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短編

婚約破棄はいいけれど、魔王軍に売られてしまった私。ごはんがあまりにもマズいので、ポトフを作ったら魔王の胃袋をわし掴みに。婚約破棄した王子は私を取り戻すとか言いだして、勇者になって旅立ちました。

作者: 佐藤謙羊

連載版、開始しました!

https://ncode.syosetu.com/n7830go/

このお話のあとがきの下に、小説へのリンクがあります!

 わたしは貴族であるバーンウッド家の長女として生まれ、リミリアという名を授けられた。

 両親はわたしを王族に相応しい女にするために、わたしを幼い頃から厳しく育てた。


 文武両道はもちろんのこと、芸術やスポーツ、家事やサバイバル術に至るまで、わたしをお稽古ごと漬けにした。

 そうしたら一流の娘ができあがるかと思われたのだが、漬物石をどけたら出てきたのは大根のような娘。


 そりゃそうだ。

 同じ歳の女の子が青春を謳歌している中、わたしはずっと習い事だったんだから。


 その頃のわたしは15歳。髪は幼い頃から変わらないおかっぱ頭で、服装はおばあちゃんみたいだった。

 東の国には服装こそ違えど、わたしみたいなナリのオバケがいるらしい。『座敷わらし』っていうんだって。


 そしてわたしをこんな風にした両親の作戦は、ある意味間違いではなかった。

 わたしの地味なビジュアルはこの国、ゴールドブレイブ帝国の王であるキングヘイロー様のどストライクだったようで、ぜひ息子のシューフライの嫁にということになった。


 いわゆる、『婚約』というやつだ。

 それからわたしは花嫁修業と称し、王城で暮らすようになる。


 慣れない暮らしにいろいろ失敗はあったけど、お稽古ごと漬けの毎日に比べ、お城での暮らしはわりと楽しかった。


 わたしはシューフライ様の秘書を買って出る。

 シューフライ様の専属コックとして、メイドとして、身の回りの世話をした。


 大臣たちはもちろんのこと、騎士や兵士たち、使用人やお庭番の人たちとも仲良くなるよう努力をした。

 お稽古事で身に付けた知識や能力で、この国を支える人たちのために、少しでも役立てるようがんばったんだ。


 だってそうすることで、シューフライ様に気に入っていただけると思ったから。


 でも、それは大きな間違いだった。

 男の人を喜ばせるには、それじゃいけないんだって。


 わたしはそれを、18歳にして初めて知った。

 処刑台の上で。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それは、満月の夜。

 そこは、王城からすこし外れた場所にある『獄門塔』。


 ここは敵国の王族などを捕らえたときに幽閉する施設で、屋上は処刑場になっている。

 その屋上にある処刑台に、両手両足を拘束される形で、わたしはいた。


「あの、これはいったい何のマネですか?」


 わたしは目の前にいるシューフライ様に尋ねる。

 いまこの場所には他には誰もおらず、わたしとシューフライ様のふたりっきり。


 シューフライ様はウェーブのかかった長い髪に、帝王の息子らしい傲慢不遜な顔立ちをしている。

 派手好きなので、演劇での主役のような、フリルだらけで金の刺繍と宝石がちりばめられたコートを着ていた。


 薄暗い屋上でもキラキラ光っているシューフライ様は、目を伏せたまま辛そうな声を絞り出す。


「許せ、リミリア……! 魔王軍の侵攻を止めるためには、こうするしかなかったんだ……!」


「どういうことですか?」


「お前を魔王軍に差し出せば、今の侵攻は止まるんだ、わかってくれ……!」


 『魔王軍』。正確には『シルヴァーゴースト帝国』だが、この国では『魔王軍』と呼ばれている。

 なぜならば、『世界に帝国はふたつもいらない』という考えからである。


 『魔王軍』は魔王と呼ばれる人物が統べている魔物たちの国で、このゴールドブレイブ帝国に唯一、反旗を翻している国でもある。


 国家の規模としてはゴールドブレイブ帝国のほうが圧倒的に上。

 しかしシルバーゴースト帝国には人間離れした魔物たちが数多くいるので、軍事力としては均衡。


 そのため、ゴールドブレイブ帝国にとっては目の上のたんこぶであった。

 そして、堂々とした抵抗勢力が存在しているのは、世界を統べる帝国としてはいかがなものかと、ずっと問題視されている。


 わたしはすぐにシューフライ様の意図を理解した。


「なるほど。わたしを貢ぎ物にして、密かに魔王軍と裏取引をしようというわけですね。

 表向きは和睦ということにすれば、魔王軍の侵攻が無くなり、シューフライ様の手柄になりますから……」


 するとシューフライ様はバッ! と顔をあげる。

 血走った眼で、わたしの頬をガッ! と掴んだ。


「そういうところが我慢ならねぇんだよっ!

 なんで処刑台にかけられてるってのに、そんなに冷静なんだよっ!?

 それになんで裏の意図まで当てちまうんだよっ!?

 怖くねぇのか!? 女だったら普通、キャー! とか、 助けてー! とか叫ぶだろうが!」


 わたしは感情表現に乏しいタイプだ。

 元来の性分もあるのだろうが、感情をみだりに出すのはレディらしくない、っていう古いタイプのお稽古をさせられてきたせいだろう。


 しかしわたしは希代の女傑などではなく、普通の女の子なので処刑台にかけられて怖くないわけがない。


「当然、怖いです。それに叫んで助けが来るのであれば叫びますが、この時間帯にこの場所で大声をあげても、誰も……」


「だからそういうところがずっとムカついてたんだよっ!

 女のクセに冷静で、何かっていうと出しゃばりやがって!

 女なんてのはなぁ、着飾って男の隣で笑ってりゃそれでいいんだ!

 テメェのその髪型はなんだ!? ガキか!? その服装はなんだ!? ババアかっ!?

 テメェが陰でなんて呼ばれてるか知ってるか!? 『ジミリア』だ!」


 それは知っていた。

 一部の貴族のお嬢様方は、わたしを面と向かって『ジミリアさん』って呼んでたから。


 アレは言い間違えてたわけじゃなくて、意地悪から来るものだったのか……。

 わたしは他人の悪意に少し疎いところがある。


 シューフライ様はどうやらわたしにかなりの不満を感じていたようだ。

 たまりにたまっていたものを爆発させるかのように、わぁわぁとわめき散らしている。


「女は男を敬い、男を立てるもんだっ!

 女ってのはなぁ、男を気持ち良くするために生まれてきた生き物なんだよっ!

 テメェの妹たちはそのことをよーくわかってる!

 姉のテメェが持ってないものを、妹たちはぜーんぶ持ってるんだよっ!」


 わたしには3人の妹がいるのだが、わたしと違って自由奔放に育てられてきた。

 おかげで驚くほど世間知らずで何もできないのだが、男の人にはやたらとモテた。


「テメェを魔物どもの生贄にすりゃ、俺様の手柄になって、イケてる妹たちと婚約する口実も作れる!

