第二十八話 華月の登校
昨日予約投稿で執筆途中の物を投稿してしまいました。
追記して再投稿します。
華月ちゃんの思わぬ発言に一気に目が覚めた。
昨日の学校に行くという発言、諦めたのかと思っていたがどうやら諦めていなかったようだ。
「おにーちゃん早く起きて! 朝ごはん食べて学校行こ!」
「あ、あぁ……。起きてるけど……」
着替えたらリビングに行くからと言ってとりあえず服を着替えながら頭の中を整理する。
菜月さん達ならともかく華月ちゃんが月菜さんの代わりをするのは無理があると思うんだけど。
トーストと目玉焼きという簡単な朝食を用意して二人で食べる。
「本当に行くのか?」
「うん。おにーちゃんさっきから何度も同じ事聞いてるよ?」
「大丈夫なのか? 月菜さんと華月ちゃんって話し方も性格も全く違うぞ?」
「そりゃそうだよ。華月は華月なんだから。あ、でも学校ではちゃんと月菜って呼んでよ?」
「いやいや、名前呼び捨てとかありえないし。普段学校では陽向さんって呼んでるし」
「ふーん。そうなんだ。月菜ちゃんとおにーちゃんって付き合ってるのかと思ってた」
華月ちゃんはムスっとしてつまんないと言いながらトーストを口に入れている。
「あ、じゃあ菜月お姉ちゃんと付き合ってるとか!?」
「なぜそこで菜月さんが出てくるんだ?」
「違うの?」
華月ちゃんは訳がわからないという感じで首を傾げているが、こちらのほうが理解不能だ。
それはいいとして学校に行くとなるといろいろと注意しておかないといけない。
「そんな事よりも華月ちゃんも間違っても俺の事をおにーちゃんとか呼んだらダメだよ? いや、むしろ学校で俺に話しかけるのは禁止」
「え……? 呼び方はわかったけど話しかけるのも駄目なの!?」
「あぁ、基本的に月菜さんと俺が学校で話をするのって学校行事に関する事くらいだからな」
「どうして学校では話をしないの? 学校の外では普通に話してるよね?」
月菜さんとは家に行ったりデート? までしてるような仲だが、基本的に学校で話をする事はない。モブな俺が学校一の美少女である月菜さんと仲良く話をするというのはありえない事だ。
「月菜さんと俺では釣り合いがとれないというか、相応しくないというか……。とにかく俺なんかと話をしてたら月菜さんに迷惑がかかるんだよ」
「釣り合い? 相応しくない? 迷惑??」
俺の言った事を反復して考え込んでいる。十歳の華月ちゃんには難しかったかな? 小学生の頃にはそこまで考える事もなかったが中学に入った頃からそういう事を考えるようになった。
モブはモブらしく、身の程をわきまえて学校生活を送る。
「まぁとにかく。学校ではきっと月菜さんの友達が話しかけてくるはずだからその人達と仲良くしてればいいから」
「よくわかんないけどおにーちゃんの言う通りにするよ」
華月ちゃんの顔はとても寂し気だった。
学校までの道のりもわからないようなので一緒に行く事にする。
元々同じ沿線なので、電車が同じになったとしても珍しくないと判断しての事だ。
美しい銀髪に加えてその容姿のおかげで常に注目を浴びている為同じ学校の生徒に見られる恐れもある為、近くにはいるものの極力会話をしないようにしている。
「あ! 月菜ちゃんおはよう! もう体調はよくなったの??」
学校近くの駅で話しかけてきたのは濱本さん。お下げに眼鏡という真面目そうな女の子だ。月菜さんと仲のいい女の子で社会科学習のときにも月菜さんグループに入っていたので面識がある。
「お、おはよう……」
華月ちゃんはかなり挙動不審だ。自分は全く知らない人がいきなり腕に抱きついてきて親しげに話されると普通はそうなるよな。
「えっと……、まだ身体は怠いんだけど熱とかは下がったから……」
体調はまだ完全に治っていないと言うように言っておいたが、その通りに答えてくれているようだ。やっぱり学校に来るのは無理だとなったら早退する事もできるし、普段の月菜さんとの違いも少しくらいなら体調が悪かったからと言い訳ができる。
二人は並んで学校に向かって歩き出したのであとは華月ちゃんがボロを出さないように祈るだけだ。
華月ちゃんが教室に入るとすぐに女子達に囲まれていた。男子達はその様子をチラチラと遠目から見ているだけだ。月菜さんが体調を崩していた事を心配していたのだろうが、流石に話しかけに行けるような勇者はいないようだ。
「あれ? 月菜ちゃん元気になったんだねー」
「みたいだな」
女子達の輪に入る事なく俺に話しかけてきたのは梨愛だ。月菜さんと仲良くなっていたと思うのだが、行かなくていいのだろうか?
「ね、ゆーくん、今日放課後時間ある?」
予定はもちろんないが、流石に華月ちゃんを一人で帰す訳にも行かないし一人にする訳にもいかない。そう思いながら華月ちゃんを見ると、友達に囲まれながらこちらを見ていた華月ちゃんと目が合った。
「今日は早く家に帰らないといけないんだ」
「あら、そうなんだ? じゃあ一緒に帰ろ」
さっきの断り方だと一緒に帰るのまではさすがに断れない。
仕方なくOKすると、「じゃあまた後でね」と席に戻る梨愛を見ながら、貴之がまだ登校していない事には安堵したもののしまったなぁと思う気持ちのほうが大きかった。
今回で年内最後の更新になると思います。
年明けからはもう少しペースを上げていけるかと思います。
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