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第四話 ないよ!

 がぶっ!!


 恰幅のよい初老の紳士は、わたしが握った焼きおにぎりへとかぶりついた、すると――


「これはっっっうーーーーまーーーーいーーーーぞーーーーー!!!」


 とつぜん、紳士は大きな声で、米粒をまき散らしながら叫んだ。


「これは米か?米をこんな風に調理するにはいったいどうしたらいいんだ!?君、ぜひこの料理の作り方を教えてもらえないかね?報酬は言い値で出しましょう!!」


 紳士はそう言うと、あっという間に焼きおにぎりを全部食べてしまった。そして馬車の方に手を向けて、


「さあさあ、早速馬車の中にどうぞ」


 と、馬車に乗るように案内をしてくる。


 さすがに何か話がおかしいと思った。よく、パパとママから知らない人についていっちゃダメってよく言われているし。


 不安に思ったわたしは、ケレースさんに話しかけてみた。


「ケレースさん、あやしいですよね? こんな話」


「う~ん、どうかな☆不安だったら、馬車に乗らずに歩いて付いていってみたら?どちらにせよ、このままじゃ元の世界に戻れないし☆」


「えっ!? それってどういう事? 元の世界って?? ここはいったいどこなの!??」


「さあねぇ~♪とにかくこのままだと、ずっとこの世界にいることになるよ☆」


 ケレースさんとそんな話をしていると、紳士がぽかんとした顔でこちらを見ている。


「お嬢ちゃん、何かひとりごとが多いみたいだけど、どうかされましたかな?」


 ん?ひとりごと? あ、ひょっとしてこの人には、ケレースさんの事が見えてないのかも!そしたらわたし、ブツブツとひとりごとを言っている怪しい子だ!


「あ、いえ、何でもないです!」


 とっさにわたしは返事をする。


「あの、知らない人に付いていっちゃいけないと、いつもパパとママに言われているので、その、馬車の中に入るのは怖いです…」


 わたしは自分の気持ちを正直に言ってみた。


「あの、だから、馬車の後ろから歩いて付いていっていいですか??」


 失礼だとは思いつつも、わたしは紳士にお願いをしてみた。


「わかりました、そういうことでしたら大丈夫ですよ、お嬢さん。途中で足が疲れたら壱でも言って下さいね」


 よかった、機嫌が悪くなったりはしなかったみたいだ。


 ということで、わたしは馬車の後ろを歩いて付いて行く事となった。


 しばらくは平坦な草原の中に、馬車などの車両が走りやすいように、固い土で踏み固められた道が続いてゆく。


 わたしはケレースさんと話ながら、少しでこぼこしたその道を歩いている。


「ねえ、本当にここはどこなのわたし、?ちゃんとお家に帰れるの??」


「澪ちゃんが頑張れば、ちゃんと帰れるよ☆でも頑張らなかったら何日もこの世界にいなきゃならないかもね~☆」


「もう!はぐらかさないでちゃんと答えて下さいよ!何でわたしをこんなところに連れて来たんですか!?」


「それは、この世界に澪ちゃんたちが住む世界を守るために大切な秘密があるからかな~。今はまだ、私にもハッキリとわからないんだけどね☆」


「そんな無責任な……」


 そんな話をしながらしばらく歩いていると、遠くに町のような、建物の密集した景色が見えてきた。


「あれ、町ですか!?」


「やっと町が見えてきたね☆さあ、どんな人たちが住んでいるのやら……♪」


 そして、幅20メートルくらいの川に差し掛かった。とてもゆるやかな流れで澄んだ水のきれいな川だ。


 その手前で馬車が止まって、紳士が降りてきた。なんだか慌てた様子で何かを探しているようだ。


「な、ない…」


 紳士はあわてた様子で何かを探しているようだ。


「ああ、お嬢ちゃん、取り乱してしまってすまない。確かにここに、向こう岸まで渡れる橋があったのだが…まさか、数日前にあったという大雨の影響で、壊れてしまったのだろうか…」


 紳士は申し訳なさそうな表情でで事情を説明してくれる。


「そうだったんですかぁ、そういえば、橋の柱みたいなものがいくつか、水面から飛び出ていますね」


 確かに、橋があったであろう跡は見てとれる。橋を支えていたであろう部品がいくつか水面に飛び出ている。


 川の流れはおだやかで、水泳が得意な人なら泳いで渡れると思う。でもわたしは水泳を習った事はないし、紳士さんもそういった事をやる人には見えなかった。


「困ったなぁ。どうしよう?だれかが橋を直してくれるのをここで待っているとか?」


 わたしは紳士さんに聞いてみた。


「この道はそんなに人通りの多い道ではないので、果たしていつ修理に来てくれるか……1番近い他の橋まではかなり距離があって、町にたどり着けるまでには夜になってしまうかも知れん。済まないの、お嬢ちゃん」


「そうなんですか……食べ物も残り少ないと言ってましたし、不安ですね……」


 わたしと紳士さんは、川のへりに座り込みながらそんな話を続けて、ゆっつりと流れる水面を見ていた。


 綺麗な川……もしもこの川が冬になって凍ったら、きっとステキなスケートリンクになるんだろうな。北海道や東北の方では、天然の池や湖が凍ってスケートリンクになるみたいだし。

 

 ここは回りの景色もすごくきれいだし、「国民の妹」金田真結香ちゃんだったら、この風景をバックに、どんな風に滑るんだろう。


 そんな想像をしていると、ひとつの考えが浮かんできた。


 スケートリンク?凍らせる?


「あの、ひょっとしたらわたし、何とかできるかも知れません!」


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ティティアンエボリューション! ~りんちゃん動物記~
もよろしくお願いします!!
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