 『婚約破棄』ってやつだ! どうだ、悔しいか! ぎゃっはっはっはっはっはっ!」


「妹たちと婚約してくださるのであれば、わたしとしては『婚約破棄』はぜんぜん構いません。

 そして、わたしを魔王軍に捧げるのは、わたしに目をかけてくださったキングヘイロー様を納得させるためですよね?

 でしたら、もっといい手がありますから、こんなことはおやめになって……」


 シューフライ様は高笑いしてたのに、いきなり頭を押えて悶絶する。


「ぐぎゃあああああっ! だから裏の意図を当てるなって言ってるだろうがよぉぉぉぉっ!

 テメェと話してると頭がおかしくなりそうだっ!

 とっとと魔物を呼び出す儀式をやってやらぁ!」


 それからシューフライ様はわたしがなにを言っても聞く耳を持たなくなった。


 処刑台のそばにある手押しのレバーをグルグルと回転させると、処刑台の台座がせりあがり、わたしは冷たい夜風に晒される。

 処刑のときはこうやって高い位置に晒されて、まわりの広場から見えるようにさせられるんだ。


 しかし今は夜だし、そもそもこれは処刑ではないのでまわりには誰もいない。

 周囲には夜の闇が広がるばかり。


 ふと、眼下で赤い光が立ち上った。シューフライ様が床に描いた魔法陣だ。

 あの魔法陣はわずかに光るだけだが、人間の眼には見えない光線を空に放つというもの。


 『魔王軍』においては、狼煙の代わりに使われているらしい。


 しばらくして、夜の闇に紛れるような漆黒の悪魔たちが現れる。

 コウモリのような翼をはためかせた彼らは、『魔王軍』の兵士だ。


 すでにシューフライ様との間で話がついているのか、空飛ぶ兵士たちはわたしを処刑台ごと抱え上げると、『魔王軍』の本拠地であるシルヴァーゴースト帝国に向かって飛んでいく。

 足元からは、狂ったような笑い声が追いすがっていた。


「これで『婚約破棄』だっ! ざまあみろっ!

 すました顔をしていても、本当は悔しいんだろ! 悲しいんだろう! 泣き叫びたいだろうっ!?

 なんたってこの俺様から捨てられたのだからな!

 ぎゃっはっはっはっはっはっ! ぎゃーっはっはっはっはっ!」


 わたしは生まれて初めて空を飛んだ。空を飛ぶのは子供の頃からの夢だったんだ。

 わたしは童心に帰ったような気持ちで、ひとり思う。


 捨てる神もあれば、拾う神もいるのだなぁ、と。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 わたしは処刑台に縛り付けられたまま、『シルヴァーゴースト帝国』に連れ去られてしまった。

 魔物たちの国を訪れるのは初めてだったので、飛んでいる最中、わたしはずっとキョロキョロあたりを見回す。


 土地には緑がほとんどなくて、枯木ばかり。

 湖の水は紫色や緑色をしており、岩や山は苦痛に歪むような顔が浮かび上がっている。


 街や村などもあったが、住んでいるのは異形の魔物たちで、見た目は人間よりも個性的。

 そして王都にあるお城は禍々しい形をしていて、まわりにはコウモリがたくさん飛んでいた。


 どこに連れて行かれるんだろうと思っていたけど、わたしの身体はその不吉な見た目の城に吸い込まれていく。

 その中にある謁見場らしき場所で降ろされ、いきなり『魔王』とご対面となった。


 魔王は歪な形の玉座に、漆黒の鎧を着てふんぞり返っていた。

 見た目や体つきは人間とまったく同じだが、瞳は血に沈んだように真っ赤で、吸血鬼のような鋭い牙が口から飛び出ている。


 年の頃は若くて、わたしやシューフライ様と同じくらい。

 そして帝王らしく顔つきは傲慢不遜。逆立てたウルフカットに鋭い目つきで、好戦的な笑みを浮かべていた。


 魔王は、静かに唸る獣のように言った。


「まさか本当に婚約者を差し出してくるとは思わなかったな」


 魔王の隣に立っている男の人が言った。


「エーデル・ヴァイス様。部下に確認させたところ、替え玉などではなく、本物の婚約者だそうです」


 その男の人は白いローブを着ていて、とても背が高かった。

 瞳は海をただようように青く、顔だちは穏やかで知的。わたしは、魔物にもこんな人がいるんだと思ってしまった。


 立ち位置的に、たぶん軍師とか元老とかの、相談役のポジションだろう。

 少し歳上っぽい軍師の一言に、魔王は鼻で笑った。


「ふん、本物を送りつけてくるとは、あのシューフライとか言う王子もずいぶん思い切ったことをしたものだな。

 そんなことをすれば、国内ので評判がガタ落ちとなるだろうに」


 わたしはつい、口を挟んでしまう。


「そうはなりません。

 シューフライ様はわたしを『魔王軍』にさらわれたことにして、悲劇のヒーローになるおつもりでしょう」


 魔王の目がギロリとわたしを捕らえる。


 ただ見据えられただけなのに、その眼光はすさまじかった。

 まるで暗闇のなかで、いきなり強い光を浴びせられたみたいに。


「貴様、なぜそう言い切れる?」


「シューフライ様はわたしとふたりっきりで『魔王軍』に連絡を取りました。

 目撃者は誰もいないので、シューフライ様はなんとでも説明ができます」


 すると、魔王は重苦しい金属音とともに立ちあがった。

 鎧の鋭い肩先で風を切り裂き、地響きのような足音とともにわたしに近づいてくる。


 それだけで、ものすごいプレッシャーを感じる。

 まるで、首に押し当てられた鋭い刃が、少しずつ肌に食い込むような。


 魔王は処刑台のそばまで来ると、わたしのアゴを、


 ……グイッ! と長い爪先で持ち上げた。


「貴様、名はなんという……!?」


 それは地獄の釜蓋が開いたかのような、恐ろしい唸り声だった。


「リミリアです」


「リミリア……貴様は、この俺が怖くないのか?

 ここに連れてこられた人間はまだ数えるほどしかいないが、どいつもこいつも、俺の目を見ただけで小便を漏らす。

 そして泣きながら命乞いを始めるのだ……!」


「当然、怖いです。しかし、命乞いはしません」


「……なぜだ?」


「わたしをこの場で殺すメリットがないからです。

 人質として利用したほうがメリットが大きい。

 そして殺すとしても、民を大勢集めた場所で処刑したほうが支持を得られます」


「俺はそういう打算的なヤツが嫌いだ。そういうヤツの首を刎ね飛ばしてやったらどうなるかわかるか?

 殺されたのが信じられない表情で、地面に転がるのだ」


 魔王は腰に携えている剣の柄に手をかけた。

 わたしは覚悟を決めて、目を見開く。


 相手は魔物なので、感情の赴くままに人間を殺すことなど珍しくない。

 そして命乞いはしても無駄だというのを、わたしはお稽古で習った。


 むしろ命乞いをしているヒマがあったら、生き延びるための方法を限界まで探れ、と……!


