始まりの章 朝飯後
吐瀉物まみれの男を担いでいる姿はとても目立っていた筈なのだが、道を行く町民たちに特に変わった様子は無かった。
「見慣れた光景なのか、それとも・・・」
カリスタはそう呟いて人並みに紛れて歩き出し宿屋に戻ると、ようやく目を覚ましたレオとレイが受付の広間で立ち話をしていた。
「戻ってきたか、ちょうどどこへ行ったのかと話していたところだったんだ」
「今から俺たちは遅めの昼食なんだが・・・」
レイがカリスタに目線で伺いを立てると、
「お生憎様とっくに済ませて来たわ、ついでに食後の運動もしてきたところよ」
カリスタの言葉にレオとレイは顔を見合わせて苦笑した、2人は言葉の綾を読み取れずにそのままの意味で取ったようで、それに気付いたカリスタだったが今更言い直すのも何だなと思い止まった。
「まあ良いわ、男3人で食事だなんて花が無さ過ぎよね、仕方が無いから一緒に言ってあげる」
再び顔を見合わせたレオとレイだったが、そこはカリスタの顔を立てて一緒に食事をしに行く事にした。
ジェラルドはその後ろを黙って着いていった。
目覚めてからそれ程時間が経っていないにも関わらず、3人の食欲に影響は無い様で、5人前程の料理を3人で平らげ、カリスタと一緒に食後のデザートまで食べている。
「よくあれだけ食べれるわね」
カリスタが呆れ顔でそう言うと、即座にレオが反論した、
「食べれる時に食べておく、そのかわり食べれない時は我慢をする」
レオは自慢げに言い放ったが、レイが苦笑いをしながら、
「レオは我慢しないけどね」
その言葉にレオとレイがわいわいやり出したのを横目に、カリスタが店の入り口を見ていると見覚えのある男たちが店に入ってくるのが見えた。
男たちはきょろきょろと店内を見回していたので、カリスタは手を振って合図を送る。
それを見た男たちは、肩を怒らせて一直線にカリスタたちの席まで向かって来た。
カリスタの行動を見て不審に思ったのか、レオとレイもカリスタの見ている方向へ視線を合わせた。
「また会ったな、ちょっと付き合ってくれるか」
男たちがテーブルを囲むように陣取り威圧してくるが、カリスタは足を組んだまま男の言葉を聞き流していた。
レオとレイは男たちの面構えをまじまじと見つめて、
「お前男の趣味悪いんだなぁ、相手は選べよ、こんなのならその辺の石ころのほうがマシだろ」
「そりゃあどういう意味だ」
男がレオの肩を掴んで威嚇してくるが、カリスタは男の言葉に噴出した後で大笑いしてしまった。
カリスタの態度に切れた手下がカリスタに手を伸ばした瞬間、手下はレイに店の外まで蹴り出されて動かなくなった。
「大丈夫か」
まだ何もされていなかったカリスタだったが、大げさに椅子から転げ落ちて見せる、しばらくしてカリスタが顔を上げた時には、男たちは全員突っ伏して動かなくなっていた。