2つの【思い】中学3年 10.11月
中学3年最後の大行事「学園祭」その中で、瑞稀はどう変わっていくのか。少しイラッとするかも知れません笑
ですが最後まで読んでいただけると幸いです!
10月、それは秋も真っ盛りというか、終わりも近い季節。この時期にやる行事といえば?
そう・・・・
「はい、じゃあ【学園祭】の当番決めていくぞ〜」
と、ロングホームルームで話し始めたのは、担任の白音凛子先生だ
「役職は1人最低1個な〜足りないところは重複してやっていいからね」
と、どんどん話が進んでいく、白根先生は一昨年から新任できた先生らしいが、もうベテランのようなかんじだ。
「そうだ、指揮者と伴奏者だけは先に決めておこうか、伴奏は去年もやった奏さんでいいかな?奏さんいい?」
「あっ、大丈夫です〜」
パチパチと決まったことに対して拍手する、奏さんは恥ずかしいのか少し俯いてた。
「次に指揮者だけど、誰か推薦とかやってみたいとかある?」
「はいっ」
「おっ、尾田やるのか?」
「いや、僕はやりたくないんですけど〜推薦で〜」
「瑞稀君が良いと思いま〜すww」
(え?)
「瑞稀君か〜」
(俺の名前?)
「瑞稀君はどう?」
「あ、えぇ〜っと」
言葉が詰まる、自分の名前が呼ばれるのを考えてなかった。
「みんなが良ければ別に良いですよ」
おぉ〜と周りから声が上がる、別にやる事は無駄な言い争いが始まるよりはいい。
「じゃあ、瑞稀君でいこうか、中心となって合唱をまとめていくように」
パチパチ、とクラスのみんなが拍手する。僕は『照れ笑い』した。
次の日から、すぐに合唱の練習始まった。うちの学園祭は、合唱コンクールが1番のメインでしかも自分らは3年生だから、より気合が入っている。特に入っているのは担任の白音先生だ、彼女はどんな行事でも全力で取りくむが、これまで全然賞を取れたことがないため、今回の学園祭により一層気合を入れているようだ。
「それじゃ今日は、練習の前に今回の目標を書いてもらうね〜」
と前から紙が配られてくる、行数がやけに多い。
「どんな合唱にしたいか、ラストどう終わりたいかとかを書いてね〜、あと全部埋めるんだよ」
クラス中からえぇ〜という声が聞こえる。
「良いから書くの!・・じゃあみんなが描いてる間に、瑞稀君ちょっと来て」
「はい」
名前を呼ばれた、合唱のことだろうか?そんなことを考えながら後をついていく。
着いたのは、だいぶ離れた空き教室だ。
「瑞稀君」
「はい」
「君を呼んだのは合唱について話したいからです」
「はい・」
「単刀直入に言うけど、君じゃ指揮者は務まらないと思う」
「はい・・?」
「君は宿題とかも出さない時があるし、テストの点もあんま高くない」
「君に任せるなら、尾田君にやってほしかった」
「・・・・」
「君に体育祭の団長を任せた時も3位しかとれなかったし・・」
「正直やらないで欲しかったんだよね」
「・・・・・」
「でもこれから宿題とか勉強とかちゃんとやるんだったら、私は任せてみてもいいかな〜
って思うんだけど」
「ちゃんとやる?」
「・・『はい』」
「そう、じゃあちゃんとやってね」
「はい」
「じゃあ戻ろうか」
「はい」
と空き教室を後にする、父と話すときのような変な感じがしたがいつもの事なので無視をした。
その後は、何事も無かったように時間は進んでいき、あっと言う間に下校時間になる。
今日はクラブチームの練習がないため、ゆっくり帰れる
「瑞稀帰ろうぜ」
「あぁ」
隣のクラスの花宮 悠木だ、こいつは小学の時から一緒だったから、よく一緒にかえっている。
「瑞稀指揮者なったんだろ?」
「そうだよ」
「体育祭の団長とき担任にあんなに言われてたのによくやるねぇ」
「なんか言われたっけ?」
「お前、なんで忘れてんだよww君の練習方法が悪かったとか散々いわれてたやん」