「おやめください」


 不意に、魔王の背後にいた軍師が言った。


「その女の言うとおり、生かしておくほうが価値があります。

 それに打算的な者がお気に召さぬというのであれば、次はこのわたくしも手に掛けるおつもりですか?」


 それは石清水みたいに、心のなかにすーっと染み込んでくるような、不思議な声だった。

 魔王の顔は険しいままだったが、いまにも抜刀しそうだった腕から力がゆるむ。


「ふん。デモンブレインよ、そこまで言うならこの女は貴様にくれてやろう、好きにしろ」


 吹き上げるマグマのようだった魔王の声も、いくぶん和らいだ気がする。

 彼はわたしに背を向けると、鎧を鳴らして謁見場をあとにした。


 デモンブレインと呼ばれた軍師はわたしに近づいてきて、処刑台の脚の拘束を外してくれる。

 手の拘束も外してくれるだろうと思っていたのだが、デモンブレインさんは微笑むのみ。


「手のほうは自力で外せるでしょう?」


「あ、バレてたんですね」


 わたしは魔王軍の兵士に連れ去られている最中、何かあったら逃げ出せるようにと、手の拘束をこっそり緩めていた。

 これもお稽古事で教わった脱出テクニックだ。


 先ほど、魔王はわたしの首を刎ね飛ばそうとしていたが、その時は手の拘束をはずし、剣撃をしゃがんでかわすつもりでいた。

 そしてあとはいちかばちか、自由になった両手で脚の拘束を外し、逃げるつもりだったんだけど……。


「わたくしが『おやめください』と言ったのは、リミリアさんに対してでもあったんですよ。

 もしエーデル・ヴァイス様の一撃をかわすようなことがあったら、あのお方は意地になってあなたを殺そうとしていたことでしょう」


 どうやらわたしの作戦は、デモンブレインさんにはぜんぶバレていたようだ。

 彼は、処刑台から降りたわたしに向かって言った。


「あなたはたった今から、わたくしが預かる人質となりました。

 わたくしを不始末で死なせたくなければ、大人しくしていてくださいね」


 それは人質に対しての言葉とは思えないほどにやさしく、穏やかだった。

 そんな風に言われて大人しくしている人質がいるとは思えないが、デモンブレインさんに言われると不思議と従いたくなってしまう。


「それでは、わたしのあとについてきてください」


「はい」


 わたしはカルガモの親についていく雛のように、ひょこひょことデモンブレインさんの後を追った。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 わたしはデモンブレインさんの案内で、魔王城にあるとある部屋に案内された。

 そこはホテルのロイヤルスイートのような広々とした部屋だった。


 ダイニングと居間、さらに寝室やバスルームがあり、アイランドキッチンまである。

 わたしはてっきり地下の牢屋みたいなところに入れられるのかと思ったら、これじゃ賓客待遇だ。


 ゴールドブレイブ帝国だと、捕らえた人質は誰であれ、獄門塔の牢屋に入れられるというのに……。

 人間よりも魔物たちのほうが人道的だなんて、なんだか皮肉だ。


 しかし閉じ込められるという点では同じであった。

 窓には鉄格子があるし、玄関扉は中から開かないようになっていて、食事を差し入れるための小さな戸口がある。


「リミリアさんの正式な処遇は『人間軍』の出方次第ですが、それまではこの部屋で暮らしてください。

 この部屋からは一歩も出てはなりませんよ。欲しいものがあったら、外にいる見張りにメモで伝えてください。

 それでは今日はもう遅いですから、お休みなさい」


 わたしをここに連れてきてくれたデモンブレインさんは、そう言って部屋をあとにする。

 部屋のすぐ外の廊下には、見張りの悪魔兵士がふたり立っていた。


 わたしは今日はいろいろあって疲れていたので、まっさきに寝室に向かう。

 クローゼットにパジャマがあったので、着替えてベッドに潜り込むとあっという間に眠ってしまった。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



「突撃っ! きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!」


 次の日、外から飛び込んできた蛮声にわたしは飛び起きる。

 何事かと窓から見てみると、外は中庭のようで、魔王軍の早朝訓練が行なわれていた。


 若くて血気盛んそうな悪魔兵士たちが、ふたつに分かれて格闘戦をしている。

 見た感じさすが魔物だけあって、力も素早さも強靱さも人間の兵士よりも上っぽい。


 しかし知能はあんまりないのか、作戦も陣形もなにもなくただ突っ込むのみ。

 もしかしたら正規兵じゃなくて訓練兵なのかもしれない。


 そのあたりを改善したら、もっと強くなれるのになぁ。


 わたしはゴールドブレイブ帝国にいた頃、兵士たちの訓練などを見てアドバイスをしていた。

 そのときのクセでつい、そんなことを考えてしまう。


 ふと玄関扉の差し入れ口がカチャリと開いて、トレイに載ったスープとパンが置かれた。

 あ、朝ごはんか、と思って取りに行こうとしたら、漂ってきた腐臭に思わず足が止まってしまう。


 なっ、なにこの匂い……!?

 1年間洗わずに履き通した靴下に、腐った豚足を入れてゴミといっしょに煮込んだみたいな……!?


 鼻を押えてトレイに近づいてみると、それは豚足がゴロゴロ入った真っ赤な血だまりと、切り出した鉄みたいな鉛色のカタマリ。


 これが噂の、『メラ・ゾーマス』と『アイアンプレート』……!?

 魔王軍の常食だと、お稽古事で習ったことがある。


 詳しい味は教えてもらえなかったが、食べたら「魔王軍の強さがわかる味」だという。

 しかし想像以上に凄まじいビジュアルで、トレイと皿に乗せられていなければ食べ物だとわからないほどのブツだった。


 わたしは鼻を押えたままトレイを食卓に運ぶ。

 そのままゴミ箱にインしてもよかったのだが、わたしは好奇心旺盛なタイプ。


 そしてなんでも見た目で判断するのはよくないと教えられてきたので、ひと口だけ食べてみることにする。

 しかしそれは大きな過ちだった。


 『メラ・ゾーマス』はぺろりとひと舐めしただけなのに、全身が全霊をもって全力で飲み込むことを拒否するくらいマズい。

 意識まで刈り取られそうになり、三途の川が見えたほどだった。


 『アイアンプレート』はその見た目の通り尋常ではないほど固く、わたしの歯ではかみ砕くことができなかった。

 舌に乗せると鉄臭い味が口いっぱいに広がり、もはやただの鉄板なのではないかと思われたほどだ。


 魔王軍は、こんなのを普段から食べてるの……?

 こんなのが美味しいだなんて思えるのなら、そりゃ強いはずだわ……!


