?」


「あれ、響ちゃんに言ってなかったっけ? 実は、次の土曜日にある花火大会で、ステージに立たせてもらえることになったの! 花火があがる前の盛り上げ役としてね。その最後の追い込みだよ。だから、今日から金曜日まで延長練習の予定なの」


「なるほど、ここの花火大会って結構規模がデカいから失敗できねえな」


「そうなの。だから最後の1週間は必至で頑張らないと!」


近況を話しながら歩みを進める三人。話も盛り上がり、気付いたころには学校までたどり着いていた。


「じゃあ私たちこっちだから。放課後まで夜空をお借りするね。バイバイ星川くん!」


「もう…、七海ったら」


「じゃあな、夜空、青葉さん」


成績上位クラスの響夜と成績中堅クラスの女性陣は各々の教室へと向かう。朝こそドタバタしていたが、教室に到着してからはいつも通りの日常が過ぎていく。変わらぬ日常を満喫していると、気付いたころには放課後開始を告げるチャイムが鳴り響いていた。


「部活の時間だー!」


「ちょっと、夜空。待ちなさい~」


ダッシュで、いや早歩きで体育館へと向かう夜空。そんなキャプテンを追いかけるように体育館へ足音が集結してくる。ダンス部の練習が始まるまで、そう時間はかからなかった。


「じゃあ、今日の練習始めるよー。まずはストレッチから。ステージ発表も近いから怪我しないようにね。このストレッチが一番大事な練習だといっても過言じゃないんだから」


キャプテンらしく部員を導く夜空。彼女の言葉によると、今日のメニューは、ストレッチ、基礎練習、そしてトリを飾る大技の練習のようだ。同じ目標に向かって必死に努力するダンス部員。ストレッチと基礎練習は問題なく取り組むことができた。


「最後に大技の練習に移ります。今日こそは成功させるよ!」


今日の練習も終わりが見えてきたころ、トリを飾る大切な大技、バスケットトスの練習が始まる。もちろん、宙を舞うのはキャプテンである文月夜空だ。


「じゃあ、いくよ! せーのっ」


夜空の威勢のいい掛け声があるためか、スタートは綺麗に揃う。しかし、最後の着地が美しく決まらない。何度もトライしたが、今日も成功することはなかった。


「今日はみんな疲れてきてるから明日にしよう。休むのも練習だからしっかり休んでね」


キャプテンとして解散の挨拶をする夜空。最後の戸締りをして彼女も帰路に就く。今日もまた、大技が成功しなかった不安感からか、目線は下を向き、足取りも重い。そんな彼女は、自身に向けられている視線があることなど気が付かないだろう。


「いつもと雰囲気が違うな…。あの感じの夜空はロクでもない方向にしか思考が向かないぞ。ちょっとケアしてやらねえとな。まぁ、早めにあの状態の夜空を見つけられたなら、難問にブチ当たって遅い時間まで勉強した甲斐があったか」

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