始まりの章 捕縛
朝日が昇りきる前にダグラスの町へ辿り着いたが、レオは諸々の報告の為に詰め所へ向かわなければならなかった。
欠伸をしながら送り出すレイ達に、呪い事を言いながら足取りが重いレオを見送ると、レイ達はすぐに眠りについた。
しかし夢の国に辿り着くことは叶わず、大勢の人々が発する騒音に夢現に引き戻された。
安眠の寸前で叩き起こされたレイはすこぶる機嫌が悪かったが、物々しい雰囲気にただ事ではないと感じて喉元まで出掛かった言葉を飲み込み、冷静に言葉を選びながら口を開いた、
「いったいこれはなんの騒ぎなのでしょうか」
見たところダグラスの警備兵たちだと思われる出で立ちに、もっとも大事なことを思い出した、
「レオはどうなりました」
レイの最初の問いに警備兵が答えるよりも先に新たな質問をされて、答えようとしていた警備兵は口をぱくぱくとしている、それはレイの気迫に押されて言葉に詰まったのかもしれない。
「レオはすでに我々に捕縛されている、お前たちは馬泥棒の嫌疑がかけられている、大人しく従うのならば手を後ろに回せ」
「馬泥棒ですか、まったく身に覚えがありませんが」
「言い訳は詰め所で聞く、大人しく従えば痛い思いをしないで済むぞ、手を後ろに回せ」
暫く考え込んでいたレイだったが、後ろに振り向き両手を背中で合わせた、
「これで良いですかね」
すぐに兵士に肩を掴まれて、押さえ付けられながらレイは乱暴に手を縛られた。
(レオも大人しくしていてくれれば良いが)
「さあ着いて来い」
「詰め所までは馬車ですか、馬ですか」
レイは縄の閉め具合を確認するための時間稼ぎに、兵士たちにいろいろな事を尋ねながらゆっくりと部屋を出て縄抜けの目処を立てた。
廊下を歩いていると、ジェラルドとカリスタも後ろ手に縛られて部屋を出てきた、
「やってられないわ、レディの部屋にノックも無しに入ってきたのよこいつら」
カリスタはそう言って兵士を蹴り上げる振りをした、捕縛する相手の部屋にノックをしてから入る警備兵は居ないだろう、レイはそう思ったが、
「まったくひどい奴らだな、同情するよ」
と心にも思っていない事を言った、カリスタはその言葉を聞いて満足だったのか笑顔になった、ジェラルドは小さく頷いていた。