 しかしどうやらそうではなさそうだった。


 窓の外いる訓練兵たちも朝食の時間となり、わたしと同じメニューを食べていた。

 食事というのは兵士にとっては数少ない憩いの時間のはずなのに、喜んでいる者は誰ひとりとしていない。


 みんな青白い顔をして、えづきながらも無理やり口に詰め込んでいる。


「うげぇぇぇ……! まずい、まずいぃぃよぉぉぉ!」


「つべこべ言うな! 生きていくためには食わなくちゃいけないんだ! それとも飢え死にしたいのか!?」


「あーあ、食わなくても生きていけるようになれば、最高だってのによぉ……!」


 中庭の手入れをしていた庭師たちもいっしょにテーブルを囲んでいたが、みな同じメニューを食べさせられている。


 ……ここの人たちはなんなんだ?

 なんでこんなマズいメニューを無理やり食べてるんだろう。


 強くなるためのメニューなのであれば訓練兵だけが食べればいいはずなのに、非戦闘員であるはずの庭師まで同じものを食べているだなんて……。

 しかしいくら考えても、魔物の考えることなんてわたしにはわからなかった。


 結局、わたしの朝食はスープをひと舐めしただけで終わる。

 捨てるのも良くないかと思ったので、そのまま見張りの兵士に返した。


 その時ついでに、欲しい物を書いたメモ書きもいっしょに載せてみた。

 もちろんこれはダメ元で、人質であるわたしが欲しい物がなんてもらえるわけがないと思っていた。


 しかし意外や意外、その日の昼には昼食といっしょに箱が届いた。

 昼食のメニューは朝と同じだったのでどうでもいいとして、箱の中に入っていたのは……。


 ソーセージと調味料、それに色とりどりの野菜っ……!


 まさか希望どおりのものがもらえるだなんて思ってもみなかった。

 わたしはさっそく木箱を抱えてキッチンへと向かう。


 調理器具は一式揃っていたので、わたしはちゃちゃっとスープでも作ることにした。

 包丁を使って、取り寄せたキャベツやジャガイモ、ニンジンやタマネギなどを刻んで鍋に入れる。


 あとは火に掛けて、調味料で味付けすれば……。


 『ポトフ』のできあがりっ!


 ほっこりとしたソーセージと野菜の香りを嗅ぐと、急にお腹が空いてきた。

 さっそく皿に取りわけて、食卓でいただく。


 皮がパリッとしてジューシーなソーセージ、野菜の甘みがたっぷり染み出たスープ、これこそ人間の食べ物だ。

 あっという間に平らげておかわりしようと台所に向かう途中、部屋の中が暗くなっていることに気付く。


 窓にはぼたぼたと、雨粒が激しく当たるような音が。

 急に天気が変わったんだろうと思って外を見やった瞬間、わたしは飛び上がりそうになる。


 なんと窓には、悪魔兵士たちが蛾みたいにびっしりと張り付いて、わたしをじっと見つめていたんだ。

 ぼたぼたと、滝のようなヨダレを垂らしながら。


 窓の外に張り付いた悪魔兵士たちに、わたしは身構える。

 きっと人間が幽閉されているという噂を聞きつけ、わたしを食べにきたんだ。


 しかし彼らの視線はわたしにではなく、主に台所のほうに注がれていた。


「ううっ……なんだ、なんだこの匂いは!?」


「あの鍋からしているようだぞ!?」


「いままで嗅いだことのない匂いだ! だがなぜだろう、たまらなく心惹かれる!」


 そんな呻き声まで聞こえてきて、彼らはポトフの匂いにつられてやってきたんだとわかる。

 わたしは窓越しに、「たべる?」と尋ねてみた。


 すると悪魔たちは、顔を見合わせてあってざわめく。


「あの人間、なにか言ったぞ!?」


「たべる、だと!? あれは食い物なのか!?」


「食い物があんなにいい匂いがするわけがないだろ! 食い物は臭いものなんだ!」


 わたしは鉄格子ごしに窓を開けてみる。

 するとごはんが待ちきれない猫みたいに、悪魔たちが隙間から顔を突っ込んできた。


「ちょっと待って、いまから味見させてあげるから」


 わたしはキッチンのコンロにかけてあった鍋を窓際に移した。

 そして皿を縦にして鉄格子の間を通す。


 おたまは鉄格子の間を通るので、こうすれば皿にスープが注げる。

 わたしは悪魔たちの顔を押しのけるようにして、鍋から皿にポトフを注いだ。


 悪魔たちは皿のまわりに大集結。

 湯気のたつポトフをいぶかしげに見ている。


 蛇を見つけた猫みたいに、怖いけど興味がある、みたいな感じで。


「食べないの? とってもおいしいよ」


 勧めると、悪魔たちはわたしを睨みつけた。


「『おいしい』、だと? なんだそれは?」


「もしかして、おいしい、って言葉を知らないの? まずい、の反対だよ」


「『まずい』に反対の言葉なんてあるわけがないだろう! 食い物はぜんぶ『まずい』んだ!」


「いいから食べてみて。へんなものは入ってないから」


 すると、ひとりの悪魔がおそるおそる手をのばし、ポトフにちょんと指を浸ける。

 それを口に咥えたとたん、顔が爆発した。


「ふぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」


「なんだ、どうした!?」


「やっぱり毒が入ってたんじゃないか!」


 心配する仲間たちをよそに、毒味した悪魔はポトフの皿に頭を突っ込んできた。

 顔を洗うような勢いで貪りはじめる。


「ぐにゃうぎにゅぐぎにゃあっ!? にゃんだ、にゃんだこれはっ!?

 こんな食べ物初めてだっ! とまらんとまらんとまらん、とまらーーーーーーーーんっ!!」


「それが『おいしい』っていうんだよ」


「こっ、これが、『おいしい』……!? たしかに、『まずい』の反対だ!

 おいしいおいしいおいしいおいしいっ! おいしぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!」


 初めて『水』というものを知った盲目の人みたいに、『おいしい』を連呼する悪魔兵士。

 それが引き金となって、他の悪魔たちも争うようにして皿に顔を突っ込んでくる。


 わたしは公園で、鳩にパンをついばまれる人みたいになった。


「待って待って。そんなに慌てないで、おかわりをあげるから」


 わたしは片手で皿を保持したまま、おたまで鍋のポトフをよそう。

 悪魔たちは待ちきれなくて、とうとうおたまにまでむしゃぶりつきはじめる。


 鉄格子があるのはもどかしかったが、無かったら鍋の争奪戦が始まって大変なことになるところだった。

 しかし一瞬にして食べ尽くされてしまったので、わたしは彼らに言った。


「じゃあ、明日のお昼も作ってあげる。材料を多めに取り寄せて、みんなが食べられるくらいたくさん」


 ふと気付くと、玄関扉の受け渡し口にも、見張りの兵士たちが顔を突っ込んで、ヨダレをダラダラ垂らしていた。


「あなたたちの分も作ってあげるから、たくさん材料を持ってきて、ねっ?」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 次の日の朝には、木箱にして数箱分のソーセージと野菜が届いていた。

