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第七話 好きな相手は?

『聖月です。今日はほんとにありがとうございました。悠雅さんはあの後大丈夫でしたか?』


 家に帰ると聖月さんからメッセージが届いていた。


「1曲歌わされたけど、その後は聞いてるだけだったから大丈夫だったよ」


『明日、鞄の中に小説の続き入れておくので、月菜に聞いてみてくださいね』


 陽向さんに話しかけるのは少し抵抗があるが、せっかくの申し出なので聞いてみる事にしよう。OKと書かれたスタンプを送っておく。


『今少しお時間大丈夫ですか?』


「大丈夫だけど。どうしたの?」


 少し間が空いて返事が返ってきた。


『いや、やっぱり大丈夫です』


 何か用事があったのかな?



 陽向さんのおかげで無事に社会科学習のレポートの提出もでき、新年度からのバタバタした毎日も一息つくことができた。


「ねぇねぇ、今度放課後にグループで打ち上げしようよ」


「お、いいねぇ。どこ行くー?」


 朝登校した後、貴之と喋っていると梨愛がやってきた。打ち上げってこの前のカラオケがそんな感じだったと思うけどまたするのか。


 カラオケは結局あの後みんな盛り上がり、3時間くらい歌い続けていた。


 自分が歌うのは苦手だが他のみんなは歌も上手かったし、聴いてるのは楽しかった。


「前のカラオケは中心だった陽向さんが途中で帰っちゃったでしょ? だから改めてみんなで集まって打ち上げみたいなのをしたいなと思って」


「まぁいいけどどこでするんだ?」


「それなんだよねぇ……。人数も多いから悩んでるんだ」


「梨愛ちゃん、それってお店じゃなくても場所があればいいんだよね?」


 貴之は俺の方をチラチラと見ながら梨愛に聞いている。まさか……? すごく嫌な予感がする。


「却下!」


「おいおい、悠雅、まだ何も言ってないだろ? って事で悠雅の家でするのはどう?」


「ゆーくんの家?」


「あぁ、今こいつの家、両親が海外出張中で誰もいないらしいんだよ」


「え? そうだったの?」


 机に手をつき、身を乗り出してくる梨愛。顔が近い……。


「却下!」


「そっかぁ、じゃあ女子も多いし料理できる子もいるしホームパーティみたいな感じでみんなで料理を作るのもいいね! どうせなら休みの日にするのがいいかも……。GW中でみんなの都合が合う日にしよっか!」


 家主の俺が却下って言ったのが聞こえなかったのかな? 梨愛の中でどんどん話が進んでいっている。


 その後、制止する言葉も聞かず、梨愛はグループメンバーの予定を聞き出すと打ち上げと言う名のホームパーティの日程を5月3日に決めてしまった。



 ホームパーティーの前日、真吾と貴之が泊まりに来た。こいつらは掃除要員だ。家の掃除を手伝ってもらう事になっている。貴之のおかげで俺の家で打ち上げをする事になったので、責任を取ってそれくらいはしてもらう。


 全く掃除をしないという訳ではないが、ご飯を食べる時以外は基本自分の部屋にいる事が多いので、リビングやキッチンの掃除はおざなりになる。それに猫を飼っているので猫の抜け毛がなかなかの強敵だ。コロコロ万歳。


 明日は女性陣がキッチンを使う予定だし、メイン会場? であるリビングも綺麗にしておかなければいけない。


「一人暮らししてどれくらいだっけ?」


 真吾にはリビングで拭き掃除をしてもらっている。


「1月からだから4ヶ月くらいかな」


 両親は1月から1年間の予定で海外出張している。俺は高校もあるので一人で日本に残る事になった。


 一人暮らしを始めて一番困ったのはやはり食事だ。何度か自炊をしようとしたが、一つの料理を作るのにかなり時間がかかるし、食材の余りも何に使えばいいかわからないので駄目にしてしまう。


 両親からは毎日外食したり出前を取っても問題ないくらいのお金をもらっているので外食、出前、コンビニ弁当が俺の主食だ。だが毎日これだと流石に飽きてくるし、手料理が恋しくなってくる。


「それにしては意外と綺麗だよな」


 貴之にはキッチンの掃除をしてもらっている。俺は玄関やトイレといった部分の掃除だ。


「明日は女子達の手料理が食べられるのかぁ、楽しみだなぁ。あの陽向さんの料理も食べられるとかもう死んでもいいかも」


 母親の料理ではないとは言え、久々の手料理というのは俺も楽しみだ。ホームパーティらしいので和食は出ないだろうけど。でも料理を食べたくらいで死にたくはない。

 