「あ〜・・なんかあったね笑笑」
「しかも今日も連れてかれたんだろwwまたなんかいわれたん?」
『・・なんだっけ?忘れた笑笑』
「お前忘れんの早すぎだろww」
「そうかな?笑」
「あっ、もう家じゃん・・・じゃあな!」
「じゃあな」
と返しまた歩き始める
「瑞稀!」
「なんかあったら言えよ!」
また何か前とは違った変な感じがしたが、また無視し
「あぁ」
とだけ返した。
学園祭2週間前、合唱の練習が始まった。うちの学級はよくある「男子〜ちゃんとやってよ〜」っていうのは起きない、ちゃんとやらないで怒られるのが本当にめんどくさいからだ。今日の一連の流れは決めてこいと言われたので決めてきていた。
「まずはパート練からやるんで、男子が教室、ソプラノが廊下、アルトが階段下でやってください」
「はーい」
みんなすぐに動いてくれるすぐに動いてくれないと俺が怒られるので助かる
「ちょと待って」
白音先生だ、まだ誰も何もしていないはずだが。
「ソプラノとアルトは教室、男子が階段下でやって」
「「「・・はい」」」
クラスの全員が声には出さないが、まぁそうなるだろうなという顔をする。
白音先生は基本的に女子優先である、東北の10月ってゆうともう大分寒くなっていて、廊下で練習するとなると体を動かすわけではないから本当に冷えるのだ。だから、女子は暖房の効いた教室、男子は廊下になるのだ。
嫌な顔はするが、文句は言わず廊下に出て練習を始める。指揮の練習をしつつ練習の統率をとる、去年は声は出ていたが音程が取れていなくてダメだったらしいので、今回は、
「まずは声小さくて良いから、音程取れるようにしよう」
「「「うっす」」」
というふうにやっていこうと思う、これで去年よりはマシになるだろう。
最後の学園祭くらい記憶に残るものになってほしい。
学園祭も間近になった頃、教室では怒号のような声が響いていた。
「男子声ちっちゃいって!あと少ししかないんだよ?ちゃんとやろうよ」
もう合唱は全体練習をメインにしている、今回は珍しく練習内容については本当に何も言われない、自分に対しても、宿題をちゃんと出しているし勉強もやっているので特に何も言われない。
だが、「また声ちっちゃいって!もっと自己主張していこうよ」
こういう声はずっと出ている。
「音程はいいからまずみんな声だそう」
という先生の言葉に対して1人の男子が
「でも去年音程が取れてなくてダメだったって講評を受けたので、音程をもっと意識した方が良いと思います」
と勇気ある声をあげた、が
「でも聞こえなきゃ意味ないでしょ?声出してから言いなさい」
と返されてしまった、正直声はもう十分以上に出ている、それどころか出過ぎて女子の声が消されている。
真ん中で聞いているのに男子のことを言いたすぎてそんなこともわからなくなっているのか、この人凄いなと本当に思ってしまった。
11月
結局最後まで同じような調子で、本番を迎えた。みんな不安そうな顔だ、まぁそれもしょうがないなと思う、「とうとう本番になりました、練習ではいろんなことを言ったりしましたが、ここで言えるのは頑張ってきなさいだけです、たくさん練習したんだから大丈夫」
とありきたりな事を言っていた気がする。そして今までは意識しなくても聞こえてた返事の声が今回は聞こえなかった気がした。
着々と時間は過ぎ、本番直前になった。先生とは別れ自分たちで話す。
「あんなこと言っても無理だろ、ろくに音程取れないじゃん」
「声デカすぎるのわかんないのかな?」
「てか1組うますぎね?やっぱちがうな〜」
という声ばかりだ、このままじゃまた全校の前で醜態を晒すだけだ
(それはなんかやだな)
「みんな集まって」
声が出た。
「男子は女子の声を聞きながら、音程取れるように意識しよう!