 わたしはキッチンにあったいちばん大きな寸胴鍋を引っ張りだし、朝からポトフ作りに精を出す。


 できあがる頃には、窓にはまたびっしりと兵士たちが張り付いていた。

 わたしは窓を開けて、彼らに言う。


「これからポトフをあげるけど、奪い合うのはなし。

 ちゃんとみんなの分もあるから、並んで順番に、ひとりずつ受け取ること。

 いい? 割り込んだり横取りしたら、その時点でポトフはなしだからね?」


 噛んで含めるように言い聞かせると、悪魔たちはぶんぶんと首を縦に振った。

 顔はコワモテなのに、いっしょうけんめい頷く姿はなんだか可愛い。


 そして配給が始まる。

 キッチンにあるありったけの皿を使って、わたしは兵士たちにポトフを振る舞った。


 すると、あたり一面には笑顔が咲き乱れる。

 これこそが、兵士の憩いである『食事』のあるべき姿だった。


「ああっ、おいしい、おいしい~っ!」


「食い物がこんなにおいしいだなんて、知らなかった!」


「い、生きててよかったぁ~っ! この第十四小隊にいてよかった~っ!」


「俺たちは落ちこぼれとか呼ばれて、教官もいないうえに、こんな中庭で訓練させられてたけど……。

 こんなおいしいものが食べられるなら、落ちこぼれのままでいい!」


「おいしいだけじゃなくて、なんだか力がもりもり沸いてくるみたいだ!

 これなら来週に控えた正規兵との戦闘試験も、バリバリやれそうじゃないか!?」


「ああ! 今回こそは正規兵に認められるよう、がんばるぞっ!」


 嬉しそうな彼らを見ていると、わたしまで嬉しくなってくる。


「おかわりはたくさんあるから、いっぱい食べてね!」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それから数日後。

 作戦会議室には魔王軍の幹部たちが集結していた。


「それでは先日行なわれました、訓練兵の試験結果につきまして、各部隊の成績を発表してください」


 司会進行のデモンブレインがそう言うと、各部隊の代表者である将校たちが資料を読み上げる。

 ある将校の番になって、急に歯切れが悪くなった。


「どうしたのですか? 言いにくいほど酷い成績だったのですか?」


「い、いえ……そうではなくて……一部の小隊の戦果が異常とも呼べる結果でして……。

 正規軍との模擬戦闘で、互角……いや、正規軍に勝利してしまったのです!

 しかも、軽傷者がたったの数名で!」


 これには真っ先に魔王が反応した。


「なんだと? 我が正規軍が訓練兵ごときに負けるわけがないだろう。

 試験というのは訓練兵どもに戦場の厳しさを教えるため、半死半生にする場所でもあるんだ。

 それなのに軽傷者のみだなんて、バカも休み休み言え」


「それが、本当なんです! 我々も、なにがなにやら……!?」


「どこなんだ、その小隊は?」


「はい、第十四小隊です! 我が小隊のなかでは戦闘力が低い者ばかりで構成されている、落ちこぼれどもだったのですが……」


 魔王軍の最高司令官である魔王、エーデル・ヴァイスは冷たく言ってのけた。


「もし我が正規軍がおちこぼれの訓練兵などに敗れたのであれば、我が軍の恥だ。

 敗れた者たちを即刻処刑しろ」


「お待ちください、エーデル・ヴァイス様。

 その前に、第十四小隊の訓練をご覧になってはいかがでしょうか?

 もしかしたら、本当に正規軍を倒すほどの実力を身に付けたのかもしれません」


 軍師であるデモンブレインにそう提言され、エーデル・ヴァイスは軍の幹部たちを引きつれる。

 第十四小隊が訓練場がわりに使っている中庭に向かうと、そこには目を疑うような光景が繰り広げられていた。


 なんと、人質として幽閉してあるリミリアの部屋の窓にあった鉄格子は外され、その窓の前には皿を持って並ぶ訓練兵たちの姿が……!



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 配給が見つかったわたしは即刻、引っ立てられてしまう。

 中庭に引っ張り出され、跪かされるわたしを、エーデル・ヴァイス様は鬼のような形相で見下ろしていた。


「貴様……いったい何をやった? 鉄格子をどうやって外したのだ?」


 わたしは正直に答える。


「わたしじゃなくて、第十四小隊の子たちが外してくれたんです。配給の邪魔だからって」


「配給だと? 貴様はいつ給仕になったのだ?」


「いえ、ここでのごはんがあまりにまずかったので、ポトフを作って差し入れてあげたんです。

 みんな喜んで食べてくれるから、つい……」


「貴様はなにを言っている? 飯というのはまずいものに決まっているだろうが」


「そんなことはありません。人間の世界では、ごはんは楽しみのひとつとされています。

 ごはんって1日3回もあるものでしょう? それが苦痛だなんておかしいです」


 すると、まわりにいた将校たちがざわめいた。


「あ、あの人間の娘、エーデル・ヴァイス様に抗議しているぞ……!?」


「エーデル・ヴァイス様に睨まれたら、魔族である我々ですらいまだに足がすくむとうのに……!」


「それも、エーデル・ヴァイス様は我々の話などちっとも聞いてくれないのに、なぜあの娘の言い分は聞いているんだ……!?」


 この城に来たばかりの頃は、エーデル・ヴァイス様は怖くてたまらなかった。

 しかし初絡みを終えたわたしは、もうだいぶ慣れていた。


 わたしは今がチャンスだと思い、エーデル・ヴァイス様に願う。


「お願いします、エーデル・ヴァイス様。わたしに、兵士たちの食事を作らせてください」


 「なに?」と形相をいっそう険しくするエーデル・ヴァイス様。

 その睨みは真冬のプールに放り込まれたみたいに、心臓を急襲してくるような恐ろしさ。


 でも、わたしは負けじと訴えた。


「兵士というのは毎日、厳しい訓練で己を鍛え上げています。

 そしていざ戦場に出れば、いつ敵の刃にかかって死ぬかもわからない身。

 だからわたしは、彼らに食事で力を与えてあげたいんです。

 良い食事と睡眠は身体を強くし、生きる希望を与えます。

 わたしの食事で、兵士たちを少しでも長生きさせてあげたいんです」


「貴様……人間の分際でなにを言っている……?

