始まりの章 暗闇を走る者
街道とグローブの森の中間ぐらいまで移動したところで作戦会議とキャンプをする事になり、手分けして準備をし始めた。
レイがいつものように調理を初め、その間に馬車から天幕を張り男勢の寝床を作る、唯一の女性は馬車の中で寝ることが出来る。
料理が出来た頃合に皆が集まり始め、全員が着席したところで食事と作戦会議が始まった。
帝王熊と実際に対峙してわかったことだが、あれだけの威圧感に獣臭を漂わせているのに近付く町民など居ないだろうという事、他の町からの商人や旅人もわざわざ荒地を通ってまで森には近付かないだろうという事。
それに、もし縄張りの中に入ったとしたら怪我では済まないだろう。
「結局、怪我人なんて居ないって事かな」
「そうだな、今のところはな」
レイの問いにレオが答え、その含みのある答えに皆が反応する、
「ということは・・・」
「新人勇者が帝王熊に怪我をさせられました、って事にして俺たちの評判を落としたい奴等が居るんだろう」
レイが力強くテーブルを叩き核心を突いた、みなの顔に緊張が走る、
「俺の考え違いだったら良いんだけど・・・」
そう言ってレオは黙り込んだ、レイとカリスタは顔を見合わせ小声で相談し始める、ジェラルドは黙ったままだった。
太い薪が燃え尽き火花を散らしながら崩れ落ちて、新しく注ぎ足された薪が勢い良く燃え出したころ、レオが沈黙を破り口を開いた。
「一旦ウェイドに帰ろうか、もう一度町長に詳しく話を聞こう」
「それが一番無難かな、初めての依頼だから不手際が有っても可笑しくないし」
「その通り、町長に怒られたら謝っておくよ」
レオの言葉で会議は終わり、その後の食事の後片付けやらで眠りについたのは日付が変わる頃になった。
「明日の朝はパンにハムを乗せるだけの簡単なのにするか、出来るだけ早く町に着きたいし」
レイが焚き火に薪をくべながら呟く、睡魔が襲ってきてはいるがただならぬ気配に横になる気が起きない。
「森の方が騒がしいな、何か異変でも起きたのかな」
焚き火に照らされて揺らめく森から、黒い粒が飛び散っているのが見えた、
「あれは・・・まさか全部鳥か」
昼間見た光景と重なり背筋が寒くなる、左右に分かれた真ん中に騒動の主が居るのだろう、眼を凝らして暗闇を見つめていると騎馬が走って来るのが見えた、手にはロープを持って何かを引き摺っているようだ、その後ろに巨体を揺らしながら迫ってくるのが見える。
「まさか、そこまでやるのか」
レイはすぐさまみんなを起こし、走りくる騎馬を止めようと立ち塞がった。