表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/28

ハイアルド・プレーンズマーモット

「桜木、実戦で試してみるか?」

「おっすお願いしまーす!」


 避けられないルート上に、レベル3のMOB、ハイアルド・プレーンズマーモットがいた。

 こいつの生息域に来たということは、もうじき東ハイアルド街道だ。


「抜刀して接近する。スキルの効果範囲に入ったら、アイコンが浮かび上がるから視線を合わせて選択しろ。できるか?」

「やらいでか!」


 桜木は、おずおずとMOBに近づいていった。

 敵の検知圏内に入る。

 ハイアルド・プレーンズマーモットから、赤い放物線が伸びて、桜木に刺さる。

 ヘイトを桜木に向けたMOBが、動きはじめた。


「うっわわわわわ! ええとなんだっけなんだっけ! これ!」


 “サイレントアタック”が発動、横薙ぎに振った曲剣が、MOBのHPを削る。


「痛っ! いったぁ! 思ったより内臓にっ!」


 MOBの通常攻撃オートアタックが、桜木のHPを三分の一持って行く。

 桜木はひるまず、しっかりとコンボをつなげた。


「相原、ベルカ!」


 ベルカがヒールを飛ばし、相原が魔法を飛ばす。

 

「まっ、これ、痛っ! おまっ、お待ちなすって! お待ちなすってえ!」

「足下! 範囲が来るぞ、桜木!」


 地面が発光し、攻撃の範囲を告げる。

 ハイアルド・プレーンズマーモットの直線範囲攻撃、“体当たり”だ。

 桜木は横っ飛びに跳ねて範囲を避ける。


「すぐに元の場所に戻れ! 敵をフラフラさせるな!」

「ひ、ひいぃっ!」


 悲鳴を上げながら、桜木はよたよたと動く。

 近接メレーDPSは、敵側面や背面で実行した際、ダメージ上昇の効果を持つスキルを持っている。

 敵をなるべく動かさないのも、タンクの仕事の一つだ。


「あがっ内臓……内臓!」


 だんだん桜木が猫背になっていく。

 無理もない。

 痛みはヒールで消えるが、恐怖までは取り去ってくれない。

 俺と一緒にタンクをやっていたライカがひどく消耗していたのは、そのせいだ。


「桜木、代わるぞ」


 ロール共通スキルの挑発インフレイムで、タゲを取る。

 

「あ、ありがと……これむっちゃしんどいね」

「すぐに慣れる」


 痛みに耐えながら、二つのスキルを回す。

 ハイアルド・プレーンズマーモットはレベルの割にHPが高い。

 おまけに、面倒なスキルを持っている。


【ハイアルド・プレーンズマーモットの『リレーション』】


 チャットウインドウにシステムメッセージが流れた。


「うわあなんかいっぱい出てきた!」


 桜木が絶叫した。

 新たに、三体のハイアルド・プレーンズマーモットがPOPしたのだ。

 この増援が、コイツの面倒なところだ。


「サイハテ、ベルカ、ヒール厚く頼む」


 俺はインフレイムでPOPした新たな三体のタゲを集めた。


「一匹もらうぜ!」


 桜木が曲剣を元気よく敵に叩きつけた。


「大丈夫なのか?」

「いけるよ!」


 怒鳴ってから、桜木は、いたずらっぽく笑った。


「こちとら散々ゲーム実況してる系の女子だからね」


 内緒話の音量で、そんなことを言う。


「ああ、YouTubeのやつか。なんであんな変なインディーズゲームばっかりやってるんだ?」

「いや-、王道ゲームは競争が激しくて……って、ひえええ! 観られてた-! ご覧いただきありがとうございます!」

「頭下げてる場合か。タゲこっちに来るぞ」

「ぬわーー!」


 タゲを素早く切り替えながらスキルを放ち、敵のヘイトを高く保ち続ける。

 桜木の……というか、声優『ひのひー』のYouTube公式チャンネル登録者数が群を抜いているのは、コイツが公式チャンネルにやたら動画を投稿しているからだ。

 しかも、高難易度のいわゆるマゾゲーや、理不尽な仕掛けでプレイヤーを殺しまくるインディーズゲームの実況ばかり。

 そして、ゲームが異常に上手い。

 声優ではなく、ゲーム実況系のユーチューバーとしてひのひーを認知しているヤツも多い。

 

「慣れてきた! 更に一匹もらっちゃおうねー!」


 スキルを散らして、もう一匹のMOBのタゲも取る。


「ほう、経験が生きたな」

「あはは、ありがと! 今度ジュースをおごってあげよう!」


 雑談の余裕まで生まれてきた。

 俺たちは、この世界に適応しつつある。


「これなら……相原! 範囲焼き頼む!」

「っしゃー! スノーウインド!」


 相原がポーズを取りながら実行したのは、対象とその周辺五メートル以内のMOBにダメージを与えるスキル。

 二人でがっちりヘイトを確保しているからこそ打てるスキルだ。

 俺一人のヘイトでは、タゲを取り切れない。


「もー一回!」


 1.5秒のリキャストを無視して、再びスノーウインドが炸裂した。


「やるな、“無詠唱術式”か」

「まーね! 七十点でしょオレ!」


 魔法遠隔マジックレンジDPSの共通スキル、“無詠唱術式”。

 一度限り、リキャストを無視して魔法スキルを実行できる。

 スキル固有のクールダウンも踏み倒せる非常に強力なスキルだ。

 クールダウンに60秒を要するので、レイドでは使い所を見極める必要がある。


「いーね相原君! で、おしまいっ!」


 桜木がショーテルを叩きつけ、ハイアルド・プレーンズマーモットの掃討が完了した。


「お疲れ、桜木」

「どうってことない敵だったぜ。さ、みんな行こう!」


 桜木が声をかけると、疲れ果てていた生徒たちが笑顔を浮かべる。

 コイツがいなかったら、相当まずい状況になっていただろう。

 レイドチームを運営する上で、桜木は大きな戦力になってくれそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