 飯に希望などありはしない。

 まずい飯を食ってこそ、心身ともに鍛え上げられ、強くなれるのだ」


 わたしの訴えも虚しく、エーデル・ヴァイス様は形相を崩さない。

 それどころか、腰に提げた剣の柄に手をやっていた。


「やはり、貴様を生かしておいたのは間違いだったようだな……!」


 この城に連れてこられたばかりの頃に洗礼として受けた、鬼の手で首を掴まれるような殺気が、ふたたびわたしを襲う。

 まわりにいた将校たちはそれだけで怖じ気づき、後ずさりしてしまう者までいた。


 わたしはまたしても『マジで殺される5秒前』を感じていたが、鍋を持った兵士がやって来て、わずかに生きながらえる。


「デモンブレイン様! 鍋をお持ちしました!」


「ああ、ご苦労様。こちらに持ってきてください」


 デモンブレイン様の落ち着いた声で、場の緊張は少しだけ和らいだ。

 エーデル・ヴァイス様は、刃のような流し目をデモンブレイン様に向ける。


「なんだ、それは?」


「リミリアさんの部屋のキッチンにあった鍋です。

 リミリアさんのいう『ポトフ』というものが気になったので、兵に持ってこさせたのです」


 デモンブレイン様は答えながら、テーブルの上に置かれたポトフの鍋を覗き込む。

 鍋はまだほんのりと、湯気が立っていた。


 デモンブレイン様は鍋にあったおたまでポトフをかき回し、中をあらためる。

 そしておもむろに、ひと口分をおたまですくい、口元にもっていった。


 唇に触れる直前、横から声がかかる。


「おい、食う気なのか? 毒が入っているかもしれんのだぞ」


「エーデル・ヴァイス様、ご心配なく。

 わたくしがいかなる毒も受付けない体質なのは、よくご存じのはずでしょう」


 それからデモンブレイン様は「失礼」と断って、手で口元を覆い隠すという、上品な仕草でポトフをひと口。

 そして「おふっ」と腹を殴られたような声を出していた。


「やはり、毒が入っていたのだろう。

 デモンブレインよ、いくら貴様が毒を受付けぬ体質とはいえ、いくばくかのダメージは受けるはずだ。

 その様子だと、かなり強力な毒だったようだな」


「おっ、おいしい……!」


 デモンブレイン様は、目を見開いていた。

 エーデル・ヴァイス様も、目を見開く。


「……なに?」


「人間の世界では、食事は『まずい』という概念だけでなく、それとは真逆の『おいしい』という概念もあるそうです。

 知識としては知っていましたが、まさかこれが、『おいしい』……!?」


 さっそくふた口目をすくい、口に運ぶデモンブレイン様。

 食べるのに夢中になっているのか、もう口は覆い隠していない。


 しかし途中で、エーデル・ヴァイス様からの視線で我に返る。

 デモンブレイン様はコホンと咳払いをひとつすると、いつもの穏やかな調子で切り出した。


「第十四小隊の訓練兵たちが大いなる成果をあげている以上、軍師であるわたくしとしては見過ごすわけにはいきませんでした。

 ですが今、その理由がわかりました。第十四小隊の強さの秘密はこのポトフにあることを。

 よってわたくしは、ここに提言させていただきます。

 リミリアさんを魔王軍のコックとして、試験登用することを」


 「ええっ……!?」とざわめく将校たち。

 わたしは内心、「やった!」とガッツポーズを取る。


「もちろん、全軍の食事をまかなう正式なコックというわけにはいきません。

 あくまで限定的に、一部の部隊の食事のみをリミリアさんにお任せしたいと思っています。

 リミリアさんの身柄は現在、わたくしに預けられています。

 さらにわたくしが管轄する部隊でのみ効果検証を行なえば、なにも問題はありませんよね?

 なぜならその中では何が起こったとしても、すべてはわたくしの責任になるのですから」


 エーデル・ヴァイス様のいちばんの腹心である、デモンブレイン様の加勢は百人力。

 これにはきっとエーデル・ヴァイス様も、首を縦に振ってくれるだろうとわたしは思っていた。


 しかし、巌のような表情は崩れない。


「くだらん。貴様まで人間の戯言に踊らされるとは……。

 失望したぞ、デモンブレイン。

 貴様は毒には強いようだが、人間の瘴気には弱いようだな。

 それ以上血迷うようなら、そのよく回る口を首ごと斬り捨ててやる」


 怒りの矛先が、わたしからデモンブレイン様に移る。

 強いスポットライトのような眼光を向けられ、デモンブレイン様はわずかに目を細めた。


「わたくしは血迷いなどで申し上げているのではありません。

 このポトフを口にしたことで、確信が持てたので申し上げているのです」


 デモンブレイン様は言葉を切ると、鍋におたまを差し込んでポトフをすくいあげる。

 それはミニラーメンみたいに、鍋の具材が全て入った見事なミニポトフだった。


「エーデル・ヴァイス様も、このポトフをお召し上がりになってみてください。

 毒の類いは一切入っておりませんので、ご安心を。

 そしてこれを口にしてもなおそのお考えが変わらなければ、わたくしはあなた様の側近である資格はありません。

 喜んで三寸高い木にもぶら下がり、カラスどもに突かれましょう」


 「ふん」と鼻をならしておたまを受け取るエーデル・ヴァイス様。


 わたしがポトフをご馳走した魔王軍の人たちは、最初はおそるおそるちょびっとだけ食べる。

 でもエーデル・ヴァイス様はさすが魔王だけあって、そんなことはしない。


 おたまごと食いちぎらんばかりに、一気に口の中に頬張っていた。


 わたしは固唾を飲んで、その様子を見守る。

 ポトフが口に合わなかったら、わたしは間違いなく殺されるだろう。


 いわばこれは、わたしにとっての運命の審判といっていい。

 次の反応で、わたしの生死が決まる。


 ……ごくりっ!


 と回りに響くほどの大きな音で、ポトフを飲み下す魔王。

 そして、彼が下した判決(リアクション)とは……!?


「おうっ」


 腹を殴られたような、吐息っ……!


 瞬転、


 ……ビキビキビキビキィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!


 霹靂のような青筋が、魔王の顔じゅうに走る。

 魔王はずっと怖い顔をしているけど、いままででいちばん恐ろしい表情だった。


 地獄の閻魔大王がいるとしたら、きっと彼のことに違いない。


 まわりにいた将校たちはとうとう「ひいいーーーーっ!?」と腰を抜かす。

 地獄行きの片道切符が胸に突き刺さるのを直感したわたしは、瞬時に逃げ出す決意を固める。


 いまわたしがいるのは魔王軍の本拠地のうえに、幹部たちに囲まれている。

 この状況では伝説のスパイだって脱出は無理だろうけど、このまま殺されるなんてまっぴらだ。


 最後の最後まで、悪あがきをして……!


 と踵を返そうとしたが、先に背を向けたのはエーデル・ヴァイス様だった。


「……好きにしろ」


 と吐き捨てて、マントを翻しながらわたしの前から去っていく。


 慌てて後を追う将校たち。

 わたしのそばには、デモンブレイン様だけが残っていた。


「どうやら、気に入っていただけたようですね」


 私は思わず口をついてしまう。


「えっ、あれで!?」


 どう見ても、すっごく気に入らなかったようにしか見えませんでしたけど!?


