誕生日を呪い続けるばけもの
あるとこに、ばけものがいた。
星の紋章を手につけた、ばけものが。
ばけものは不死。
何があっても死なない。
だから、長い時間ずっと生きていた。
ばけものはかつて人間だった。
けれどその時の記憶はすっからかん。
唯一おぼえているのが、誕生日が嫌いだということ。
だから、毎日誰かが生まれたり、祝われたりするこの世界のなかで。
ばけものは誕生日を呪い続けていた。
すると呪いは強まり、人々にかかりはじめる。
その力の影響で、誰かが生まれてくると、つながった運命の相手が必ず死ぬようになった。
それは最愛の相手になるはずの存在だったり、唯一無二の友になるはずの存在だったり。
ばけものに誕生日を呪われた人たちは、生まれるたびに未来に絆を育むはずだった存在……かけがえのない人たちをなくしていった。
それで怖くなったその世界の人たちは、悲しみを和らげるために臆病になって、少しずつ人との関わりを絶っていった。
人は孤独になり、誕生日を祝う習慣も消滅していった。
ばけものは喜んだ。
誕生日が祝われることのない、その世界を。