なんてレディに失礼な木ですこと
あれ?あ、でも私死ぬ?今落ちてるよね?落ちたあとのことは考えてないんだった。あー、ずっと目を閉じてたんだっけ…。私は恐る恐るまぶたを持ち上げてみた。
「き、きれい」
そこに広がっていたのはさっき見た時と差程変わらない地球ではもう見ることが叶わないであろう満天の星。左を見れば地球よりも少し青みが強く寒冷色にもかかわらず暖かみを感じる月。右を見ればこの鬱蒼とした森には不釣り合いな眩しいを通り越し神々しい太陽。なんて、なんて綺麗なんだろう。
また、生きてもいいのだろうか。こんな私が生きても、いいんだろうか。
多分なんとなくだが、ここは地球じゃない。もし、もし地球であったとしても日本ではない。日本にはあんな、あんな生き物いなかった、筈だ。奇妙な動きをする草のようなものに日本では見たことがないような大きさの鳥。実家で飼っていたチワワに似て異なる、ゲームとかではよくコボルト?と呼ばれている生き物だろうか…ただ、どうしようもなく怪しく光っていたあの赤い目が頭から離れない。
あぁ、そろそろ、そろそろ地面が近いのかもしれない。そんな気がする。木々の枝にぶつかりまくれば、ワンチャン生き延びられるだろうか。なるべく痛くなさそうな枝が沢山あったらいいな。こわいなぁ。こわいよ。はぁ。
自信なくなってきたけど…とりあえず頭守っとけばなんとかなるかな?はーあ、こわいなぁ。
横目に地上を見る。本当の本当にそろそろだ。
今!今だ!
たっくさん息を吸って、
吐く!!
「ふぅーーーーーーーーーーーーー!!」
当たるわ当たる枝、枝、枝。痛い。
「いっ、はぁぁ!ふぅーーーーーーーーーーーーー…!」
ちょっとスピード落ちてきたのかもしれない枝が目で追える。掴めるかな?いや掴めないと私折角スピード落としたのに死ぬよね?多分この木相当高いよね。大丈夫大丈夫私ならいける。いけるよね?行くしかないよね。集中しろ集中。沢山の枝が過ぎてく。沢山のチャンスが過ぎてく。兎に角、手を伸ばさなきゃ!今!
「ふんっっぬぅぅぅ!!!?つ、掴めたぁ!!」
ミシ…ミシミシミシィ…
嫌な予感がする
「私そんなに重いですかぁぁ!?」
そんな楽笑留の虚しい叫びは絶叫へと変わる。
「ぎィゃやぁぁぁああ!!!無理無理無理ぃぃぃ!!」
陽もそろそろ上り始めた頃、人なんて住めなそうな辺鄙な地で生きる変わり者は夜明け前から起きだし早朝には家を出、狩りをする。通りで知っている葉物や薬草を見つければ採る。日課だ。ただ、今日はどこかおかしかった。どこがかと聞かれたらなんとも言えないが、どこか、いつもと、森の様子が違う。なにかが、世界の何かが変わるそんな予感がした。
…訂正する。俺の世界はどちらかと言うと悪い面で変わったかもしれねぇ。やけにうるせぇ叫びが聞こえたもんで念の為確認しに来てみれば、呆れた事にこんな森の奥まで来た馬鹿もんがいるとは。いや、落ちたのか。この年で。そいつは妙に擦り切れてボロボロな見た事のない珍妙な服にこれまた珍妙な顔で泡を吹いて倒れていた。見なかったことにして帰っても良かったが流石に幼子をこのままにしておくのも俺の良心が傷んだ。
「はぁぁ。たく胸糞悪ぃ」
もしかしたら、ほんの少しだけ、俺も寂しかったのかもしれない。
「はっ!知らない、天井だ!!」
正直に言います…。言いたかった!!
あ、足音。ここは家?本当に知らない天井。言いたくて嘘ついた訳じゃないからね!あっ、ドアが開いた
「やっと起きたかよチビ」
おぉぉぉ!ワイルド!これぞワイルドー!なんか上半身服着てないし体にある無数の傷痕が俺は歴戦の剣士だぁ!と言った主張をしてきている。なるほど、こやつ……剣士だ!
ん?ち、び?