女子もできるだけカバーとかしてちょうだい!」
「でも声小さいと怒られんじゃね?」
「良いんだ、どうせよく頑張ったていうやろ、怒られて良いいからさ悔いの無いようにやろ!モヤモヤして終わるより良いだろ!」
本当に自然と声をかけていた、最後の学園祭を嫌な形で終わってほしく無い、そう思ったんだろう。
「そうだね」「うん」「いっか怒られてもww」とみんなが声を出していく、クラスのバラバラだった気持ちが一つにまとまった、そんな気がした。
「それでは、閉祭式を始めます」
ついに、閉祭式だ。合唱は中々に酷かった、でも良い合唱だった、みんなが人なの事を考え丁寧に歌っていた、発表が終わった後嫌そうな顔をしていた人はいなかったように感じる。
「結果発表、校長先生お願いします」
会場の雰囲気が緊張感のあるような雰囲気に変わる。
「まず、1年生の部の結果を・・・・・・」
どんどん進んでいく、辺りからは悲鳴とも取れるような歓声が響いている。
「次に3年生です」
一気にしんっ、と静かになる。
「優良賞・・ 4組」
呼ばれなかった、もし呼ばれるならここだろうと思っていたが・・ここで呼ばれないのなら大分厳しくなってくる、だがまだ分からない。
「優秀賞・・・ 1組」
辺りがざわつく
「1組が優秀賞⁉︎」「まじ!?」
そんな声が多く聞こえる、これはもしかしたらあるかもしれない。
最優秀賞が。
最有力の1組が出た今、本当にどこがくるか分からない。
もしかしたら、自分たちにわかんなかっただけでメチャクチャ良かったのかもしれない
「そして最優秀賞は・・・・ 」
一気にざわつきが収まる
ドクドクと心臓の音が聞こえるようだ
「・・・5組」
わぁっと湧き上がる
(そっか、取れなかったか)
でも、なぜかいつものようなモヤモヤはなかった、多分みんなもそうなんだろう、
いや、そうであって欲しい。
「最後に最優秀指揮者賞は・・」
「春野瑞稀」
「え?」
辺りが盛り上がる、「瑞稀やったやん!」「すげえな!」「吹部に勝ったぞお前‼︎」
正直、指揮者っていうのは望んでやった訳じゃなかったから、こんな賞があるのも忘れてた、だから周りではだれが指揮者をやる〜とかっていう話はどうでも良かった。
だから
「しゃああああああああああ!!!!」
この声が出ていることに自分でも驚いていた。
教室に戻ってからも、自分の心の中には久々に感じるような不思議な思いでいっぱいだった、これをどう表現すればいいかわからない。
「みんなお疲れ様」
白音先生だ
「良い合唱だった!今までで1番良かったよ!」
思った通りのことを言っていたと思う
「それで、審査員の講評もらってきたから読むね」
「お疲れ様でした、3組の合唱はみんながみんなの声を聞いていてとても想いがこもっている良い合唱でした、ですがもう少し『声が出ていたらよかったかな、』という事です」
あぁ声の大きさを気をつけようと思ったけど逆に小さすぎたんだな。
「やっぱり声の大きさだったね〜でもよかったよ!じゃあ今日はこれで終わりだから帰ってゆっくり休んでね」
「じゃあおわります!さようなら」
「「「さようなら」」」
長いようで短かった1ヶ月がおわった色々なことがあったが悪い形で終わったわけでは無いだろう。それよりもこの思いはなんなのだろう、昔によく感じていた気がするが、表現の仕方がわからない。
「瑞稀君」
名前を呼ばれた、振り返ると白音先生がいた
「はい」
「指揮者賞とれて【嬉しい】?」
うれしい?
嬉しい
そうか、これは嬉しいのか。でも、なんで久々に感じたんだろう。
嬉しいなんて『いつも感じているはずなのに』
「嬉しいです」
そうだ、嬉しい、嬉しいんだ、賞を取れたのが。
「そう、でもね」
「先生は後悔してる」
「・・・はい?」
「今回全体の賞を取れなかったのはね、練習のせいだと思うの」
・トク・・・
「最初から大きな声で歌う練習をしていれば、今回取れたと思うの」
トクッ・・
「だから最初から私が指示を出していれば良かったなぁって」
ドク・・
「なんなら、最初言ったみたいに尾田君に任せれば良かったかも」
ドク・ドクッ
「それが、今回の失敗だったかな」
と言い、教室をでていく。
なんでだろう、なんなんだろうこの思いは、嬉しいではない、ただ知っている、よく感じる変な感じだ、しかも今回は特に強く感じる。
「・・帰るか」
と前を見ると教卓の上に紙が置いてあった。
(忘れ物?)
見てみると、それは審査員の講評の文が書かれた物だった。
(声が小さいだけだったのかな?)
と思い、再度読んでみる、と
「え?」
思わず声が出てしまった、そこには。
「お疲れ様でした、3組の合唱はみんながみんなの声を聞いていてとても想いがこもっている良い合唱でした、ですが【全体的に音程が取れていない部分が多く、そういった思いっていうのが完璧に伝わってこず、そこが本当に勿体無いと感じました】」
さっきからずっと感じる変な思いが、さらに強くなっていくように感じた。
3章に続く
どうも桜宮夜です!
この傀儡に魂を2章どうだったでしょうか?
今となっては本当にやばい先生だったなって思ってます笑
本当にこんな感じだったんですよ!(ただうろ覚えの所も多い汗)
さて瑞稀がついに嬉しいという感情を覚えたというより思い出したのですが、まだなんで久々に感じたのかとかわかっていないので、この後の展開に期待ですね笑
中学編も早くも中盤、後2章で完結します!
最後まで読んでいただけると嬉しいです!