始まりの章 レッドフォード孤児院
レッドフォード孤児院はメリガン城の城下町の端に位置していて、城外からも孤児を受け入れている、過去にも王家に仕えた者を何人も輩出していて、今、その名誉を一人の少女が授かった。
彼女の名はララ・レッドフォード、同期の子供たちの中でも一際輝く容姿と才能を持ち合わせ、第六皇女アニータ・メリガンから養子の申し出があった時には名前を聞くまでも無いほどだった。
8歳になる彼女には同時期に入所したとても仲の良い友人が2人居る、レオとレイ。
3人は自分たちの境遇を悲観することは無く、幼いながらも将来について明確な目標を持っていた。
それは勇者となって人々を助け、行く行くは平和な国を興したいと思っていた。
その第一歩とも言える第6皇女への養子縁組に3人はとても喜んだ。
それから2年の月日が流れ、第6皇女直属の勇者候補の募集が掛かり、ロレッタ・メリガンと名を変えたララの推薦も有りレオとレイは勇者候補生になることが出来た。
勇者の訓練は武器の扱いから魔法の習得、薬の調合に一般常識など多岐にわたり、8年の歳月の間レオとレイは切磋琢磨して上位を争い、最終試験の時にレオがわずかに成績が上だったためにレイは勇者の従者になると決めた。
「よくがんばりましたね、これからあなたの行いは私の行いと同意となります、名を汚さぬよう勤めるように」
第6皇女であるアニータにと初めてお目にかかったのは勇者の任命の時だった、レオはアニータの前でひれ伏しながらアニータの傍らに座っているロレッタの視線を感じていた。
(ララ、俺はようやくここに来れたぞ)
私語を許されない場で声を出すことは適わなかったが、ララには十分伝わっているとわかった、ララの頬を大粒の涙が伝わっているのを見たからだ。
「大変だったねぇ、勇者様」
レオが自室に戻る途中でレイに肩を組まれてちゃかしてきた、
「ああとても大変だったよ、従者君」
レイの鼻を指ではじきながらそう答えた、鼻を押さえているレイが言い返してくる、
「まあこれからも私を頼ると良いよ、剣技では俺のが上だったんだから」
レオは笑顔で受け流し、懐から仮面を取り出して被った、
「どうだい、似合うかね」
レイは笑い出しそうになるのを堪えていたが、ついに我慢できずに大声で笑い出してしまった、
「わははは、そんな仮面着けてたら顔がわからないじゃないか」
「ああ、それが狙いだ」
レオは懐からもう一つ仮面を取り出すと笑っているレイの顔に被せた、
「まあ仮面を着けていても俺のが格好良いが、まず判らないだろう」
顎に手を当てながらレオが言う、レイはその言葉に驚きあわてて仮面を脱ぎ何かを言おうとしたがレオに制止され、
「これからも頼みますよ従者くん」
鼻を押されながらレイはしぶしぶ承諾して再び仮面を着けた。
「これで良いですかね、勇者様」
今度はレオが大笑いした。