「チビ!!?」
「キィキィ喚くなチビ。水飲むか?あとそんな急に起き上がるな傷が開くぞ」
「あ、飲みます」
「おうよ」
素直に水を頂くと入ってきた時はやはり少しイラついていたのかその雰囲気が幾分和らいだ気がした。
それにしてもこのワイルドおやじこんな髭面で男臭そうなのにもしかして世話焼きか?仕方ねぇからその優しさに免じてチビは見逃してやるよばっきゃろー!おっと口調が移った。
「んんっ!水、ありがとうございます。えっと」
「俺ァガロンだ。ハイドロ崖の下に落ちてたのを見つけて連れてきちまったが、大丈夫だったか?」
あの崖ハイドロ崖って言うのか。名前のある崖って…相当だよなおい。本当に私よく無事だね。
「私は楽笑留です。助けて下さりありがとうございます!感謝こそすれ怒るだなんて、この恩どう返したらいいものか…」
「ラエルかいい名前だな。あぁいや恩だなんて、むしろなんで助けたんだって怒られる覚悟で嬢ちゃん助けたしよ」
「?なんで助けられたのに怒るんですか?」
「あぁ゛!?おめぇもしかして捨て子か!?いやにしても無知すぎる…嬢ちゃん、ハイドロ崖ってそもそも知ってるか?」
ガロンさんは急に怒鳴り体が震えていると次は人が変わったようにぼそぼそと早口で話し始めた。れ、歴戦の剣士やべぇ…頭になんも入ってこない。
「え、えっ…と…」
「あぁ、急に怒鳴ってすまん。あの崖は、と言うよりあの崖の上の森は死にたがりに有名な場所で度々人が死にに足を運ぶ場所なんでぇ、どうして嬢ちゃんみたいな子がと思ってついカッとなっちまった…わりぃ」
なんと、赤髪に赤褐色の綺麗な瞳、太陽でいい感じに黒く焼けた褐色肌で髭面だなんて言うワイルドの代表みたいな漢がぴえん顔してやがる。普通ならオッサンがキモイ顔してやがるって思うところなんだが…意外に似合ってるぞこのオッサン。
じゃなかった。どうして私が…か。
「…迷ってしまって。」
ついそう言ってしまったが、まぁ、嘘では無いかもしれない。世界をも超えた大迷子だよ!
「うーむ…。そうか。とりあえず傷が治るまではここにいたらいい。その後どうするかは決めたのか?」
多分気づいてる。気づかないわけないか。それでも触れないで少しの間ここに居させてくれると言う優しさがなんだかとても心に染みた。
「決めてないです…遠い、遠い場所から、気づいたらここにいて、なんにも、なんにも知らないんです。こんな私がここにいて迷惑じゃないでしょうか」
どうしようもなく声が震えてしまう。だめなのに。困らせるだけなのに。
「そうか、それはこわかったろうに。よく頑張ったな。」
ガロンさんはそう言って私の頭の上に手を乗せ、風貌にぴったりな雑さで、でも、とっても優しく私の頭を撫でていた。何が起こったのか、一瞬理解が追いつかなかったが理解した瞬間もう、ダメだった。
「が、ガロンさぁぁぁん!!っふっぐぅ…ズズッ…」
泣いた。それはもう泣き喚いてしまった。幼い子のように。恥ずかしい!
「ずびばしぇん…ズズズッーーッ!」
私の顔は今真っ赤な自信がある。
「よしよし!じゃあ今日からはここが第2の家だと思っていいぞ!俺もちょうど暇してたんだ。楽しくなるなァ!」
そう言ってガロンさんは豪快に笑う。
あれから1週間まず私は鏡を見て驚いた。言いたかないけど確かに、確かに前から私はチビだった。だがここまでとは…。どう考えても縮んでいる。と、いうか、若返った?いや、にしてはおかしい所が、前の私は髪の色も瞳の色も真っ真っ黒と真っが2回ついてしまう程の黒だったはずなのだ。それなのに、髪は雄黄。瞳の色は若緑。全っ然違う!むしろなんで今まで気づかなかったの!!?暗かったから?にしてもだよねぇ!まあそれは置いといて、全く髪色が違うからと言ってじゃあ転生?憑依?かって言われるとそれも違うっぽいというか…。全く一緒!という訳では無いけどどことなく面影があるというか、んーでも前より全然整ってます。ぶっちゃけ。だってなにより肌ツヤが違うもの。最高。もちもちですわ!これ自分でも自分の歳がわからない年齢不詳キャラ出来ちゃうけどいいのかな?聞かれたらなんて答えよう。あ、だからそれを含めてガロンさんには分からないって伝えてある。
まぁ、そんな不安も直ぐに解決するんだけどね。それもね!!凄いんだよ!この世界には!なんと!ななななんと!!魔法が存在します!ぱふぱふー!!落ち着けって?これが落ち着いてられるかって!魔法だよ!凄いじゃん凄すぎるじゃん!にやにやが止まんねぇなぁおい!あ、また脱線しちゃった!
んん!それでね!ゲームとかで言うステータス?みたいなのがこの世界にもあるって言うか、まぁ、ステータスって唱えたら出るとかそんな簡単なものじゃなくて、なんだろ、自分のなかと向き合うことで脳裏に浮かんでくるって言うか…慣れてないからかこれがまた難しくて私まだ見れてないんだ!残念!んー沢山大事なことざっと教えて貰ったんだけど後なんだろ…。まぁ!必要な時に都度都度思い出せばより定着するよね!じゃあ、いっか!うん!
楽笑留は思考を放棄しやがった。
ま!もう夜だから明日話すよ明日はね!なななんと!体の傷があらかた治ったから師匠、あ、ガロンね!にまずは体が動くようにの基礎とかほんの少し体力付けるために軽く家の周り歩き回るんだ!1週間ずっっとこの小屋の中に篭もりっぱなしだったから楽しみ!ってことでおやすみー!
「……スゥースゥー……むにゃむにゃ」
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