「エーデル・ヴァイス様は不器用な方なんですよ」


「不器用どころじゃないような気が……」


「いずれにしても、助かって良かったですね。

 エーデル・ヴァイス様とのやりとりのあいだ、こっそり数えていたんですが……。

 下手をすると、リミリアさんは40回は首を刎ねられていましたよ」


「えっ、そんなに!?」


 そこでわたしはふと気付き、デモンブレイン様に頭を下げた。


「ありがとうございます、デモンブレイン様。

 わたしを助けてくださって……」


 デモンブレイン様がポトフの鍋を取り寄せてくれなかったら、わたしは今頃生きていなかっただろう。

 しかもデモンブレイン様は、自分の首を賭けてまでわたしの味方をしてくれた。


 これで彼に命を助けられるのは二度目だ。

 しかしわたしの命の恩人は、人の良さそうな顔をふるふると左右に振っていた。


「いいえ、最初はリミリアさんのためではありませんでした。

 すべてはエーデル・ヴァイス様のためを思ってしたことです」


「えっ?」


「もし『おいしい』食事によって強い兵士が作られるのなら、魔王軍にとっては大きなアドバンテージとなります。

 それはひいてはエーデル・ヴァイス様のお力となるのですから」


「なるほど、そういうことだったんですね。

 でもそれだったら、ご自分の首をかけてまでわたしを擁護するんじゃなくて、あとでポトフのレシピを調べれば良かったのではないですか?」


「ええ、最初はそれも考えていました。でもポトフを実際に口にしてみて、考えが変わりました。

 こんな素敵なポトフを作れるあなたに、興味が出てきたんです」


 ふふっと笑うデモンブレイン様。

 いつも穏やかな笑みを浮かべているけど、今の彼は子供のように無邪気な笑顔。


 異性からそんな笑顔をされたことのないわたしは、心臓が爆発するかと思うほどに高鳴ってしまった。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ところかわってゴールドブレイブ帝国。

 リミリアが魔王軍に連れ去られた次の日、シューフライはさっそく悲劇のヒーローを演じていた。


「リミリアはきっと、俺とふたりっきりになりたかったんだろう!

 この俺様を真夜中の『獄門塔』に呼び出したんだ!

 この俺様は次期国王であるが、愛するリミリアためならとひとりで向かった!

 そしたらどうだ、リミリアはどこからともなく侵入してきた魔王軍の兵士たちに捕まっているではないか!

 兵士たちの数は千はいたであろう! でも俺様は臆さずに剣を抜いて、リミリアを助けるために戦った!

 相手は千もの魔物であったが、俺様の相手でではない!

 この聖剣で、屍の山を築いてやったんだ!

 俺様に敵わぬと知った魔物どもは、リミリアの身体を抱えると、空高く飛び立った!

 さすがの俺様でも、空を飛ぶ相手にはどうにもならん!

 俺様は叫んださ、『リミリアー!』と! そしたらリミリアは俺様にこう言ったんだ!

 『シューフライ様、わたしのことはきれいさっぱり忘れて、新しい婚約者をお選びください!』と!

 リミリアは婚約者である自分が人質として利用されることを恐れ、自分から婚約破棄を申し出たんだ!

 俺様は血の涙を流した! そんなことができるか、と……!

 俺様が愛する女は、生涯でただひとりだと……!

 でも、リミリアの最後の意思は尊重せねばならん!

 リミリアの勇気を讃える意味でも、バーンウッド家から次の婚約者を選びたいと思う!」


 シューフライとリミリアはまだ婚約段階であったので、本来はそれほどの大事件ではない。

 しかしこの報せは瞬く間に帝国じゅうに広がり、国民の大いなる話題となっていた。


 リミリアのことを買っていた帝王、キングヘイローは大変残念がる。

 しかしリミリアの意思ならば仕方がないと、婚約破棄を正式に認めた。


 親の許可が得られた途端、シューフライは昨日の今日だというのに、さっそくリミリアの妹たちに手を出す。

 リミリアには7つ子の妹たちがいて、そのひとりであるエナパインを次の婚約者として指名したのだ。


 両親はリミリアがさらわれたことを知り悲しんだが、王族との関係が断ち切られずにすんだのでたいそう喜んでいた。


 そしてついに、シューフライは念願を叶える。

 座敷童のような地味子ではなく、メイクもファッションセンスもバッチリの、今風の婚約者を得ることに成功したのだ。


 エナパインは花嫁修業として城にやって来て、シューフライの妃として生活するようになった。

 着飾ったエナパインを連れて歩くシューフライは幸せいっぱいで、バラ色の婚約者生活を謳歌する。


 しかしそれも最初の3日目までで、4日目から異変が起こり始めた。

 朝はいつもエナパインから起こされるのだが、寝覚めがすこぶる悪いのだ。


 シューフライはただでさえ寝起きが悪く、起きてからもしばらくは不機嫌が続いていた。

 しかしリミリアに起こされるようになってから、それもなくなっていたはずなのに……。


「おいエナパイン、もっとリミリアみてぇに気持ち良く起こすことはできねぇのか」


「えぇ? 姉さんみたいにぃ? それってどういうことですかぁ?」


「よく知らねぇけど、アイツに起こされると不思議と寝覚めがいいんだよ」


「そうですかぁ。よくわかんないけどぉ、わかりましたぁ」


 リミリアはかつて、シューフライにこう説明していた。


『人間の睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」というふたつの種類があります。

 簡単に言うと、「浅い眠り」と「深い眠り」ですね。

 「浅い眠り」のときに起こすようにすると寝覚めがよくなるので、わたしはそのタイミングでシューフライ様をお起こししています。

 どうやって見分けているのかって?

 「浅い眠り」のときは目を閉じていても眼球が動くので、瞼を見ればわかります』


 頭カラッポのシューフライはこのことを憶えておらず、同じく頭カラッポのエナパインにはこんな知識はない。

 エナパインはとにかくやさしくすればいいのだろうと、猫撫で声で起こすようにしたのだが、それがシューフライの寝起きの悪さをさらに加速させることとなる。


 そしてシューフライのストレスは、たったふたつの要素で限界に達してしまった。

 それは、朝食の場。


「おい、なんだこのポトフは!? こんなクソマズいポトフが食えるかっ! コックを呼べ!」


 食堂の長いテーブルの上座についていてシューフライは、怒りにまかせて食器をぜんぶ床にぶちまける。

 それでも気持ちはおさまらず、顔色を変えて飛んできたコックを怒鳴りつけていた。


「俺様の好物がポトフなのを知っているだろう!? なのにここ数日のポトフはなんだ!? 犬も食わねぇ味だ!」


 そこまで酷評されるほどの味ではない。

 帝国お抱えのコックが作る料理はどれも、三つ星クラスのレストランに匹敵する。


 しかしポトフだけは、どうにもならなかったのだ。


「も、申し訳ございません、シューフライ様!

 今までシューフライ様にお出ししていたポトフは、リミリア様がお作りになっていたのです!

 私もどうにか近づけようと努力しているのですが、どうしてもリミリア様の味にならなくて……!」


「なにっ、リミリアが……!?」


 今になって初めて、毎日口にしていたポトフがリミリアの手作りであることを知ったシューフライ。

 隣にいたエナパインを、キッと睨みつける。


「おいエナパイン、お前もリミリアと同じ家で育ったんだよな!?

