始まりの章 尋問
詰め所に着くと否応無しに留置場へ入れられてしまった、先に入っていたレオに手を振られたが後ろ手に縛られているために手を振る事は出来ない、
「どうやらレオも無事みたいだね」
「おう、しかし一体どうなってるんだよ、詰め所に着いたらいきなり拘束されてよ」
突然硬い物で鉄格子を叩く音が響き渡り、驚いた2人は口篭った、
「私語は禁止だ、こんどしゃべったら独房入りだぞ」
看守に怒鳴られてしぶしぶ2人はそれに従う、男と女に別けられて留置場に入れられ、男の方の密度の高さに不快指数が急上昇していく、それを察したのかカリスタがそれを見ながらニヤニヤしている。
暫くすると順番に取調べが始まった、始めに取調べを受けるのは当然ながらレオだった。
取調室にはすでに3人が待ち構えていて、部屋に入ってからも拘束は解かれる事は無かった。
「昨晩の出来事を話してくれるかな」
目の前の男はそう促してきた、レオは少し考えた後で、
「盗賊を警戒していたら、襲われて、退治した」
男の眉毛がピクリと動き、レオは笑い出しそうになるのを堪えた、
「それだけか?」
「それだけだ、その事を報告しようとここに来たら拘束された、ってのは言わなくても良いよな」
少しふんぞり返りながら言うレオに男の眉が逆立った、
「襲われた場所は」
そう言って男は町の地図を机の上に広げた、レオは帰り道の記憶から辿って行き、
「多分・・・この辺りかな」
「多分?」
「真夜中だったしな、正確な位置は覚えていないよ」
レオの言葉に男が鼻で笑った、今度は男がふんぞり返りながら、
「アーロン・トイを知っているな」
男の問いにレオは小さく頷いた、
「昨日ここの馬が盗まれて、その捜査をしていたらちょうどその辺りでアーロンの手下の死体を見つけたんだが」
「馬を盗まれた?ここの?」
男は咳払いをしてレオの質問には答えなかった、レオはそれを意に介さずさらに疑問をぶつけた、
「アーロンの手下に盗られたと、なんでわかったんだ」
「あいつらは盗賊だ、それに」
「それに?」
「死体の左腕には布が巻きつけてあった、お前も知っているだろうあいつらが布を巻きつけているのを」
「ああそうでしたかそうでしたか、それはこんな布でしたか」
レオは椅子から立ち上がり、後ろのポケットから血のついた布を複数枚取り出して、
「そこの死体には布が巻かれてるはずが無いんですが、アーロンの手下だとどうしてわかったんですかね」
男は歯を食い縛りながら黙り込んでしまう、レオはさらに続けた、
「顔を知っていた・・・んじゃないんですか」
男の顔がぱっと明るくなり、何かを言いたげに口を開けたがそれを遮る様にレオは、
「あなたの部下だったから・・・」
レオの問いに男の顔は赤から青に変わり、また口を閉じてしまった。