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第十四話 待ち合わせ

 待ち合わせは動物園近くの駅に9時半。家からは1時間もかからないので7時半にアラームをセットしていたのだが、目が覚めたのは5時半だった。


 二度寝をしようと思ったのだが、妙に目が冴えてしまっていた。


 動物園が楽しみで早くに目覚めるとか遠足の日の小学生かよ。


 だが俺にとっては生まれて初めてのデートだ。しかも相手はあの月菜さんだ。平常心でいられる奴なんかいないだろう。


 スタイル抜群で銀髪、顔のパーツは整っており。まるで二次元の世界から出てきたのかと思うほどの美少女。ルックスだけならドストライクなのだが、全てが完璧すぎる上に感情の起伏があまり感じられず、あの喋り方も苦手だった。


 月菜さんの秘密を知る事になり、少ないながらも二人で話をする機会があり、月菜さんも完璧じゃない普通の女の子なんだと認識するようになり、苦手だという意識も薄れている。


 昨日の夜何度も確認していた動物園に関するサイトを眺めながらベッドの中でいろいろと考えていた。


 結局待ち合わせの駅に着いたのは9時前。少し早過ぎたかなと思いながら待ち合わせ場所である駅前の広場に向かうと出口正面の一番目立つ所に一番目立つ髪色の月菜さんが立っていた。


 デニムパンツにグレーのパーカーというカジュアルな服装。長い髪の毛はポニーテールに纏められている。動物園の開園までには少し時間があるので人は少なかったが、月菜さんの周りだけ明らかにスペースが空いていた。


 ここからだと広場にいる男性も女性も遠巻きにして月菜さんをチラチラと見ているのがわかる。


 この注目されている状況で話しかけるのは少し勇気がいるがそのまま待たせる訳にもいかないので月菜さんの元に向かう事にした。


「月菜さん!」


 声をかけると立ったままスマホを眺めていた月菜さんが俺に気付く。


「夏目君、おはよう」


「ごめん、待ったかな?」


「まだ待ち合わせの時間じゃないし気にしなくて大丈夫よ。私が早く着いただけだし」


 確かにまだ待ち合わせの時間にはなっていないが、待たせてしまった事に対しては少し申し訳ない。


 でも今のやりとりで月菜さんだという事は分かったので安心した。もし他の人格が出てきてたら月菜さんを動物園に連れていくという計画がパーだ。


「昨日買った服着てきたのね、似合ってるわよ」


 俺の上から下までを眺めると、そんな感想を口にしていた。


 昨日ショッピングモールで服を買おうと思ったのは今日に備えてだ。昨日も月菜さんと一緒に歩いていると周りの人達にジロジロと見られていた。学年一の美少女とモブの俺ではどう考えても釣り合っていない。


 俺自身は今更どうしようもないので服だけでもどうにかしないと月菜さんに迷惑がかかると思って服を購入しようと思った次第だ。今日のコーデは唯一月菜さんがいいと思うと言ってくれた組み合わせだ。


「ありがとう。その……月菜さんもすごく似合ってる」


「そう? ありがと」


 しまった。昨日のシミュレーションでは会ったときに服装を褒めるというのを決めていたのだが、月菜さんに先を越されてしまった。


 さて、動物園が開園する9時半までは少し時間があるがどうする? 選択肢は二つ。動物園に向かうかこの辺りで時間を潰すか。動物園までは歩いて10分程度なので今から向かっても向こうで待たないといけない。この辺りは駅前なのでお店はあるが開園までの時間は中途半端なのでお店に入ってもゆっくりするような時間はない。


「動物園がオープンするまで少し時間あるしその辺りのお店に入る?」


「連休最終日だし、人が多いとチケットを買うにも時間かかりそうだし、向こうで待ちましょう」


 開園時間に多少遅れてもいいだろうと思って提案した俺の選択はあっさりと却下されてしまった。


 昨日の夜いろいろと考えていたにも関わらず待ち合わせで先を越され、服装を褒めるのを忘れ、待ち時間の潰し方を間違えて、ここまでいい所がない。ここからなんとか挽回したい所だ。


「そうだね、じゃあ行こうか」


 動物園に向かっているであろう人達の流れに乗って二人で動物園に向かう。歩いていても周りの人々の注目を集める月菜さん。本人は慣れているようだが一緒に歩く俺に向かって妬みや奇異の目で見る人達も多いがあまり気にしないようにした。学校で梨愛と一緒にいるとたまにそういう目線を向けられるので俺も慣れていたりはする。


 早めに到着していたおかげであまり待つこともなく入園する事ができた。


「月菜さんはどの動物が見てみたいとかあるの?」


 案内パンフレットを見ながら二人で歩く。


「そうね、気になったのはカピバラ、アルパカ、ナマケモノかしら」


 象やキリン、猛獣等メジャーな動物ではなく、以外とマニアックな所が好みのようだ。たしかにどれも可愛い動物だとは思うけど。


「じゃあこっちのルートから行こうか」

 

 カピバラとアルパカが同じ方角にいるようなのでまずはそちらに向かうことにした。


 もちろん途中の動物たちもじっくりと観察しながら向かう。月菜さんは興味深い様子で動物を観察した後、スマホで写真を撮ったりしている。動物と一緒に撮ろうか? と聞いてみたが、動物だけを収めたいと言っていた。


 月菜さんが特に興味を示したのはダチョウ。テレビか何かでダチョウに乗っている人を見た事があるらしく、ダチョウをずっと眺めながら乗ってみたいと呪文のように言っていた。この動物園は動物と触れ合えたりエサをあげたりできるのが特徴なのだが流石にダチョウに乗る事はできなかった。


 そうしてゆっくりと進んでいると月菜さんのお目当てのカピバラがいる所にたどり着いた。


 なんとここではカピバラと直接触れ合えるらしい。ふれあいコーナーの看板を見た瞬間月菜さんは速足でそちらに向かい、順番待ちに並んでいた。


「カピバラと触れ合うの楽しみだったの?」


 急いで月菜さんの隣に並び、聞いてみると少し恥ずかしそうに頬を染めながら「そうね」という返事。


 子供達に混じり、カピバラにご飯をあげ、撫でている月菜さん。幸せそうに微笑んでいる姿に俺はもちろん周りの人々も心を奪われてしまっている。カピバラと一緒に写真を撮ろうか? と聞くと是非お願いと言われたので沢山撮ってあげるとさらに素敵な笑顔を見ることができた。

お読みいただきありがとうございます。

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