 だったらポトフくらい、お前も作れるだろう!?」


「ポトフぅ? なんですかそれぇ?」


「……クソがぁっ!」


 シューフライは椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がると、肩をいからせて食堂を出る。

 外の廊下には若き騎士団長であるオーネストがいて、待ちかねたように詰め寄ってきた。


「シューフライ様! なぜいまだにリミリア様の救出隊を編成しようとしないのですか!?

 リミリア様がさらわれて、もう4日も経っているというのに!」


 オーネストはリミリアがさらわれたと聞いた瞬間から、シューフライにシルヴァーゴースト帝国へ救出隊の派遣を提案していた。

 しかしシューフライとしては新しい婚約者を手に入れるのが最優先だったので、後回しにする。


 「いま動くのは得策ではない、俺様に考えがあるから、機が熟すまで待っていろ」と、オーネストに言い聞かせていた。

 それでもオーネストは事あるごとに「機は熟しましたか!?」と、まるで果物の樹にたかる小鳥のようにしつこくつきまとっていたのだ。


 すっかりダウニーなシューフライ。

 後ろ頭をボリボリ掻きながら、さもうざったそうにオーネストに言った。


「はぁ……ったく、朝っぱらからピーチクパーチクうるせぇなあ。わかったよ、それじゃあ兵どもを集めろ」


「ついに機は熟したのですね!? わかりました、すぐに兵士たちに招集をかけます!」


 オーネストは元気な子供のように、ばびゅんっ! と走り去っていく。

 それから30分もたたないうちに、訓練場に集結した兵士たち。


 指令台の上に立ったシューフライは、彼らに向かって演説していた。


「これから、リミリア救出のための特別隊を編制する!

 我こそはと思うものは、一歩前に出よ!

 愛するリミリアを何としても取り戻すために、今回は隊の規模は制限しない!

 希望者は全員、特別隊への編成とする!」


 シューフライは愛する人をさらわれた王子を演出し、怒りに燃えているふりをする。

 しかし内心は、たかをくくっていた。


 ――あんな助け甲斐のない地味子を助けようなんて物好きなヤツは、ひとりもいねぇだろうなぁ。

 希望者ゼロなら救出隊を編制する必要もなくなるから、これでやかましいオーネストも静かに……。


 しかしシューフライは次の瞬間、信じられない光景を目撃する。


 ……ざんっ!


 訓練場を埋め尽くしていた兵士たちが、一斉に一歩前に出たのだ……!


 彼らは一斉に、声を揃えた。


「自分は、リミリア様の救出隊に志願いたしますっ!!」


 唖然とするシューフライ。

 理解が追いついていない様子で、ついぽろりとこぼしてしまった。


「な、なんで……? なんで、あんな女を……?」


 すると兵士たちから次々と答えが返ってくる。


「王族と婚姻関係を結んだ方というのは、我々兵士を見下すような態度を取る方がほとんどです!

 でも、リミリア様は違いました!」


「自分たちのような兵士たちがいるからこそ、民は安心して、幸せに暮らせるのだとおっしゃってくださったのです!」


「それだけではありません! 

 自分たちが出撃から帰還すると、リミリア様はいつもポトフを振る舞ってくださいました!」


「そのポトフは自分たちとって、何よりものごちそうでした!」


「生きて戻ったら、リミリア様のポトフが食べられる……!

 そう思うからこそ、自分たちは過酷な戦場においても希望を捨てずにがんばることができたのです!」


 不意に訓練場の入口の門が開くと、多くの武装集団がなだれこんできた。

 何事かと身構えるシューフライに、オーネストは言う。


「城下町にいる民間人たちにも声をかけてみたのです。

 リミリア様は城下にある様々な施設を視察されており、彼らの暮らしを良くするための案を大臣に持ちかけていたようです。

 そのため、多くの者たちから支持されていたようです」


 武装集団の層は多彩であった。

 冒険者ギルドの冒険者から、商人たちや農夫、ゴロツキやみなしごみたいな者たちまでいる。


 彼らは口々に、リミリアへの恩を叫んでいた。


「私たちはリミリア様のおかげで、安心して冒険に出られるようになったんだ!」


「オラたちの飢饉のときに助けてくださったのは、リミリア様だっただ!」


「俺たちみたいなゴロツキのことも理解してくれて、仕事ができるようにしてくれたんだ!」


 想像を絶する人気に、思わずたちくらみを憶えるシューフライ。

 その脳裏に、リミリアとの思い出が蘇る。


 普段は鉄仮面を被っているかのように、むっつりしているリミリア。

 しかし時折見せる笑顔は、シューフライが接してきたどの女性よりも魅力的であった。


 「朝は日光を浴びると良いそうですよ」とカーテンを開けて振り返るリミリア。


 「今日はニンジンも残さず召し上がりましたね。シューフライ様はポトフにすると、嫌いなものも召し上がっていただけるようですね」と嬉しそうなリミリア。


 「今日は王妃様の誕生日ですよ。王妃様の大好きな花で花束をお作りしておきましたから、こちらもお持ちになってはいかがでしょう?」と、派手な花を差し出しながら、控えめに微笑むリミリア。


 シューフライの脳内では、リミリアの笑顔が万華鏡のように現れ、キラキラと輝いていた。


「りっ、リミリアっ……!!」


 その美しい幻想に手を伸ばすが、触れる前に消えてしまう。

 シューフライは今になってようやく、リミリアの大切さに気付いていた。


 ここで普通の人間なら、リミリアを売り渡してしまったことを激しく後悔するのだが……。

 彼は違っていた。


「おっ……おのれぇぇぇぇぇぇ~~~~!

 この俺様のリミリアを奪うとは……! 魔王、許すまじっ!!」


 都合よく記憶を改ざん。

 リミリアを失ったのを魔王のせいにして、今さらながらに決意を新たにしていた。


 シューフライは勇ましく顔をあげる。

 腰の聖剣を抜くと、天を衝くほどに掲げながら叫んだ。


「このゴールドブレイブ帝国は、勇者が魔王軍と戦った末に、築き上げた帝国である!

 その末裔である俺様も、もちろん勇者だっ!

 今こそ、その血統が目覚めるとき!

 そう、俺様は旅立つ! 愛するリミリアのために!

 王子ではなく、ひとりの勇者として……魔王軍と戦うことを、いまここに宣言するっ!!」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


 訓練場に集まった兵士や民間人たちは、勇者の復活宣言に大歓声をあげる。


 そして巻き起こる『シューフライ』コール。

 見習い勇者はすっかり英雄気取りで、すでに魔王を倒したかのように手を振り返していた。

連載版、開始しました!

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[一言] スカッともざまぁもない気がするが見逃したのかな
[良い点] この話を読んだらポトフが食べたくなったので、今日の夜ご飯はポトフにしました
[良い点] まさか、記憶を都合よく忘れる(自己改ざん)するとはw
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