 掃除を終えた俺達は近くのファミレスにご飯を食べに来ていた。


「梨愛がメッセで明日何が食べたい? って言ってるけど食べたいものある?」


「そうだなぁ、から揚げとかピザとか……、あとはハンバーグとか?」


 ハンバーグを食べながら貴之が答える。今日ハンバーグ食べて明日も食べたいのか。どんだけハンバーグが好きなんだ。


「俺は春巻きとかグラタンとか。あと寿司とかも食いたいな」


 とりあえず二人から出た意見を梨愛に送っておいた。明日、女子グループは近くのスーパーで買い物をしてからうちに来るらしい。


「お前ほんと梨愛ちゃんと仲いいのな。付き合ったりはしないのか? あんなに可愛いのに勿体ない」


「いやいやいや、梨愛はただの腐れ縁で仲良くしているだけだし、大体俺と梨愛なんて釣りあいが取れないだろ。俺はモブだぞ、モブ」


「まぁ、お前がそう言うなら別にいいんだけどな。もしかして他に好きな女の子とかいたりするの?」


 好きな女の子ねぇ……。あまりそういう事考えた事なかったな。いや、もちろん年頃の男子だし、女の子と付き合いたいとか、もちろんエッチな事もしたいという欲はあるが、好きな子となると思い浮かばない。


「……特にいないな。そういう真吾は好きな子とかいるのか?」


「ゴホッ、ゴホッ……」


 質問をそのまま投げ返すとステーキを食べていた真吾がむせる。


「陽向さんや梨愛ちゃんは高嶺の花だからまぁ無理として、実際に好きな子となると……」


 言いながら真吾は耳を赤くしている。好きな女の子がいるらしい。


「俺は梨愛ちゃんが好きだ」


 …………え? まだ聞かれてもないのに答えたのは貴之。


「悠雅は梨愛ちゃんの事なんとも思ってないんだろ? だったら俺が梨愛ちゃんを好きでも問題ないよな」


「あ……あぁ、俺は梨愛の事は好きな訳でもないし別に構わないけど。貴之は梨愛の事が好きだったんだ?」


 全然気づかなかった……。でも梨愛も男子からはかなり人気のはずなので貴之が梨愛の事を好きでもおかしくない。


「悠雅に遠慮してた部分はあるけど悠雅の気持ちを知る事ができたからこれからはガンガン行こうと思う」

 

 真面目な顔して宣言する貴之。いつもの言動は少しチャラいが本気のようだ。


 確かに顔は可愛いし、胸も大きくてスタイルいいし、みんなに優しくて明るくて性格もいいし……。こう考えるとモテて当然なんだよな。


 高校に入ってからは中学の頃はめちゃくちゃ告白されたようだし。でもことごとく断ったって言ってたからなぁ……。そのくせ彼氏欲しいとか言ってたけど、どんな相手を求めてるんだろう? 中学で一番人気のあった爽やかイケメンのサッカー部先輩も振ってたみたいだし、めちゃくちゃハードルが高い気がする。


「それで真吾は? 誰の事が好きなんだよ」


 気がつくと貴之が真吾に詰め寄っていた。俺も親友としては真吾の好きな相手は非常に気になる。


「…………来海(くるみ)ちゃんだよ」


 貴之に詰められて観念した真吾。


 えっと、来海……来海……。誰だっけ?


「来海ちゃんって望月(もちづき)来海(くるみ)の事か?」


 貴之はすぐにわかったようだ。望月さんなら分かる。陽向さんと仲がよくて今回同じグループのショートカットの女の子だ。


「あぁ、取材の時同じグループでさ、前から可愛いなとは思ってたんだけど……」


「胸も大きいし? 真吾は巨乳好きだもんなぁ」


 確かに望月さんは胸が大きかった気がする。


「違う違う、胸は関係ない! よく気が利くし、実はゲームやアニメも好きだったみたいで話も合うし……。いや、それよりも悠雅はほんとに好きな子とかいないのかよ。俺達二人共言ったんだからお前も言えよ!?」


「いや、ほんとに好きな子とかいないんだよ。いたら言ってるって!」


 それにしてもファミレスで3人集まって恋バナしてるとか女子みたいだな。

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